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終末より、お届けものです。  作者: 五月七日 外
プロローグ
6/10

これからの物語

 真っ暗な意識の中。

 フェスティアは深い海に沈んでいた。


 ────私、死んだの……?


 何も聞こえない。

 何も、見えない。

 何も────感じない。

 海の中で一人ぼっち。

 重力に引かれるように身体が沈んでいく。


 ────ぽつり。


 フェスティアの先に誰かいた。

 姉がいた。

 父がいた。

 母がいた。

 島の人たちも。

 クオル王国に生きていた人たちがフェスティアと同じように海に沈んでいる。

 けれど、それは幻覚だ。

 フェスティアは死んでなどいない。

 その証拠に、海の底……一番遠いところに、フードの女がいた。


『────許さない』


 静かな声を聞いた。


『あいつだけは────絶対に、許さない』


 ────それは少し前の自分だった。

 〝────そうだ。私はアイツを倒さないといけない……だから、こんなところでいつまでも眠っている暇なんてない!!〟


 暗い海を明かりが照らす。

 これは復讐の炎だ。

 炎は人を燃やし、海を燃やしていく。

 すべてを燃やす怨嗟の炎の中で、フードの女は(わら)っていた。

 金色の瞳と目が合う。


 その瞬間、フェスティアの意識は覚醒した。




 ☆★☆★☆★☆




「誰が……誰が、諦めるか!!!」


 意識を取り戻したフェスティアは、落ちた魔剣を拾い一気に砂の上を駆け抜けた。


「んなっ⁉」


 さすがに、まだ目覚めないと思っていたのだろう。シュノムは完全に不意を突かれた。

 フェスティアの様子を窺がおうとしていたシュノムとの距離は近い。その距離五メートル以下だ。

 飛んでいきたいが、フェスティアの背中に蝶の羽はもう生えていない。それを、フェスティアは無理やり発生させる。


「────っ⁉」


 背中に激痛が走り、つい顔が歪んでしまう。

 蝶の羽は、本来、生やしておくのにかなりの集中力が求められる。

 気絶から目覚めたばかりのフェスティアには到底生えさせることなど不可能だ。

 したがって、形にならない蝶の羽はすぐに霧散してしまう。

 ……けれど、それで十分だった。

 羽は消えても〈蝶毒(ノヴァ)〉が残っていた。

 フェスティアは、〈蝶毒(ノヴァ)〉を纏うように赤い刀身を振る。

 一歩、一歩……確実にシュノムとの距離を詰める。

 そして、間合いに入った瞬間。

 フェスティアは切先をシュノムに向け、ただ……そのまま真っすぐ、シュノムに突っ込んだ。

 それは、フェスティアにしてみればただの突きでしかなった。

 斬るよりも突く方が鋭い。

 たったそれだけの理由で、この局面に選んだのがそれだ。

 しかし────シュノムだけは知っていた。

 それは、ある一つの技であることを……。

 迫りくる赤い切っ先は、もう腹いっぱいなのだろう。溢れんばかりの赤が煌めいていた。

 真っすぐな目でシュノムを見るフェスティアの姿に……。

 シュノムの脳裏で、師の残したかつての言葉が流れていた。


『シュノム。いつかお前みたいなのが必ず現れる……そのときは、お前がその子を導いてやれ。それがわたしへの恩返しだ』


 気付けば、シュノムの口元は少し緩んでいた。

 〝────そう言うことかよカレン。あのときから、お前はこうなることを……〟


「……フェスティア、お前の勝ちだ。今日から俺の弟子にしてやるよ」


 そう言うシュノムの顔は、フェスティアが初めて見るのに、どこか懐かしい……優しい顔をしていた。

 そして、フェスティアはシュノムの言葉を聞きながら確かに見た。虚空からボロボロの黒剣を引き抜くシュノムを……。


「────閃光斬」


 ぽつり、シュノムが呟く。

 その瞬間。

 フェスティアは、まさに閃光としか言いようなのない一筋の光に包まれた。




 ☆★☆★☆★☆




