エルフ女王直属騎士団長 クリス
「コウガだと⁉ ミーってば運がいいんだか悪いんだか。ま、コウガを倒せばスピード出世ってわけでよろしく!」
大げさにポーズを取って、怪人は小刻みに踊る。
「あなたの思い通りには、させません!」
コウガは、ピアノ怪人に殴りかかった。
敵はすばしっこく、コウガの攻撃をことごとくかわす。
「どっひゃ!」
ようやく、コウガのパンチが怪人を捉えた。鍵盤を殴り、床へ叩きつける。
今のコウガは、いつもと一味違う。すぐに怪人の素早さに順応していった。メンテナンスが効果を発揮したように思える。
「やっぱ、荒っぽい戦闘はミーにはムリっしょ」
追撃の踏みつけを、ピアノ怪人はあっさり回避した。逆再生映像のように転げては立ち上がる。
「ユーなんて一曲あれば十分っしょ! ミュージック、スターツ!」
胸の鍵盤に指を当て、再びピアノ怪人が演奏を始めた。
「どうよ、戦闘が強い相手に、精神攻撃は基本っしょ!」
流れるようなピアノさばきを、怪人は披露する。
「ぬううう!」
コウガは耳を抑えた。光線銃を構えようとしても、音が耳を貫いて手が痺れてしまう。
「ムダムダっての! この音は、脳へチョク響くから。耳を塞いだぐらいじゃ鳴り止まない。ミーのハーモニーを子守唄に、死んじまいな!」
ピアノ怪人の演奏が、激しさを増す。
「くっ! どうすれば!」
『音には音だ! ペガサスロード!』
「なんですかそれは?」
痛む頭を抑えながら、コデロはバイクを召喚した。
『エンジンをふかせ! この音をかき消してしまうんだ!』
「なるほど!」
コデロが、ハンドルを握る。
轟音が音楽堂に反響し、ピアノの悪質な旋律をかき消した。
「頭痛が収まりました!」
やはり、タダの音波である。
「くっそ、ミーのパーフェクツなハーモニーを爆音で消し去るとは!」
『昻牙!』
モードをチェンジし、銀色のコウガへと変身した。
『トゥア!』
竜巻となって、ピアノの屋根部分にローリング・ソバットを浴びせる。
「あぐう!」
地面に打ち付けられ、怪人がもんどりうつ。
『トドメだ!』
跳躍したコウガが、ライジングキックの体勢になった。
「寝ながらでも、演奏は可能!」
仰向け状態のまま、怪人はピアノをかき鳴らす。
しかし、コウガの耳がノイズで汚染されることはなかった。
「ぐう、なんだと⁉ 音が響かない!」
『ピアノの屋根をへし折ったからな!』
グランドピアノの屋根は、音を反響させる役割を持つ。
そこを破壊されたら、音は広がらないのだ。
コデロの演奏風景を、退屈せずに見ていたのがよかった。そのおかげで、ピアノの構造を知ることができたから。
『ライジングキック!』
押しつぶす形で、コウガはピアノ怪人にキックを浴びせた。
「ちくしょお、あとは頼んだぜ、レネゲイド様ぁ!」
音楽堂に、怪人の悲鳴がこだまする。しかし、すぐに爆発音にかき消された。
コデロが変身を解く。
「やったな。コウガ」
クリスが、コデロに歩み寄る。
「兵士や市民の皆さんは?」
「無事だ。兵隊は、レプレスタ城内や祭りの会場に散らばっている。なーに、大丈夫さ。あいつらなら」
ノアが作成した武具もあるのだ。抵抗はできるだろう。
「来たね、コデロ!」
祭りの広場にはアテムもいる。幻装【ランドグリーズ】を着用していた。再生怪人たちを蹴散らしている。
他の戦士たちも、ノア特性の魔道具で武装していた。民衆の避難を優先し、退路を確保する。
それでも、怪人たちに押され気味だ。総力で攻め込まれては。
コデロも、レプレスタ攻防戦に参戦した。クリスと背中を合わせ、戦闘員を撃退していく。
「きりがないな!」
「ならばこちらも。変身!」
コデロは構えをとる。再びコデロはコウガへ変身し、戦闘員を相手にした。
『それより、あなたの正体が、オンディールの騎士とは』
両手持ちの短剣を、コウガは振り回す。
「ああ。盗人とだけしか、情報を与えていなかったからな。具体的に何を盗んだのかまで聞かれていたら、返答に困ったところさ」
言いながら、クリスはおどけてみせる。
『しまった。そう聞けばよかったのか』
クリスが盗もうとしていたのは、レネゲイドについての情報だった。正体を知るまで、あと一歩というところまで追い詰めたらしい。
「しかし、有力な情報を掴む前に自分の正体がバレてしまったんだ」
殺害されそうになったところを、イクスことエスパーダに助け出された。
「それ以来、オレはエスパーダを隠れ蓑にして、レネゲイドを追っていたの、さ!」
遠くで狙撃しようとしていた戦闘員を、クリスが弓で処理する。
頭を撃ち抜かれ、戦闘員が墜落した。
「イクスはあなたの正体を?」
「知らんさ。ただのレンジャーだと思いこんでいる」
自信満々に、クリスは首を振る。
「あなたは、レンゲがレネゲイドだと分かっていたのですね?」
「いや、なかなかシッポを掴ませてくれなくてな」
クリスの側面にいた敵を、コウガは撃ち抜く。
「身分を隠して、あなたは何を目的に動いていたのです?」
「レネゲイドの発見と抹殺。それが、オレの役目だ」




