要塞内部へ
「待ちなさい、レンゲ!」
屋根伝いに走っても、レンゲに追いつけない。
『イクス、バイクだ!』
ノーマンからアドバイスを受けて、イクスはバイクを召喚した。
ようやく、レンゲの背中が見えてくる。
「あれは!」
突如、レプレスタの空に低空飛行する要塞が。
その壮大な姿は、まるで背中に森を背負った巨大な亀のである。
『クイラス要塞だ! 伝説は本当だったんだな』
コーデリアたちの言っていた、伝説の要塞か。
レンゲたちが、要塞の頭部から中へ乗り込む。
要塞が、高度を上げていく。
「あんな兵器が、街を襲ったりなんてしたら! 取り付きます!」
アクセルを全開にして、イクスも要塞内部へ突入した。
体半分が機械でできた、戦闘員たちが出迎える。
「どきなさい!」
敵に向けて手をかざし、イクスは指から光弾を発射した。
魔力の弾丸で体を撃ち抜かれ、戦闘員たちが吹き飛ぶ。
「レンゲはどこにいるのです⁉」
『集中するんだ。ディアナの魔力を辿ればいい』
「承知いたしましたわ」
戦闘員を撃退しつつ、奥深くへと突き進む。
ダンジョンほど、複雑な構造ではなかった。車両を移動させる前提なのか、道が広い。イクスのバイクでも余裕で通れる。
戦闘員の数も、少なかった。外の光景を見た限り、レプレスタに降下しているのだろう。
「これだけ内側が脆ければ、探索も楽なのですが」
『何もなければいいんだけどね……よけてイクス!』
天井から、何かが光った。
イクスは壁走りで、攻撃をよける。
天井には、小型の魔物が目玉を光らせていた。固定砲台のようだ。
『やはり防犯装置が働いている!』
「小賢しいですわ!」
指から光弾を放ち、天井の魔物を撃退する。
「バイクが!」
タイヤをやられた。これでは走れない。
『直しておくよ。ベルトに収めて』
ノーマンの指示通り、イクスはバイクをベルトに収納した。
廊下を進んでいく。
「行き止まりですわ」
どうやら、ここが最奥部らしい。
『この中にディアナが』
だが、扉は開かない。
コンソールがあるが、キーワードなどわかるわけがなく。
「面倒ですわ!」
扉を切り裂いて、イクスは部屋の中へ突撃した。
「ディアナ!」
「お姉さま!」
ディアナは、ピアノの椅子にくくりつけられている。
隣には、レンゲが立っていた。黒い衣装のままで。
「レンゲ、ディアナを開放しなさい!」
「そうはいきません。これは、私の長年の悲願なのです!」
語るレンゲのもとに、コブラの顔をした人形の魔物が歩み寄った。
「でかしたぞ、レネゲイド! さすがこのマーリト・アロガントの娘」
「あなたが黒幕ですね、マーリト・アロガント!」
「お初にお目にかかる、イクス・レプレスタ。エスパーダと呼ぶべきか。アタシはマーリト・アロガント。またの名をメデューサ!」
「ディアナを返していただきますわ、メデューサ!」
妹を救うため、イクスはピアノに向かおうとする。
「おっと、動くんじゃないよエスパーダ!」
非情にも、ディアナの首にアロガントがヘビの杖を突きつけた。
ディアナが恐怖に怯える。
「動けばあんたの可愛い妹がどうなるか。わかるね?」
「卑劣な……」
変身を解かざるを得ない。
「お黙り! アロガントがレプレスタから受けた仕打ちに比べたら、命があるだけマシなもんさ!」
杖を操って、アロガントは半球状の巨大な窓を開く。
「見よ。我がアロガントが誇るクイラス要塞を!」
外の景色を、アロガントが見せつけた。
要塞から、人間サイズのゴーレムが降下していく。ゴーレムは街を襲っていた。
「これだけの兵を集めるのに、どれだけの時間を要したか!」
エルフ王から追放され、アロガントはずっとこの要塞の内部で幽閉されていたという。子孫も、アロガントのことなど忘れ、普通のエルフとして暮らしていたらしい。
「だが、神が現れた」
『それがデヴィラン?』
「そのとおりさ。やはり天才は察しがいいね、ノーマン・ドランスフォード」
『ボクのことも知っているのか!』
ノーマンの存在まで知られている。とはいえ、ノーマンは驚いていない。
「あんたらの情報など、ある人物を通じて把握済みさ」
『それが、スケルディング教授だと?』
「今は、骸教授と名乗っているけどね。アタシは彼女に開放された代わりに、この要塞を起動するように命じられた」
天才スケルディング教授といえど、エルフの技術を扱うことまでは難しかったらしい。
「アタシは骸教授に体を改造してもらい、メデューサとして生まれ変わった。エルフ要塞の構造もすべて教えた。誰よりも詳しかったからね」
アロガント復興を子孫たちにも呼びかけ、メデューサの布陣はより強大になっていく。
「アタシは一度、配下を率いてレプレスタを襲わせた! 力ずくで、王を殺せると思ったんだよ!」
しかし、襲撃はレプレスタ王の思わぬ反撃によって失敗した。連れ去ろうとしていた母レプレスタ王妃まで殺してしまって。
「母を殺したのは、あなたでしたのね!」
「惜しいことをしたよ。彼女が抵抗しなければよかったのさ!」
「許しません。変身!」
イクスはエスパーダへと変身した。
コブラ大怪人メデューサと相対する。