 気付くとそこは、真っ暗な世界だった。


「あれ……私、死んじゃったの?」

「ばーか。弟子になったくせに、速攻で死ぬんじゃねえよ」

「シュノム……?って、え!ええええええええええぇぇぇぇ⁉なんでっ、私シュノムに膝枕とかしてもらってるの!!」

「あーもう、うるさいな。フェスティアがずーっと気絶してたから、仕方なく介抱してあげてたんだろうが」

「い、いや……そうは言われても……」


 体を起こして辺りを確認してみる。

 すると、世界が暗かったのは今が夜だからだった。何もない空に星が輝いている。

 随分と眠ってしまっていたらしい。

 夜営の為か、シュノムは岩影で火を焚いていた。どうやら、シュノムの言うこともあながち間違いではなさそうだった。

 しかし、何かとても大切なことを忘れている気がする。

 そして、数秒の思慮ののち、フェスティアはそれを思い出した。


「弟子⁉今!シュノム弟子になったって言った⁉」

「ん?ああ、そうだけど」


 当たり前のことのようにシュノムは言うが、いま起きたばかりでまだ頭の回転が遅いフェスティアはその言葉をよく理解できなかった。

 フェスティアの記憶では、シュノムと勝負していたはずなのだ。

 それが、今まで眠っていたということは……。


「あれ?勝負って、どうなったの?私、眠っていたってことは負けたと思うんだけど……」

「フェスティア……お前、ルールも忘れたのか?参ったって言ってないんだから負けるわけないだろ。それにほら」


 言いながらシュノムは、少し目にかかった前髪をあげる。

 すると、ほんとうによく見ないと気付けない程度だったが、針で刺されたみたいな小さな傷が右目の上あたりにあった。


「えーと……これで一太刀?一本なの?」

「まー、おまけってことで。俺に少し本気を出させた時点で大金星だ」

「そ、そう……」


 フェスティア自身、納得はしにくい。

 それでも、シュノムが良いというのだから甘んじて受けることにした。

 で、あれば。

 フェスティアがやることは一つだ。


「……ねえ」

「嫌だ」

「なんでよ!まだ何も言ってないじゃない」

「どうせアレだろ?俺が使っていたあのバリアみたいな技、教えろって言うんだろ」

「ぬ……ぬふう」


 図星だった。

 シュノムが使ったあの技は、破壊そのものとも言えるフェスティアの攻撃を完全に防いでしまったのだ。その、フェスティアの知らない力は喉から手が出るほど欲しかった。

 ……おかげで、フェスティアの口からは変な声が漏れてしまう。


「そのうち教えてやるから、まずは体を休めろ。それも修行のうちだ」

「……」

「わかったら返事」

「……はーい」


 それからしばらくは、二人して団欒のときを過ごした。

 そのとき、夜ご飯としてシュノムが肉料理を振る舞ったのだが、使われていたのは魚竜という名の竜種だということが分かり、フェスティアは危うく吐きそうになっていた。

 実は、いい肉だと思って『これ何のお肉なの?』とシュノムに聞いてしまったことは、おそらくフェスティアの墓場まで持っていく恥になるとこだろう。


「さてと……それじゃあ、一応、聞かせてもらおうか」


 お腹も一杯になり、少し落ち着いたところでシュノムは話を切り出した。

 シュノムにしてみれば、フェスティアの身に何が起こったのか。なぜ弟子になりたいのかなど、そのほとんどを知らない状態なのだ。

 〝────この人、これでよく私を弟子に取る気になったなぁ……〟

 それから、フェスティアは簡単な生い立ちから今までのことをシュノムに話した。

 フェスティアにとって辛い話も多かったが、できるだけ明るく話した。その間、シュノムは何も言わず静かにフェスティアの話を聞いていた。


「────ていう感じ……かな」

「なるほどな……」


 そう言うシュノムの顔は深刻そのものだ。

 次の一言を何というのか、フェスティアも真剣に続きを待った。

 だが、シュノムの口から飛び出た言葉はフェスティアの想像を超えていた。


「やっぱり、弟子っていうの無しでいい?」

