②⑤合う・合わない と 好き・嫌い
いつもどおりの時間に起きて、いつもどおりに支度をする。
家を出ようと靴を履いたところで、子ねずみちゃんが起き上がってきた。
「葉子ちゃんって朝早いんだね」
「そう?会社員なら普通じゃないかしら?」
「起きたなら、起こしてくれればいいのに」
「起こすのに時間がかかるでしょ」
「一緒に朝ごはん食べたかった」
「…、作ってあるから食べなさい。お昼は、冷凍食品か、引き出しに財布が入ってるからそれを使って」
「いい。1人だったら食べないし」
「明日は起こしてあげるから。帰りは7時すぎると思う」
「はーい」
「あと、1人でもちゃんと食べなさい」
「…、はーい」
「じゃあ、行ってくるわね」
「はーい、いってらっしゃーい」
ちょっと気だるげではあったけれど、ちゃんと返事はしたので大丈夫だろう。
出社すると、掲示板に辞令が貼られていた。
昇進は私のほかにもう1人だけど、異動する人も数人いるらしい。
何で今の時期なのかな…
ちょっと憂鬱だ。
そりゃあ、昇進は嬉しいけれど、頼りになる人たちが異動してしまうのは痛手だ。
私に、新体制をまとめることが出来るのだろうか…
「マネージャー!おはようございます!」
「ちょっと、今月のうちはチーフなんだから、やめてよね」
「言っても、あと1週間っすよ?おめでとうございますっ」
「私の昇進を快く思ってるのって、君くらいだと思う」
「なんでっすか?」
「そりゃ、女だし…」
「そんなの関係ないっす。チーフは誰にたいして平等ですし」
「まあ、君のマネージャーからの嫌われようは異常だよね」
「頭が硬すぎるんすよね」
「はは…」
後輩くんとマネージャーの相性はまさに最悪で、油と水のようだった。
自由でのびのびとしていて、いい加減な後輩くん。
対照に、きっちりかっちりとしていて、枠にはまることを良しとするマネージャー。
マネージャーが堅実でキッチリしていたからこそ、うちの部署は常に目標を下回ることなく安定していた。
逆に大幅に目標を超えたこともないけど。
だから、はみ出しものの後輩くんは、目をつけられていたし、やる事成す事に口を出されていた。
それが、彼は気に食わなかったのだろう。
でも、商売をするからには、後輩くんのような爆発力も大切だ。
私からすれば、足して割ってちょうどいい感じがする。
適材適所という言葉がある。
だから、私は後輩くんにはデスクワークを任せたくないし、几帳面な子には事務作業を任せたい。
ってすると、「あんたに指示されたくない」って反発されちゃうから、正直もう手詰まり感がある。
合う合わないと好き嫌いは、必ずしも合致はしない。
人って本当に難しい。
逆に、私の適所は?と言われると、返事に窮する。
少なくとも、リーダーは向いていないのかもしれない。




