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②⑥帰りが遅い父を叱る子供



「ただいま」



「…、おかえり。今何時?」



「8時…、過ぎ?」



「一般的には9時前じゃないかな?」



「色々と…、トラブルが重なっちゃって…」



「もういい。葉子ちゃんの嘘つき」



そう言い捨てると、子ねずみちゃんは奥の部屋へと早足で戻って行った。


なんだか、ものすごく、世のお父さんたちの気持ちがわかった。

それでも、仕事を投げ捨てることはできない。


ため息をついて、ダラダラと靴を脱ぐ。

重い体を引きずってダイニングに行くと、拙いけれど、数品目の料理が並べられていた。



寝室のドアを開け、電気をつけると、子ねずみちゃんは枕に顔を押し付けてうつ伏せになっていた。



「あれ、あなたが作ったの?」



「…」



「料理、できるのね」



「…、お婆ちゃんと作ったものなら作れる…」



「そう。とってもお腹が減ったから、一緒に食べましょう?」



「…」



「私、温めなおしてくるわね」



「…」




そっと寝室の扉を閉め、私はもう一度ダイニングに戻った。

改めて料理を見ると、おひたしや煮物や焼き魚といった、手の込んだ和食だ。


人が作った手料理とか、久々に食べるかも…



中学生が作ったとは思えない、なかなか渋くて味のある献立だ。



お米や煮物、焼き魚をレンジに入れる。


お茶を注いでいると、控えめに扉が開く音がした。



「葉子ちゃん…、ひどいこと言ってごめんなさい」



「別に気にしてない。嘘ついたのは確かだし」



「でも、仕事、忙しかったのに…」



「せっかく作ってくれた料理、冷ましちゃったし…、お互い様にしておきましょ。ほら、温まったから食べよう」



「ん」




もう一度料理を並べて、席に着く。

温めなおしちゃったから、出来立てよりは美味しさが下がってるだろうけど、それでも、やさしい味の和食は体に染み渡るような感覚だった。



「料理、私より上手なんじゃない?」



「それは絶対ない。田舎料理だし」



「いいじゃん、こういう和食が、結局は一番しっくり来るんだよね」



「葉子ちゃんが満足したなら、また作ってあげるよ」



「ありがとう。もしかしたら、その機会は明日にでも来るかもしれないの」



「また遅いってこと?」



「たぶんね。私、結構、会社では偉いほうなの。皆より偉いから、皆より頑張らなくちゃいけない」



「何それ。偉い子は、真っ先に帰る権限を得るべきでしょ」



「学生はそれで通用したんだけど、会社っていうのは、偉くなるほど帰るのが遅くなるんだな~」



「変なの」



「業種にもよるとは思うけど、そういうものなの。だからね、もし、私といるのが嫌になったら…」



「嫌じゃない!」



「あ、そ、そう?」



「嫌じゃないから、ちゃんと待ってるから、まだ居てもいい?」



「私は構わないけど…、待たなくても良いからね」



「私の放浪ルール⑤に、"生活リズムは家主に合わせる"っていうのがあるから」



「…、あっそ」




『じゃあ、別の家に行く』

そう言われていたら、私はどうしただろう?


まだ居る、と聞いて、ちょっとだけ安心した自分が居る。



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