⑲お買い物は体力を使う
「わー!似合ってるよ!買おう買おう!」
「ちょっと、もう少し静かにしてくれない?」
手を叩いて、「買おう」を連呼する子ネズミちゃんのせいで、店中の視線を集めてる気がする。
「本当によくお似合いですよ~!お客様は色白なので、淡いカラーのほうが、顔色が健康的に見えます」
どこから来たのか、店員さんまで褒めに来る始末。
なんとか買わせようと、お世辞を言っているのだろうけれど、そんな風に褒められると、恥ずかしい。
「ね、シオリちゃん、似合ってるって!買おうよ~」
「う、ううん…」
「もし、気になるようでしたら、こういった落ち着いたカラーのカーディガンなんかを羽織っても良いと思いますよ!こうすると、会社でも着られるくらいに落ち着くと思います」
「ほんとだ、ちょっと印象変わりますね!」
「そうなんです~。カーディガンも3色展開なので、お好みで選んでいただいても素敵だと思います~」
「どう?シオリちゃん?」
「あ…、う…、買います。紺のカーディガンも一緒に」
「ありがとうございます~。ほかに見ますか?」
「いえ、一旦お会計で」
「着て行かれます?」
「素敵!そうしようよ、シオリちゃん!タグ取ってもらおう?」
「あ…、じゃあ、お願いします」
「かしこまりました~」
なんだか、子ネズミちゃんのせいでトントン話で買うことになってしまった…
この子、実はこのお店の人とグルなんじゃないだろうか?
いや、でも、わざわざ服を買わせるためにゴミの山に埋もれたり、人の家に泊り込んだり、するわけないか…
「よーしっ!次のお店行こう!」
「はぁ…、そうね。とりあえず、まずはあなたの服と靴をなんとかしたいわ」
「やったー!」
それから、彼女の全身コーディネートが完成する頃には、私はヘロヘロのクタクタになってしまった。
でも、子ネズミちゃんはまったくの疲れ知らずで、ずっとはしゃいでいる。
「こーんなに可愛い服、久々かも~。シオリちゃん、実はセンス良いんだね」
「…、実はって、失礼じゃない?」
「だって、シオリちゃんのクローゼット、黒か紺かグレーしかないんだもん」
「だって、無難だし。好きと似合うは違うでしょ?」
「でもさ、好きな服じゃないとテンション上がらないよ。せっかくセンス良いのに、勿体無い」
「私、Webデザイナーの仕事してるの。センスはそっちで活かしているから、お気になさらず」
「美人なのに、もったいなーい」
「…美人だったら今頃結婚してるっつの」
「え?なんか言った?」
「なんでもない」
ボソッと漏らしたボヤキが聞こえてしまったようだ。
危ない、危ない。
「あ、私疲れたからそこのカフェ入りたいんだけど」
「カフェ!行きたい!」
「分かったから、店内ではあまり騒がないでね」
「はーい」
カフェの中は静かで、外とは違い、湿気がなく、ひんやりしていた。
歩き回った疲れに、外のむしむしした空気がストレスだったから、ようやく開放された。
店内にはコーヒーの香ばしい香りが漂っていて、すごくリラックスする。
「アイスコーヒーと、ケーキセットください。ドリンクはミルクティで」
「かしこまりました」
オシャレな制服を着た店員さんに注文をする。
カフェに誰かと一緒に来たのも、いつぶりだっただろうか?




