③①かえるの親もかえる
「アイちゃんも家出かい?」
トウモロコシを食べ終え、3人でボーっと庭を眺めていると、おばあちゃんが聞いた。
ここの庭には、本当にケイトウが色とりどりに花をつけていて、絨毯みたいだ。
日差しを浴びて、くっきりと色づいている。
「そう、家出。あたしも、って言うことは他にも誰かいるの?」
「そうかい。ここはまるで駆け込み寺だねぇ…」
「それってどういう…」
「ただいまー!お腹すいたー!!」
「はいはい、おかえり。トウモロコシあるよ」
元気のいい声で挨拶をしながら、ドタドタと居間に一人の男の子が駆け込んできた。
小学生だろうか?
「あれ!?なんでアイちゃんがいるの!?」
「家出ってコウくんだったの?久しぶり~」
「ママもいるよ!今日はお仕事だけど」
「そうなの?カオリさん、会いたいかも。あ、あたし、花火持ってきたから、夜に皆でやろう?」
「花火ー!やる!!」
花火と聞いて、ピョンピョン跳ねるコウくん。
ずっと見ていると、目が合って、指を指された。
「この人、誰?」
「葉子ちゃんだよ。あたしの友達」
友達になったつもりはないけど、ややこしいからテキトーに合わせておこう。
「葉子です。初めまして、コウくん」
「はじめまして」
「じゃあ、コウくん、手を洗ってきましょう」
「はーい」
コウくんはまた、バタバタ走りながら居間を出て行った。
なんというか、嵐みたいな子だな。
「カオリさん、なんで家出なんてしてるの?」
「それ、家出してるあなたが聞く?」
「旦那さんやそのご家族と馬が合わないみたいでねぇ。自由に育てちゃったもんだから…」
「カオリさんの自由さは美徳だと思うけど?」
「家庭に入るってそういうことなのよ。限度はあるでしょうけど、ある程度は相手の生活スタイルにあわせないと」
「どうして?だったら、相手だってカオリさんに合わせるべきでしょ」
「大人になったら分かるわ」
「その代わり、シノは器用だからねぇ」
「シノ?」
「私のお母さんだよ。カオリさんのお姉ちゃんなの」
「ふーん、シノさんって言うんだ」
アイツの前で使った"シノ"って、母親の名前だったのか…
家出なんかしといて、案外、母親のことは好きなんじゃない。
「お母さんはつまんないもん。教科書みたいだし」
「手!洗った!!」
コウくんが戻ってきたため、なんとなくその話は宙ぶらりんになった。
子ねずみちゃんの家族はやっぱり、子ねずみちゃんの家族なんだ。
一癖も二癖もありそうだ。




