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特撮ヲタ、姫騎士のヒーローベルトに転生!  作者: 椎名 富比路
2-4 『ヒーローの違う一面が見られるぞ!』「私も女なのですが……」

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イクスとセッション

 自分の用事が済んだので、イクスの元へ向かう。


 先日の戦闘で、イクスは自身がエスパーダであると発覚してしまった。どうなるのか。もし復帰が困難ならば、手助けせねば。


「お待たせいたしました」


 会議の席に、コデロは通される。


「ご面倒をおかけしたな、コデロ殿。用事はもうお済みですかな?」


 国王の問いに、「はい」と答えた。


 用事といっても、ミレーヌのカレーを食べに行っただけである。

 朝も味の薄い料理をいただくのは、耐えられなかったからだ。


「いえ。して、イクス様はどうなさいましたか?」


「このとおり、ピンピンしておりますわ。心配をかけましたね、コデロ」

 腰に手を当てながら、モデル歩きでイクスはこちらまで歩み寄った。


「てっきり、オリにでも入れられているのかと」


「御冗談を!」

 オホホと、イクスは高笑いする。

「たとえ拘束されたとしても、鎖を引きちぎって逃げてみせますわ!」


 彼女のことだ。やりかねない。


「ところで、ディアナ様。楽団で演奏を習ってらっしゃるとか。楽曲は何を?」


「エルフ族伝統の曲であると」

 美しいメロディだそうだ。だが、その分だけ演奏は難しいという。


「なるほど。由緒正しい音楽を」

「詳しい伝説は存じ上げないのですが」


 格式張った曲であると。

 なら、わずかなミスさえ許されない。

 たとえ王族の娘といえど、レッスンは厳しくなる。

 そんなところか?


 だとしても、だ。メンタルに異常は見られない。

 やつれているようには見えるが。


 ちょうど、この部屋にもピアノはある。

 型は古いが、支障はなかろう。


「ありがとうございます。少々、よろしいでしょうか?」

 コデロは思うところがあって、ピアノを借りた。


 軽く引いてみる。

 ゆったりした曲から、練習曲と呼ばれる速さのメロディを奏でた。

 ピアノ、異常なし。


 見渡すと、周囲から拍手が。


 コデロを身体を共有しているリュートでさえ、コデロの演奏に酔いしれていた。


「なにか?」

 思わぬ事態に、コデロも手を止める。


「いえ、聞き惚れてしまいました」


「それは、どうも」

 やや照れ気味に、コデロは会釈した。


「ディアナ様、楽譜はありますか?」


「はい。こちらに」

 ディアナから、曲目の楽譜をもらう。


 ふむふむと、コデロは譜面を目で追った。


「どうも。ではイスク、セッションを」


「はあ?」

 何を言われたかわからないといった風に、イクスはとぼけた声をもらう。


「これは、何らかの力が働いているかも知れないのですよ。我々で演奏してみて、何もなければ問題なし。我々でさえ体に異常をきたしたら、この楽曲が原因と」


「なるほど。グッドアイデアですわ」

 コデロの意図を汲んだイクスは、自前のヴァイオリンを用意する。


「実に、三年ぶりですか?」

 そっと、コデロがイクスにささやく。


「三年と二ヶ月ぶりですわ、コーデリア」

 イクスも、聞かれないように返してきた。


「ならば、問題ないですね」

 再び、コデロが鍵盤に手を置く。


「合図はそちらから」

「よろしくて」


 ヴァイオリンのチューニングもそこそこに、お互いアイコンタクトを送った。


 爪で、イクスがヴァイオリンをノックする。


 瞬間、二人は音と一体になった。


 曲目は伝統的な音楽だという。

 

 しかし、二人はアレンジを加えていた。

 デュエットでも雰囲気が出るように。どちらが打ち合わせをしたでもなく。


 気持ちのいい曲である。少しも、禍々しさは感じない。


 やはり、音楽には問題がないように思えた。

 妖精が手掛けた曲ならではの、不思議さも感じられる。


「終わります」


 演奏を終えて、コデロとイクスは呼吸を整えた。


 急にディアナが立ち上がり、大きく手を叩く。

 ジョージ王子も、同じようにした。


「素晴らしい演奏であった。二人には、ぜひとも音楽祭に参加していただきたい!」


「いえ、私はただ、ピアノや曲目の調子をチェックして、ディアナ様の体調を考慮しただけで」


「構わん。余が許す。お二方の演奏を、ぜひとも庶民にも聴かせたい!」


 それは、まずい。

 身動きが取れなくなる。しまった。調査のつもりが裏目に。


「すいません。ベルト様」

『気にするな。それより今後を考えよう』


 心の中で会話する。


『本当に、楽器が弾けたんだな。尊敬する』


「からかわないでください、ベルト様」

 コデロが、しおらしくなった。


「それより、楽器にも曲目にも異常がありません。もし、可能性があるとするなら、指導者でしょうか?」


「いえ。それは絶対にありえませんわ」

 イクスが、コデロの意見を完全否定する。


「なぜ、そういい切れるのです?」

「ディアナの指導者が、レンゲだからですわ」


 レンゲが?


『いや、ありえなくはない』 


 たしかレンゲは、楽団大国アファガインの出身だ。演奏ができてもおかしくない。


「あなたから聞いたんでしたね、レンゲのふるさとのことは」

「ええ。ディアナとレンゲは、リハーサルを入念になさっていますから」


 レンゲなら、安心して任せられるだろう。


「ところで最近、クリスとレンゲを見かけませんが?」


 ここ数日、特にレンゲの姿を見ていない。


「あの子なら、アファガイン楽団のガードとして、こちらに向かっていますわ」

 到着は、一日後だという。


「同郷でしたね。勝手を知っていれば、護衛も問題ないでしょう」


「そこから最終レッスンですから、お祭りはその二日後ですわね」


 祭りのスタートは、三日後か。


「ジョージ王子。私はしばらくの間、私用で外出します。よろしいでしょうか? 演奏会には、必ず間に合わせます」


 ただし、数日を要すると告げておく。


「よかろう。リハーサルまでには戻ってくるのだぞ」

「感謝いたします。それでは」


 コデロはイクスを連れて、歩きながら話す。


「イクス、あなたは引き続きディアナを見てあげてください。私は、個人的に調べたいことが」


「何を調査しますの?」


「お話を聞くのですよ。エルフ王に」

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