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⑨私って優しい?



目を覚ますと、既に太陽は真上に昇っていた。

久々に朝方に寝て、昼間に起きた。


自分のベット脇に敷いた布団を見ると、ドブネズミちゃんが布団に包まっていた。


すごく寝苦しそうな体勢なのに、聞こえてくる寝息は穏やかだ。



さて、うるさい奴が起きてくる前に仕事をしよう。


チーフとしての最後の大きな案件がある。



どうしても平日の勤務時間内では手がつけられなくて、持ち帰ってきた。


前は家まで仕事なんて頭がおかしいと思っていたけれど、会社のデスクに縛り付けられるよりは家でしたほうがリラックス出来る気がする。





昼過ぎに起きた上に、朝食(時間的には昼食)を食べていないからか、頭が働かない。

何か軽食でも準備しようかとPCから顔を上げると、ドブネズミちゃんがこちらを好奇の目で見ていた。



「び…、っくりした…。起きてたなら声かけてよ」



「シオリちゃん、キーボード打つの速いんだね」



「そうでもないと思うけど…」



私よりタイピングが速い人なんて世の中に五万といる。

でも、彼女が見てきた小さな世界の中では、私は脅威の速さなのだろう。



「そういえば、お腹空いてない?」



「うーん…、シオリちゃんが食べるなら食べる」



「何よそれ」



「だってぇ…、1人で食べるなら食べなくてもいいんだもん」



「昨日は付き合ってあげたんだから、今日は私に付き合いなさいよ?」



「わーい!今日のお昼は何?」



「うちで食べる?それとも、外行く?」



「シオリちゃんの手料理がいい」



「…、材料買ってくるからお留守番してて」



「やだ。一緒に行く」



「もう…服貸してあげるけど、文句言わないでよね」



「やったー!」




プライベートでこんな風に他人から振り回されるの、久々。

でも、私とこの子じゃ、身長が10cm違うけれど…、きれる服あったかな…



着られそうな服を渡すと、彼女はクスクス笑い始めた。



「ねえ、服のセンスを笑ってるわけ?」



「違う違う!そうじゃなくて…」



「じゃあ何よ?」



「あのね、シオリちゃん、すっごく取っ付きにくそうっていうか、怖そうなのに、本当はとっても優しいよね」



「…は?」



「だからね、ギャップがすごいなって」



「ば…、馬鹿にしてるの?」



「違うよ、褒めてる」



「…」




優しい、なんて言ってくれたの、アイツ以来だ。

そもそも、今まで仲良くしてきたのがアイツくらいだったから、私の性格をどうこう言う人はいなかったけど…



「シオリちゃん、照れてる?」



「照れてない」



「ちぇー、つまんないー」



「ほら、私、お腹空いてるから早く買いに行くよ」



「はーい」




たかだか近所のスーパーに行くだけなのに、とてもはしゃいでいる。

とんでもない生活をしているはずなのに、悩みなんか全然無さそうで羨ましい。




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