②⑦家族の形 と 約束
そして、私は無事に昇進した。
それまでの一週間は引継ぎのせいで、だいぶ遅く帰ったりしていたけど、初日ほど子ねずみちゃんが不機嫌になったりはしなかった。
確かに子供ではあるけれど、聞き分けが良いほうだと思う。
「子ねずみちゃん」
「何?」
「今日から私、役職変わるから、もしかしたらもっと遅くなるかも」
「ふーん。今度は何になるの?」
「マネージャー」
「マネージャーって…、葉子ちゃん、ドリンク配ったり、タオル洗ったりするの?」
「へ?…、ぷ、あはは。部活のマネージャーとは別物だよ、ふふっ…」
「え、そうなの?」
「そうだよ。日本語で言うと、部長かな」
「部長…、葉子ちゃんが?」
「そうだけど?」
「部長って、もっとおじさんがするものだと思ってた」
「そうね、比較的におじさんが多いかも。でもまあ、人手も不足してるから、選びようがないのよ」
「そっか…、大変だね」
「まあ、決まった時はバリバリやるぞ、って思ってたんだけどね。今は子ねずみちゃんがいるし、なるべく早くは帰りたいんだよね」
「あたしのため?」
「帰りが遅いとヘソ曲げるじゃん」
「曲げてないし」
「不機嫌になるじゃん」
「なってない」
「そういうところだってば」
「だって、1人が寂しいから転々としてるのに、1人にするんだもん」
「1人になりたくないなら、家に帰ればいいじゃない」
「その家にいると、孤独を感じるんだもん」
「そうなの?」
「ちょっと複雑なんですぅ。事実、警察が捜しに来たりしてないでしょ?そういうことなの」
「確かに、変だわ」
家族の数だけ、家族の形があると思うけれど、彼女の家は相当特殊なのかもしれない。
ごく平凡で、オーソドックスな家族を持つ私には、想像もつかないけれど。
「あ!そういえば、おばあちゃん家、今週の土曜はいける?」
「あー、うん。今週はちゃんと仕事終わらせるから」
「絶対だからね?」
「分かったって。平日、ちょっと遅くなるかもしれないけど…」
「なんで?」
「土曜日空けるには、平日に詰め込まなくちゃいけないし」
「えー…、誰かに押し付けられないの?」
「押し付けるって…、社会人としてダメだし、部長の仕事なんて、そうそう頼めるものじゃないわ」
「不公平だよ」
「そういう世の中なんですー」
「くそだね、くそ」
「口が悪い」
「ふん」
先週の土曜日に急遽仕事が入って、田舎で花火をする約束がキャンセルになった。
ちなみに、このときの子ねずみちゃんの機嫌を直すのに、まるまる日曜日を費やした。
これもまあ、私が悪い。
しかも、ちょっと約束のこと忘れてたし…
自分に彼氏ができない理由、ちゃんとあったなと気づかされた。
それ以上に、子供との約束を破る罪悪感は、なかなか来るものがある。
二度と、味わいたくない。
今週こそは、約束を守ろう。




