⑮ヤドカリの子ネズミ
「シオリちゃんは、料理上手だね」
「そう思ってもらえたなら良かった。でも、平日はぜんぜん料理しないし、レシピも見ないといけないし…、まだまだよ」
「そうかなぁ?お嫁に欲しいくらいだけどね」
「…」
「ええ!?ジョークだよ!?引かないでよ~」
お嫁に欲しいくらいって、そういえばアイツもよく言っていたな。
欲しいくらいといいつつ、実際には貰ってくれないじゃない…
おべっかってやつだったんだろうな。
鵜呑みにしちゃうなんて、馬鹿だ。
「シオリちゃん?」
「あ、ごめん。何?」
「ごめん、あたし、なんか変なこと言った?」
「いいえ。…いや、変といえば変だけど、あなたからしたらいつもどおりの事だったわ」
「そう?なんかすごく考え込んでたから」
「なんでもないわ。ちょっと油淋鶏の味が濃かったかもって思っただけよ」
「濃いかな?あたしは丁度良いよ」
「なら良かった」
未だに首を傾げている子ねずみに気付かないふりをして、ご飯を食べ進める。
子供の前で見栄を張る必要もないとは思うけれど、今期を逃した、なんて知られたくない。
「あたしね、シオリちゃんにいっぱい助けてもらったから、助けて欲しい時は教えてね」
「え、ええ。その時がきたら、ね」
「うん!」
きっとその時は来ないと思うけれど。
夕飯が終わって、ボーっとテレビを見ていると、子ねずみちゃんがそわそわし出した。
「なに?お風呂だったら沸いてるから入ってくれば?」
「え?いいの?」
「先に入ったって私は気にしないけど?」
「だって…、お風呂入って良いって事は、今日も泊めてくれるってことでしょ?」
「…」
そういえば昨日、"一晩の付き合い"みたいなことを言った気がする。
でも、今日の私は、勝手に明日も明後日も子ネズミがいるつもりでいた。
この子の調和力、恐るべし。
「あなたが泊まりたいなら、泊まれば?」
「やったー!泊まるー!!」
「ちょっと、隣人に迷惑でしょ!?静かにして」
おおはしゃぎする子ネズミを宥める。
こんなに喜んでくれるなんて…、泊め甲斐のある子だ。