「へ?」


 あまりのシュノムの言葉に、フェスティアの口から間の抜けた声が溢れる。

 シュノムはそれに、先と変わらず深刻そうな顔のまま続けた。


「いや……そのフードの女か?フェスティアが言うことが正しいなら、そいつ俺よりぜんぜん強いぞ?」

「またまたぁー……そんなに謙遜しなくてもいいよ?シュノムだってあり得ないくらい強かったし」

「いや、俺の強さはあくまで旧時代的な強さだ。古いんだよ……今の時代だと、よくやれたってせいぜい剣聖に勝てるかどうかってところだな」

「え……それって、十分強いよね?」


 剣聖とは、各国における最終兵器とも呼べる人材だ。そのまま単身で国を落とすことも(やぶさ)かではない。

 そんな相手とまともに戦える時点で化け物なのだが、シュノムは冗談でもなんでもなく自分の強さは大したことないと言っていた。

 その時点で、シュノムの話はフェスティアの常識の範囲内を軽く飛び越えてしまっていた。


「まあ、ふつうはな……けど、その女の強さはもう何段階か上だ。あのクレアと剣での闘いで勝ってるんだろ?だったら俺が闘っても瞬殺だ」

「なんでよ?」

(イクス)ブレードだよ」

「い、いくす……なにそれ?」


 それは、フェスティアの人生で聞いたこともない名前だった。

 だが、それも無理は無い。

 その名を知るに至るレベルの人間がそもそもこの世に十人いるかいないか。その程度の数しか存在しないのだから。


「うーん、錬魂術(アルマム)もまともに知らないフェスティアに説明するのは難しいんだが……そうだなぁ。お前、カレンは知ってるんだよな」

「う、うん。小さいときよく遊んでくれたし」

「……あいつがどれくらい強いか知ってるか?」


 すると、シュノムのトーンが少し落ちた。

 それは、きっとカレンのことをよく知っているからなのだろう。シュノムの顔から少し血の気が引いていた。

 カレン=ラスフォード。フェスティアにとって彼女の認識は綺麗で優しいお姉さん……その程度のものだ。

 だが、世間一般での彼女は〈勇者〉と呼ばれていたことも、フェスティアは知っている。その実感はほとんどないが……。


「正直……姉様よりぜんぜん弱いと思ってた。……でもちがうんでしょ?」

「まあ、勝負にならないだろうな……あいつは、人間なんてものとっくの昔に辞めてるから」

「うーん、さっきから剣聖にしてもカレンにしても、みんなの強さが想像つかないんだけど?なんかこう、兵隊何人分の強さ!みたいにもっと分かりやすく例えられないの?」

「それ分かりやすいか?」


 シュノムが若干引いていたが、何か思いついたのだろう。

 フェスティアが考え出すよりも前に、話し始めた。


「カレンの伝説の一つなんだけどな。……たしかあいつがまだ、二十歳のころだ。なんかムカついたとかで一代前の剣聖と殺りあったんだよ」

「なにそれ、カレンさん物騒すぎない?」

「まあ、若気の至りってやつだろ。俺も経験あるからわかる」

「せめて分からないでほしかったよ……」


 本当にこの人の弟子になってよかったんだろうか、そんなことを考えながらフェスティアは続きを聞くことにした。


「それで、どうせなら剣聖全員を相手にしてみたいとか言い出しちゃってな……ものの数分で全員、再起不能にしてたよ」


 バケモノだった。

 フェスティアが、自分の知らないカレンの姿を垣間見た瞬間だった。


「それで……?なんだか話が訳わからなくなってきたけど、結局、(イクス)ブレードってなんだったの」

「ああ……(イクス)ブレードってのは、史上最強のバケモノが考案した最高の剣技。あくまでも机上の空論と言われた正真正銘の極地のことだ」




 ☆★☆★☆★☆




「ほんとに、無くなったんだね……」


 一機の〈飛翼(ひよく)〉が空を飛んでいた。

 剥き身の機体に人がそのまま跨っているのは、いつ落ちてしまうものかと不安の塊でしかないが、〈錬魂術(アルマム)〉によって見えない結界や補助がかけられており、その飛行は案外快適なものだった。


