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終末より、お届けものです。  作者: 五月七日 外
それは誰かのエピローグ
1/10

旅路の終わり

「────こんな世界、間違っている」


 青年の亡骸を前に少女は呟いた。

 もう、温もりは感じない。

 それでも、少女は青年をそっと抱きしめる。

 ────少女にとって、彼は剣の師匠だった。

 ────少女にとって、彼は錬魂術(アルマム)の師匠だった。

 ────少女にとって、彼は最愛の人だった。

 少女にすべてを与えてくれた青年は、もうこの世にいない。

 青年に触れれば触れるほど……何かを確かめようとすればするほど、残酷な現実は少女に真実を教えてくる。

 少女がもう一度立ち上がるには時間が必要だった。

 しかし、世界は優しくない。

 少女の頭上には、再び災厄が浮かび上がっていた。

 それは、大きな蝶の羽を広げ蝶毒(ノヴァ)という名の光り輝く鱗粉を世界にまき散らしている。

 空に浮かぶ憎き敵を前に少女は決意した。


「少しだけ待っててね……」


 そっと、青年の亡骸を横にしてから少女は立ち上がる。

 それに呼応するように、地に落ちていた剣が浮かび上がった。

 その数────およそ十。

 剣の一振り一振りすべてが、この世に二つとない魔剣や聖剣と呼ばれる代物だ。史上最強の剣たちは少女の周りに結界みたく集まっていく。


(イクス)ブレード……展開」


 少女の一声で剣がその場に停止する。それはまるで、見えない手で剣を掴んでいるかのような静かさだった。

 剣先はすべて敵に向かい、錬魂術(アルマム)のための錬成陣を描く。

 さらに、少女の背中からも敵と同じ蝶の羽が生えていた。


「たぶん、私はアンタたちに勝てない……だから────」


 自嘲するように少女は(わら)う。


「────こんな結末変えてやる」


 瞬間、世界は虹色の光に包まれた。


 こうして、彼女の旅路は最悪の形で結末を迎えた。





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