②⑨チョコポテチコーラ
「葉子ちゃん!見て見て!海!」
「あー、うん。海だね」
「何その反応…」
「29年も生きてたら、海なんて、何100回とみてるし…」
「何回見たって、海は感動しない?」
「そりゃあ、沖縄とかハワイとか?すっごく綺麗な海だったら気持ちも変わるだろうけど…、ほら、ここの海、青って言うか、黒だし」
「わがままー」
「言うだけタダなんだから良いじゃない」
「そしたら、あたしのわがままも、言うだけならタダじゃん」
「…、あなたのわがままは、叶えうるわがままだから厄介なのよ」
「ええ!?葉子ちゃんのわがままだって、ハワイはともかく、沖縄は行けるでしょ」
「そんなに長い休みありませーん」
「お盆とか、お正月は?」
「実家にも行かなきゃいけないし…、マネージャーは確か、1~2日しか休んでなかった記憶が…」
「うげぇ…、会社員って最悪~」
「そういうこと言わないでよ。あなたも、いずれなるわ」
「ええー…、葉子ちゃんこそ、そういうこと言わないでよ」
「まるでオウムみたいだね」
「次はオウム?」
「うーん…、いや、あなたは子ねずみで十分だわ」
「それ、悪口だよね…」
「あ、あれ、ヨットじゃない?珍しい~」
いつの間にか雨は晴れ、梅雨の晴れ間というような快晴が広がっていた。
穏やかな波の上で、小さいヨットが2隻、風を集めて進んでいた。
「もう、話そらす~…、って、本当だ!すごい!乗りたい!」
「小さい船は酔うから嫌だわ」
「大丈夫だよ。絶対気持ち良いもん」
「その自信はどこから来るのよ…、乗り物酔いを舐めないで欲しいわ」
「だって、酔ったことないし」
「あなた、図太そうだし…」
「え、どこが!?超ナイーブだよ」
「ナイーブな人は、見ず知らずの人の家に泊まれないって」
「そうかなぁ…。でもまあ、今度は沖縄でヨットだね」
「待って。詰め込みすぎじゃない?どっちかから達成しましょう?」
「だって、沖縄に行ったら、今度はまた新しくやりたいことが増えちゃうから、一気に出来るものは一気にしておきたくない?」
「それ、絶対疲れるでしょ。嫌よ」
「ケーチ」
「はいはい」
バリバリっと無遠慮な音を立てて、子ねずみちゃんがお菓子の袋を開ける。
今度はポテトチップスを食べるらしい。
その痩躯によく入るものだと感心する。
「葉子ちゃんも食べる?」
「要らない」
「おいしいよ?」
「あなたみたいな若い子と違って、もう私にはその油を分解できないの」
事実、ポテトチップスやら揚げ物を食べた後は確実に吹き出物が出るようになった。
「え~?1~2枚なら問題ないよ~」
「それでも、結構だわ。こぼさないようにだけして頂戴」
「大丈夫だよ~、食べ方だけは品があるってよく言われるし」
「…、ちょっとよく分からないわ」
「つまり、食べるのは上手ってこと!任せて!」
「はいはい」
子ねずみちゃんの場合、上品というよりかは、単純に食べるのが遅いだけだと思うけど…
それにしても、チョコにポテチにコーラか…
私の歳では許されないコンボだ。
確実に体型の維持ができなくなる。