「そうだな……フェスティアは、事件の日から丸一日眠っていたみたいだから、三日ぶりか?」

「うん……こうして見ても実感って湧かないものだね」


 フェスティアは昨日知ったことだが、シュノムと地上で出会った時点でクオル王国消滅事件からすでに二日が経過していたのだ。

 昨日は、地上で野営をして夜を越したので、フェスティアがこうして空の上に戻ってくるのは三日ぶりになる。

 もしも自分が〈大罪の蝶(プシューケ)〉でなかったらと思うとぞっとするものがあった。


「どうする?もう少しだけ見て周るか?」

「ううん、もういいよ……ここには何もないみたいだから」

「……そうか」


 フェスティアの希望もあって、二人はクオル王国があった空を訪れていた。

 しかし、そこには砂粒の一つすら残っておらず、広大な空が広がるだけだった。

 これ以上いたところでフェスティアがツライだけ……シュノムがそう思った時だった。

 二人の上を巨大な黒い影が通った。


「サイオーンの偵察艇か……随分と足が速いな」


 悠々と空を飛ぶその姿は巨大な鯨のようにも見えるが、それは、(れっき)とした機械の塊だ。鉄でできた胸ビレが四本もあるのが良い証拠だろう。

 飛空艇より幾分か大きい鋼の機体は、敵のいない空を独り飛んでいく。

 北に居を構える技術大国────サイオーン、またの名を機械都市。

 そんな、サイオーンの飛空艇が飛んでいる。それだけでかなりキナ臭かった。


「あまり、アレに関わってもいいことは無い。……〈飛翼(ひよく)〉が出てくる前に帰るぞ」

「……うん」


 偵察艇にいくつも開いた穴は、〈飛翼(ひよく)〉が出入りするためのの噴出口だ。

 それを見たフェスティアは、〈飛翼(ひよく)〉を操縦するシュノムの背中にしがみついた。



 シュノムの住む国────キングルクセンドに着くのは、それからそう時間はかからなかった。


「キングルクセンドって、けっこうクオルに近いのね」


 風を浴びながら話すのはフェスティアだ。

 キングルクセンド領に入ってからは、シュノムが〈飛翼(ひよく)〉に張られていた結界を消したので、空に上るときとは違った乗り心地に変わっていた。


「まあ、七大大国では唯一の中立国だからなー。どの国にもすぐ行けるようにしてたんだろ」

「なんか適当ね」

「国のごたごたには興味ないの。……っと、それよりもうすぐ着くぞ」

「え?どれどれ」

「あれ、島の縁にある赤い屋根の家がそうだよ」


 シュノムの視線の先には、ぽつりと佇む赤い屋根の家が建っていた。屋根の上には小さな風車がたくさんついており、どれもクルクルと回っている。レンガ造りの家はかなり古いタイプなのだが、フェスティアにはそれが刺さったらしい。

