⑰女子の支度に待ち時間は付き物
「ねえ、まだ準備終わらないの?」
「んー、あと、もうちょい」
「…、どうしてそんなに時間がかかるの?」
「かかるよー、女の子だよ?逆にシオリちゃん、早過ぎない?」
「そんなことないと思うけど」
「っていうかシオリちゃん、服が地味」
「だって…、もういい歳だし…」
「何言ってるの、まだ20代じゃん」
「ほぼ30だよ」
「30代だとしても、世間では若者じゃん」
「でも、ほら、キャラってあるじゃない?」
「シオリちゃんの方こそ、屁理屈言うじゃん」
「私のは理にかなってるでしょ」
「そんなことない」
「っていうか、あなた、派手すぎない?中学生でしょ?」
子ネズミちゃんは、私が20代前半にノリで買った派手なオフショルダーを引っ張り出して着ている。
っていうか、どこにあったんだろう…
「でも、これくらいしかサイズ合うやつ無いし」
「しょうがない、アーケードであなたの服、買いましょうか。それまではこれ、羽織っておきなさい」
私は薄手のパーカーを渡した。
「えー、せっかく良い柄の服なのに、地味なパーカーで隠しちゃうの?」
「つべこべ言わない。すぐ別のを買ってあげるから」
「はーい」
子ネズミちゃんは渋々、薄いグレーのパーカーに腕を通した。
少しだけ中学生らしくなったかも。
髪の毛だって、どこで覚えたのか知らないけど、私のヘアアイロンでクルクルに巻かれている。
私が使うときはせいぜい、ワンカールかストレートだし、美容室にでも行かないと、巻髪なんかできない。
女の子って、本当に器用なんだな…
「よし、出来た!」
化粧までしっかりと施した子ネズミが、私に報告する。
「はぁ、もう準備するのを待つだけで疲れた」
「もう~、シオリちゃんはもっと気合入れてよ」
「子ネズミちゃん相手に、何に気合入れろって言うのよ?」
実際、妹と買い物に行くようなものだ。
気合の入れようがない…、まあ、妹がいないから分からないけれど。
「ひどーい。私、シオリちゃんと行くの、楽しみにしてたのに」
「はいはい、ごめん。早く行こう」
「あ、待って待って」
靴を履いて玄関のドアを開けると、子ネズミちゃんは小走りで追いかけてきた。
やっぱり、どことなく野生の小動物感がある。
「なんだか、せっかく身支度したのに、靴が残念ね」
子ネズミちゃんの足元を見て呟く。
金曜の夜に買ったゴムのサンダル。
「まあね。でも、さすがに靴はサイズ違うと危ないし…」
「靴も買わないとね」
「でも、さすがに申し訳ないなぁ…」
「気にしないでいいわ。私、服も靴もそんなに買わないから」
「ええ!?私のを買ってる場合じゃないよ!今日はシオリちゃんのも買おうよ」
「要らないわよ。着る機会も無いし」
「ないなら、作ろうよ!たとえば…、合コンとか!」
「その4文字、本当に嫌いなの。良い思い出がない」
「そうなの?無条件に楽しい場だと思ってた」
「世間ではどうだか分からないけれど、私が行った3回の合コンは全部最悪だった」
「そっか…、それは残念だったね」
「だから、私の前ではその4文字は禁止ね」
「はーい」




