老獪! 機関車機怪人 【タラスク】!
重い言葉に、コウガも動きを止めた。
「レネゲイドは危険人物だ。見つけ次第始末せよと、通達があった。オレは任務をまっとうするため、探りを入れていたんだ。殺す目的で」
直後、クリスは苦笑する。
「いや。目的だった、って言うべきかな?」
「……だった?」
言葉の意味がわからず、コウガは首を傾けた。
「もう、ヤツを殺していいのかどうかわからない」
「今は迷っていると?」
クリスは、コウガの問いかけにうなずく。
「もし、ヤツの目的が本当にレプレスタへの復讐なら、とっくにディアナ様を殺していたはずだ。魔力を奪う以外に、利用価値なんてないんだから」
「たしかに、そうですね」
「それに見ろよ。アテムとかいう女もそうだが、装備品を細工されていない。オレなら、もう戻れない覚悟で、幻装に仕掛けを入れるぜ」
クリスの言う通りだ。
リュートが悪の道にいるなら、その考えを真っ先に思いつく。
「何か理由があるはずなんだ。レネゲイドが、復讐に踏み込めない理由が」
思いつめた様子で、クリスは眉を寄せる。
「コウガ、あんたがレネゲイドを見定めてくれないか? あんたなら、レネゲイドの真意がわかるかもしれねえ」
二人が話し合っていると、突如、地割れが起きた。
「なんだあれは⁉」
巨大な島が、レプレスタの空に浮かび上がる。
「ヌホホ! これぞクイラス要塞なり! 我らデヴィランの最終兵器よ!」
老人のような口調で、大砲のような長い首を持つ怪人が現れたではないか。
上空から、民家の屋根に舞い降りた。
その拍子で家が天井から崩れ落ちる。
「あいたたたたーっ! もちっと頑丈に作れんのか! しまらぬではないか!」
腰を打ち付けた怪人が、気を取り直す。
火かき棒を杖代わりにつき、大砲の頭部分についた白く長いアゴヒゲをなでた。
シルエットは鋼鉄の甲羅を持ったカメである。
「ワシは大砲機怪人【タラスク】! 若き戦士たちよ、ワシの装甲を貫けるかな?」
バカにしたような口調で、大砲怪人は口角を吊り上げた。
「なめるなよ、ジジイ!」
戦士の一人が、ロングソードで大砲怪人の首に斬りかかる。
だが、剣は大砲怪人の首にヒットすると、無情にも折れてしまった。
「ムダと申すに」
火かき棒をクルクルと回し、大砲怪人は戦士のプレートメイルを先端で数カ所突く。
「あ、が……」
戦士が血を吐いて、絶命した。
「これがウワサの魔道具かえ? 脆いのう」
立ったまま死んだ戦士を、怪人はスコップで押す。
戦士が倒れた瞬間、プレートメイルが粉々に砕け散る。
『魔法石で強化したヨロイを、簡単に』
「手強いです。あの老怪人」
首をポキポキと鳴らしながら、大砲怪人が杖を突き立てた。
「この頑強な肉体は、要塞の動力源となる魔力石を起動実験するために作られたのじゃ」
「だったら、コイツをくらいな!」
アテムが斧を抱えて、怪人に背後から打ち込む。
「ぎょほお!」
さしもの怪人も、オーガ族の怪力を叩き込まれてつんのめる。
「忌まわしいオーガ族かえ。デヴィランの誘いを断って滅ぼされた一族ごときぃ!」
「エルフの誇りを捨てて、悪魔に魂を売ったヤロウなんかに言われたくないね!」
「ぬかせや小娘が!」
大砲怪人の首が、蛇腹状に動く。アテムとゼロ距離となり、怪人は大きく口を開けた。
なにか、危険な攻撃が来るに違いない。
コウガは確信した。
「ヒャハーッ! 大艦巨砲主義ィイ!」
凶悪な威力のブレスが放たれる。
「盾を構えなさいアテム!」
「やべええ!」
盾を構え、アテムは踏ん張った。それでも、ブレスの勢いは殺せない。アテムは一〇メートル以上吹き飛んだ。転がるように地面に叩きつけられ、変身も解けてしまった。
「ヤロウ、今までの魔物とはダンチだ!」
全身から血を流しながら、アテムは横たわる。死んではいないが、動けそうもない。
「機怪人の戦闘力は、並の怪人より二倍ほど強い。大怪人に迫ろうと言うほどだ」
退屈そうに、怪人は火かき棒をもてあそぶ。
「ノームの施した武具で挑むほうが無謀というもの。さてさて」
ヒゲをなでながら、怪人の視線がこちらを向いた。
「お前さんは楽しませてくれるのじゃろ、コウガとやら!」
フェンシングのように、大砲怪人が火かき棒で突撃してくる。
とっさに下がっていなければ、目を突かれていただろう。
「早いです!」
『どんくさいと思っていたら、強敵だぞ!』
他の戦士たちを下がらせ、大砲怪人と一騎打ちに。
「賢明な判断よ。とはいえ、クイラス要塞には近づけさせぬ」
大砲の頭部から、煙を蒸す。
「本気で参る!」
怪人の突き攻撃が、速度を増した。
コウガはそのすべてを、キックで撃ち落とす。
「あなたの攻撃など、止まって見えます」
コウガが、大砲怪人の懐に飛び込む。
怪人の胸板に、キックが確実にヒットした……はずだった。
『なにいい⁉』
怪人は倒れない。むしろ、コウガを弾き返してしまった。
「なんと見事な蹴撃。ワシじゃなきゃ腹を貫かれておったわい。ならばぁ!」
火かき棒を、怪人はクルクルと回す。コウガのアゴをかち上げようとしてきた。
先を読み、コウガはサマーソルトキックを浴びせる。