 家の隣には〈飛翼(ひよく)〉を停泊するためだろう、入り口をパックリと開けた倉庫も建っている。

 そんな、貿易の乏しい十九番島ではあまり見られない組み合わせに、フェスティアはかなり興奮していた。


「ねえねえ!シュノムはあの家に住んでるのよね?」

「そうだけど、事務所も兼ねてるからけっこう狭いぞ?……面倒なのもいるし」

「狭いのなんて平気よ。私、立ったまま寝られるから」

「それは王女としてどうなんだ……」

「別にいいでしょ。それよりも内装がどんな風になっているのか楽しみじゃない?」

「いや……俺ずっと住んでるから今更何もないんだけど」


 そんなことを二人して話しているとあっという間に倉庫に着いた。

 〈飛翼(ひよく)〉を停めてから、家に向かって歩く。

 シュノムの家は倉庫の隣なので、すぐに着く。……のだが。シュノムの家には妙な飾りが大量につけられていた。

 煌びやかな花の形をした大小さまざまな飾りは、美しいのだが、基本白と黒のせいか、どことなく哀愁を感じさせる。


「あんまり似合わないわね……」


 正直なところ、シンプルな造りのシュノムの家にはあまり似合わない飾りつけだったが、これも分化の違いかと思い、諦めの呟きをこぼすフェスティア。

 その隣でシュノムは嘆息する。


「あの……バカ」


 すると、シュノムは迷わず家の扉を蹴破った。

 ショックのあまり、入り口で叫ぶフェスティアなどお構いなしに、シュノムは家の中にガツガツと入る。

 そして、家の中に一人。

 貴族顔負けな金髪碧眼の少女がほうきを持って立っていた。今まで掃除をしていたのか、部屋の中は少し埃っぽい。


「アレ?……シュノムは、先日の事件で島と共に消滅したと思ったのデスガ……ッチ!なんてことでしょう、生きてやがりましたカ」


 黒装束の少女は、抑揚の少ない声でそんなことを言う。その表情は忌まわしげだったが。


「ライラ……色々と言いたいことはあるが表のアレはなんだ?」


 シュノムにそう言われた金髪の少女……ライラは、何の悪びれもなくこう答える。


「ハイ、アレは東に伝わるお葬式の飾りですヨ……シュノム、ああいうの好きでしたヨネ?」

「勝手に殺すな。それと、あの飾りは俺の好みでもない」

「仕方ありまセン……明日には片付けましょウ」

「いやいや、今すぐ片付けろよ。ご近所の目が痛いだろうが……」

「シュノムにだけは言われたくないようナ……ハイ?」


 そうブツブツ呟いていたライラは、ようやく表でフリーズしているフェスティアに気がついた。

 そして、じーと何か言いたげにシュノムの方を見る。


「モシモシ……?もしや、またシュノムは新しい女の子を地上でひらってきたんですカ⁉」

「変な言い方をするなよ。拾ってきたのはライラだけで、こいつは……って、どうかしたのか?」

 

 と、シュノムに見られて、フェスティアはやっと現実に戻ってきた。


「ん、ううん大丈夫。私はぜんぜん扉が飛んでいったことなんて気にしてないから」

「それ思いっきり気にしてるだろ……」

「ほんっとに大丈夫だから!扉が無いなんて日常茶飯事だったから!」

「ですヨネー」

「変なところで共感するなよ……とりあえず、自己紹介でもしたら?」


 そんな、シュノムの雑なふりで自己紹介が始まる。


「どうも綺麗なお嬢さん。吾輩とお茶でも一杯どうデスカ?」

「え……?」

「自己紹介くらいちゃんとやれ」


 そう言ったシュノムに、ライラはぽかんと頭を叩かれる。


「……クク、シュノムは相変わらずレディーのジョークというものが分かっていませんネ。デハ、改めまして麗しいお嬢さん?ワタシの名前はライラ。偉大なるノヴァ博士、力作の機械人形にシテその完成形……超人類のライラでス。以後お見知り置きヲ」


 ペコリと頭を下げるライラだっが、フェスティアはライラの言葉が信じられなかった。

 とてもではないが、彼女は機械のように見えなかった。肩口まで伸びたサラサラの金髪も空みたいに澄みきった碧眼も、雪のように白い柔肌も……どれをとってもライラは人間そのものだった。


「私はフェスティア=ヴァシレークス=クオル。三日前に消えちゃったクオル王国の第三王女です……よろしくねライラ」


 フェスティアは少し迷ったが、ライラには自分の本当名前を教えた。


「王女?なるほど……道理でかわいいワケですネ。こちらこそよろしくでス。フェスティア」


 親愛の証として、ライラは右手を前に差し出す。

 フェスティアもそれに応えて握手を交わした。



 こうして。

 フェスティアは、シュノムとライラの二人と新しい生活をスタートさせた。




ここまでで、一応、プロローグは終わりです。

次話以降、用語や世界観の説明をぼちぼちしていこうと思います。

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