②③決別
久々に歩き回ったからか、パンパンになったふくらはぎにシップをはりつつ、引き出しの奥底に仕舞っておいた封筒を取り出す。
返事、書かないと。
子ねずみちゃんは床に直に座り、足を投げ出して花火の説明書を読んでいる。
それだけで、花火をしている気持ちになるらしい。
お徳なんだか、損なんだか…
マナーどおりに、出席に丸をつけ、二重線を引くところは引いて、往復はがきを完成させる。
当日までに、ご祝儀とドレスと…、靴も買わなきゃいけないし、美容室も予約しなきゃな。
お祝い、というものは贅沢だ。
お金と手間が、たっくさんかかる。
それでも、そんな贅沢ができる事は、とても幸せなことで、昔ながらの風習に従うことはとても安心する。
「なに、それ…」
「うわ、びっくりした。説明書、読み終わったの?」
「うん。まあ、百聞は一見にしかず、だからね」
「はいはい」
「で、なに、それ?いまどき、文通?」
「文通って…、結婚式の招待状よ」
「ああ、さっきの2人の?」
「ええ。ようやくちゃんとお祝いできそう」
「そっか、良かったね。葉子ちゃんは、あの男の人が好きだったの?」
「たぶんね」
「たぶんって何?」
「う~ん、昔からの付き合いなんだけど、好きだと思ったことがなくて…、ただ、結婚するって聞いたときはショックだったんだよね」
「微妙だね」
「そうなの。だから、失恋といえば失恋なんだろうけど、しっくりこない」
「そっか。でも、行くってことは、吹っ切れたんでしょ?」
「かもね」
「じゃあ、良かったね」
「それはどうも」
「いいなぁ。あたしも結婚式、行ってみたい」
「招待状、いずれ来るわよ。まだ15歳なんだから」
「だって、友達いないし?」
「高校とか大学とか行けば出来るでしょ。就職してからだって、関係が広がることもあるし」
「でもね、全然想像がつかないの。私に未来ってあるのかな?」
「…、どうしたの?突然…」
「ごめん、なんでもない。あーお腹すいた。ねえ、お手伝いするから、棒棒鶏作ろう?」
「なんで棒棒鶏なのよ」
「昨日、テレビで見たから」
「しょうがないなぁ…、ちゃんと最後まで手伝いなさいよ?」
「やったー!葉子ちゃんって、なんだかんだで優しいよね」
「そこにつけ込むなんて、あんたは小悪党だわ」
「小悪党ばんざーい」
私がキッチンに向かうと、後ろをトコトコと着いてくる。
2人でキッチンに立つと、さながら親子のようだ。
年齢的には有り得ないんだけど、妹と呼ぶには幼すぎる気がした。




