③②豪快で自由奔放で嵐
トウモロコシを食べ終えたコウくんは、遊びまわりたくてうずうずしていたので、子ねずみちゃんが外に連れ出してくれた。
たぶん、当分帰ってこない。
残された私は、おばあさん(千代さん、と言うらしい)に野菜の飼育法について色々と聞いていた。
16時を過ぎ、千代さんが夕飯を作ると言うので、私も台所に立つことにした。
千代さんの家の台所は広く、しっかりとしたガスコンロがついていた。
お米は釜で炊くらしい。
「子ね…、アイちゃんがうちに来てから、何回かご飯を作ったんですけど、アイちゃんが作ってくれた千代さんの味には敵いませんでした」
「ふふ、そうかい?アイちゃんは、ああ見えてかなり気のきく子でねぇ…、私の家に来ると、お母さんが疲れてるだろうからって、率先して私の手伝いをしてくれるんだよ」
「そうなんですか…、私もアイちゃんの気遣いに驚かされることがあります。本当に中学生なんですかね?」
「シノはねぇ、器用なんだけど、ちょっと人情に欠けているところがあるから…」
「私もどちらかというと、シノさん寄りなんだと思います。アイちゃんに、"学校の先生みたい"って非難されたことあります」
「そうなのかい?それにしては、かなりアイちゃんから好かれているように見えるけどねぇ」
「どうなんでしょう…」
私と子ねずみちゃんが、現在一緒にいる理由…、好きとか好かれるとかではなく、利害の一致のような気がする。
と、米を炊いている釜が湯気を出しながら、蓋をカタカタと鳴らしている。
吹き零れちゃう。
そう思って、蓋を手にしたところで、千代さんに制された。
「ダメダメ!お米は絶対炊き上がるまで、蓋を取ったらいけないよ」
「あ、す、すみません」
そっと手を引っ込めた。
釜で米を炊くって大変なんだな…
「さて、炊き上がるまでにもう一品こしらえるべ」
「は、はい」
ここまで既に3品作り上げているが、さらに作るらしい。
1回の食事でこんなに豊富なおかずが出てくるって、本当にすごいと思う。
「色とりどりですね」
出来上がった料理を眺めて、思わずつぶやいた。
「夏だから、野菜もいっぱいあるからねぇ。冬は大したもの作れないけどね」
「私、テーブルに並べてきますね」
「ありがとうね、お客さんなのに手伝い、沢山させちゃって」
「いえいえ!突然上がりこんでしまったので」
「どれ、私はとっておきのジュースでも準備しようかね」
とっておき、って一体何が出てくるのだろう。
そう思いつつも、お皿を持って居間に行くと、見知らぬ女性が座っていた。
私と、同じくらいだろうか。
「あ、ただいまおかあさ…って、ええ!?誰!?」
「あ、は、初めまして」
「ああ、カオリ、帰ってきてたの。こちら、アイちゃんの友達の葉子さん」
この人が、カオリさんか…
確かに自由奔放そう。
「アイの?ってことは、アイも来てるの?」
「今、コウくんの面倒見てる」
「へぇ…、ってことは、姉さんも来てるの?」
「シノは来ていないよ」
「じゃあ、アイと2人きりでここまで来たの?」
「あ、はい。お世話になってます」
「はぁ~?私も自由人だけど、アイには敵わないわぁ…」
「すみません、突然上がりこんでしまって」
「いいのよ。アイのことだから、連れてけって駄々こねたんでしょ?あと、敬語じゃなくていいよ、同じくらいでしょ?」
「えっと、29です」
「お。1歳下だった。いいね、私、妹が欲しかったの!」
「あ、えっと、お気持ちは嬉しいんですけど、私、今日明日中に帰らなくてはいけなくて…」
「あっはっは、やだぁ、冗談だよぉ。真面目に受け取らないで~」
カオリさんはお腹を抱えて笑っている。
豪快な人…
確かに、彼女に家庭に入って、家庭の枠にハマっている姿は想像できない。
ひとしきり笑った後、彼女はハッとして
「やだ、せっかくのご飯が冷めちゃう!コウとアイ、連れてくるわ」
といって、家を飛び出していった。
コウくんのお母さんというのが、納得できてしまう。
料理を並べた机の前に座り、千代と2人で待っていると、ゲラゲラ笑いながら、3人が汗で前髪を貼り付けた状態で帰ってきた。
「ねぇねぇ、葉子ちゃん!あたし、競争で1位だった!」
「ほんと、アイは昔から足だけは速いなぁ、そろそろ陸上選手にでもなったら?」
「ならないよー。練習は嫌いだもん」
「それでこそ、アイだわ」
「3人とも…、早く手を洗って席について」
身内話がまだまだ続きそうだったので、声をかけた。
子ねずみちゃんは「ほらね、葉子ちゃんって先生みたいでしょ?」と言いながら、2人を引き連れて洗面所に向かった。




