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終末より、お届けものです。  作者: 五月七日 外
第一便 蝶の落とし物
10/10

買い物帰りに

 遡ること幾数刻……。

 シュノムとライラの二人は、島一番のオール商店街へと買い出しにやって来ていた。

108番島は貿易が盛んな島であり、店頭にある商品は果物や野菜などの食料品もあるが、先からライラの目を引いているのは金属片やネジが大量に並べられている武骨な構えの店舗だ。


「ライラ……目を輝かせているところ悪いが、今日の目的はそれじゃないぞ」


 ふと視線を周囲に向ければ、飛空士見習いだろうか。商店街にはライラと同じように目を輝かせた青年から工具箱片手に商品を物色している髭面の男まで、運び屋関係の人々で溢れていた。108番島には、飛空艇や飛翼を使って島々を渡り歩いては人々に必要な物資や手紙を運ぶ運び屋を生業としている者が多く住んでいる。地上(した)に落ちた落とし物を拾ってくるという変わり種ではあるが、シュノムも彼らの同業者だ。

 機械を弄ることが大好きな(……というより自身も機械である)ライラは〈飛翼〉のメンテ担当であり、シュノムがオール商店街に立ち寄ったときは大抵飛翼関連の用事でしかない。ライラはそこに期待してアレコレ新しい部品を買おうとシュノムについて来たというのに、とんだ肩透かしを食らった気分になっていた。


「そうデスカ。オール商店街に行くと言うから、てっきり今日も飛翼の部品を買いにきたと思ったのニ。アーアー、ワタシのオールオイルちゃんガ……」

「珍しく買い出しについて来たがると思ったら、やっぱりそういうことだったか」

「そりゃそうですヨ。でなければフェスティアと一緒にお留守番してマス。……トいうか、〈飛翼〉の買い出しじゃないナラ今日は何の買い物デスカ?」


 オールオイル片手にそう言うライラは首を傾げていた。

 ライラはオイルの一つでも手に入れて帰りたいらしいが、あいにくとそこまでの軍資金をシュノムは今日持ってきていない。ライラを無視してシュノムは歩を進める。


「ま、一人増えちまったからなぁ。流石に服とかなんかその辺り色々といるだろ?」

「アー、そういう……。だったら本人を誘えばいいというのに、この男ハ」

「いや、俺もそのつもりだったんだけどな。フェスティアときたら修行で忙しいからって言って断りやがったぞ?」

「……フェスティアも中々ですネ。女の子が男の服を借りっぱなしというのはどうなんでショウ」


 オイルを諦めるついでにライラは嘆息する。

 フェスティアがシュノムの家に来てからそろそろ一週間になる。初めの方こそ、着替えの準備も出来ていないだろうからという理由でライラやシュノムの服を適当に貸していたが、さすがに本人の服を用意した方がいいだろう。シュノムよりフェスティアの方がその辺りに無頓着だったことにはライラも驚いたが、それと同時に面白い考えを思い付いていた。

 おかげでシュノムに少し遅れる形でライラは後を追っていく。


「何考えてるか知らんが、そんなにお金の余裕は無いからな」

「ダイジョブ、下着担当はこのワタシに任せくだサイ。今こそこつこつ貯めてきた貯金を使い果たすときでス!」

「お前、実は中身おっさんだったりしないよな?」


 若干、引いてるシュノムをよそにライラは下着店へと直行していった。

こうなったライラは止まらない。以前、仕事で東のお姫様に会ったときもあれやこれや着せ替えて大変だったことを思い出しながら、シュノムは適当に時間を潰すことにした。




 ☆★☆★☆★☆




「お待たせしまシタ……」


 しばらくして。

 人一人くらいは入りそうな大きな箱と共にライラが戻ってきた。

 お土産ついでにリンゴの一つでも買って帰ろうか悩んでいたシュノムだったが、ライラの姿を見ると自然とその手は止まっていた。


「どんだけ買ってきたんだよ」

「ハハハ……つい、やってしまいまシタ。……て、アレ?」

「なんだよ?」

「リンゴ。嫌いって言ってませんデシタ?」

「別に。嫌いじゃないさ……。まあ、昔を思い出すからちょっとな……」

「アー、そう言えば元々リンゴ農園出身でしたっけ? 昔のクオルは緑豊かな国だったトカ」

「さあな、忘れたよ」


 そう言うシュノムはどこか遠くを眺めていた。

 その想うところはもう失われている。

 そこに何があったのかライラは知らない。

 知っているのは、かつてシュノムから聞いた記憶の断片だけ。

 それでもライラは……。


「そうですカ。でも、フェスティアにも近いうち話さないとデスヨ?」

「あいつのことだから信じないだろうがな」

「フフ……、ソレを言うならフェスティアが王女さまというのも信じられないですけどネ」

「それもそうだな。俺の知ってる奴とは大違いだったし」


 ────そろそろ帰るか?

 そうシュノムが言おうと思った時だった。


「あの、シュノムさんですよね? そのリンゴの代金はもつので、わたしの話を聞いてくれませんか?」


 伏し目がちにそう言うのは、あまりに不釣り合いな軍服に身を包んだ藍色髪の少女──フィアットだった。


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