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③◎黄金の粒々




海沿いから離れ、山のほうに近づく。

目標にしていた、町内に1つだけの小中学校に着く。


土曜日のせいか、学校は閑散としていた。



「とりあえず、目的の学校に着いたわよ。ここからは案内し手くれる?」



「わー、懐かしい。通ってたわけじゃないけど、ここのグランドでよく地元のこと遊んでた」



「地元の子って、面識のない子?」



「そうそう。私、学校は都内だから」



「子供ってすごいわよね。知らない子と遊べるんだもの」



「まあね。でも、今は無理かな~。さすがに中学生になったら出来ないな」



「多感だものね」



「多感だね~。私は気にしないけど」



「あなたは図太いもの」



「酷いなぁ…、あ、ここの路地、右に曲がって」



「はいはい」




その後も、細い道や舗装されていない畦道を走らされた。

畑や田んぼには、作業中の人たちが疎らにいた。



「盆地って感じだね」



「うん。まあ、海が近いから、正確には平野だけど」



「…、地理は苦手なの」



「地理っていうか…、中学生の範囲なんだけど」



「…、まあ、いいじゃない。そっちでも。農業に適してるってことで」



「いい加減な大人だね」



「あなたもいい加減じゃない?」



「まあね」



「おばあちゃんも何か作ってるの?」



「もちろんだよ。おばあちゃんの家に来たときに野菜をお金で買ったことがないくらいにね」



「すごい世界だわ」



「うちで作ってなくても、隣が作ってたら、自分が作ったものと交換してもらうの。素敵でしょ?」



「…、江戸時代の話?」



「現代の話」



「考えられないわ」



「あ、あそこがおばあちゃん家!」



「あれ?」



「そうそう」



「駐車しちゃっても平気かしら?」



「お母さんはいつも家の前に車停めるから大丈夫」



子ねずみちゃんの情報を信じ、家の前にある駐車場のようなスペースに車を停める。

子ねずみちゃんはいそいそとシートベルトを外し、車から飛び降りる。



「葉子ちゃんも早く降りて」



「はいはい。そんなに急がなくても…」



渋々と車を降り、子ねずみちゃんに続く。

インターホンは押さず、無遠慮に玄関の引き戸を開けた。



「おばあちゃーーん!こんにちはー!」



すごく大きい声。



少しして、70代くらいの女性が出てきた。


「あらぁ、アイちゃんじゃない。なにしたの?」



「えっとね、お友達、連れてきた」



「あ、初めまして。葉子と申します」



「どうも。2人とも、上がって。何もないけど」



「い、いえ。お邪魔します」



靴を脱ぎ捨てた子ねずみちゃんが、ズカズカと家に入っていく。

私も靴を脱ぎ、子ねずみちゃんの分までしっかりと揃えて、中に入った。


家の中は、晴天なのに確かに少し涼しかった。

畳の匂いと、古い木の香りがした。



「すごい。日本家屋って感じ」



「ここでお昼寝すると、すごく気持ちいいよ。顔に畳の跡がつくけど」



「人様の家でそんなこと出来るわけないでしょ」



子ねずみちゃんと口論をしていると、おばあちゃんがお盆を持って奥から出てきた。



「なんにもないげんど、さっき茹でだっけがら、食べてみて」



大きなお皿に、黄色くて粒が輝いているトウモロコシが乗っていた。

バーベキューや屋台以外で食べたことがない。


一緒に麦茶も出された。



「すごい…、粒が大きいんですね」



「今年はいい塩梅にできたのよ」



「そうなんですか」



半分にきっただけのそれを、どう食べようかと思い悩んでいると、子ねずみちゃんは豪快に齧りついた。

まるで、本当のねずみみたいだ。


私も、思い切り齧ることにした。


ブチブチとしっかりした粒が弾けて、甘さが広がった。

食べているだけで元気になりそうな味がする、健康的な味だった。



「これ、とっても美味しいですね。ご自分で作られたんですか?」



「そりゃあここらのもんは、全部自分で作るしかないからねぇ」



「これ、売れますよ、絶対」



「いいのよ。うちは、うちで食べれる分だけ作れれば。売り物はプロが作ればいいから」



「…、そうですか」



「うんうん。それに、売られちゃったら私が食べる分が無くなっちゃうしね」



「アイちゃんは1番美味しそうに食べでくれるから、作りがいあるねぇ」



「だって、美味しいもん。ねえ、葉子ちゃん」



「そうね」




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