アインヘリヤル
再生怪人の脅威は去った。
だが、アロガント城内まで追い詰められ、コウガは死闘を演じている。バイクの弾薬も尽きて、魔力も残り少ない。
「そろそろ奥の手とやらを見せていただかないと、持ちません!」
壁を使ったパルクールを駆使し、コデロは不満を漏らす。
『持ちこたえてくれ! もうすぐだ』
大勢の戦闘員に、囲まれる。
「ここまでだ。最期だよ、コウガ!」
勝ち誇ったように、コブラ大怪人が指示を出す。
できれば、体力を温存したかった。しかし、こうなれば全力で。
次の瞬間、戦闘員たちが魔法矢の雨によって全滅する。
「なんと⁉」
多数の冒険者が、魔道具で武装して戦闘員を撃退した。中には、簡略版のコウガを思わせる集団が。
「お待ちどうさん」
機械のヨロイじみた武装をしたクリスが、光線銃型のショットガンで戦闘員を蹴散らす。クリスの隣には、同じようなヨロイを着たレンゲが。
「すぐさま、反撃いたします」
矢も何もない弓を、レンゲが放った。
戦闘員の操る戦車が、振動のような攻撃でひび割れる。
レンゲの攻撃は、超音波らしかった。
男女混合なので、戦乙女とは言い難い。
「助けに来たぜ!」
冒険者を従えているのは、ダニーだけじゃない。
「このノア・ハイデン! ただの科学者と思っていたら痛い目を見るぞ!」
後方で指示を出しているのは、ノア・ハイデンだ。彼女は専用車両の天井にあぐらをかき、魔法石が先端についたワイヤーで武装していた。
魔法石は優先式ラジコンのように浮遊し、迫りくる戦闘員に魔法石から火球を浴びせる。
ファンタジー世界で、自律兵器を見られるとは。
「お待たせした。【アインヘリアル】の調節に手間取ってね」
専用車両の天井から、ノアはコードを引っ張り出す。
「この車両は、魔力石のタンクになっている。使うといい」
「ありがとうございます」
ベルトにコードを取り付けて、コウガは魔力を補充してもらった。
『あやうく、パワー切れを起こすところだった』
「カレーもあればよかったのですが、贅沢は言えません」
空腹なのだ。コデロはため息をつく。
さすがに、血や武器が飛び交う戦場に、ミレーヌは連れてこられない。
「数分もあれば、万全の体制が整う。それまで持たせよう」
『そうさせてもらう』
コウガは立て膝をついた。
戦うことはできる。
しかし、今の魔力ではシャイニングフォームには変身できない。
力を使いすぎた。
「ベルト様。まさか、コウガを量産するとは思いませんでした」
「吾輩も、そんな提案をされるとは思っていなかったよ」
コデロが眠っている間に、リュートがテレパシーでノアに伝言を頼んだのである。
コウガとはいわずとも、近しい存在を開発してくれないか、と。
「どうして、私に相談もなく!」
『キミは反対するだろ?』
「もちろんです」
コデロは、何事も自分で決着をつけたがった。自分の仇であるという理由もある。だが、誰も危険な目に遭わせたがらない。相手を気遣い過ぎなのだ。
イクスとのケンカを見て、リュートは確信した。
『オレたちはもう、一人で戦っているわけじゃない。今や、デヴィランは世界の敵。キミ一人で全部背負う必要はないんだ』
エスパーダという心強い味方もいる。
コデロは、もっと他人を信用すべきだ。
「ラキアスから、テレパシーで通信があった。アテムも無事、【ランドグリーズ】への変身を遂げたらしい」
『オレも確認した。ノーマンから連絡があったよ』
レプレスタも襲われ、エスパーダが撃退したらしい。
「あなたは、兄とも連絡を取り合っていたのですね?」
『オレとノーマンだけでな。文章だけのやり取りだが』
細かい調整段階となり、互いにメッセージを送信し合って、計画を練っていた。アドバイスなどをもらいながら。
「それで、完成したらお披露目と」
『うむ。前段階で知られれると、止められる可能性があったからな』
慎重に、事は進めた。
コデロの就寝中しか、リュートは行動しなかったのである。
今回の作戦で、全貌を明らかにした。
なにも、フェアプレーを気取りたかったわけではない。
不意打ちは、冒険者に任せようと思ったのだ。
冒険者も生活が掛かっている。
コウガだけが活躍すれば、冒険者などいらなくなってしまう。
「なるほど、自身が囮になろうと」
『そういうわけだ』
ダニーの腕を、疑っているワケでもない。
彼はよく仕事をしてくれた。
コウガといえど、この数を相手にはできないと思ったのである。
「決して、ベルト様が高台の上で目立ちたい、という目的ではなかったわけですね?」
まったくリュートを信用していない口ぶりだ。
『おいおい、オレをなんだと思ってるんだ?』
「ただの英雄マニアとしか」
否定できない自分が悔しい。
「ベルト殿だけを責めるな。吾輩も興味があったのだ。戦乙女の開発には」
「とはいえ、それが発展すれば第二のデヴィランが生まれる危険だって」
「吾輩は自称マッドサイエンティストだが、命を粗末に扱う悪魔ではないよ」
実験に興味を持っているだけ。
対象を危険にさらさない心得は持っていると、ノアは主張した。
しかし、指示を聞かない奴らも出てくる。手柄を狙ったグループが、先行しすぎた。




