金印・志賀海神社 福岡で小旅行気分になった話
五月二十三日。いろいろモヤモヤすることも多くなり、平日に志賀島に行くことにした。
これだけ福岡に住んでいながら「初」の志賀島だ。
近くにあるから行かない。そんな感じだった。
志賀島には、福岡中央郵便局前からバスで一時間で渡れるが、島といっても繋がっているから。
小旅行で気分転換をはかりたい!だったらやはりフェリーだろうと、久々にフェリーに乗った。
フェリーだと志賀島まで片道三十分の船旅だ。
久々といっても、ベイサイドプレイス博多から乗るのは初めてで、
仙台出張のときに訪れた松島遊覧船以来だ。
カモメ、正式にはウミネコかな?のエサをもらう必死の形相が忘れられない。
その時以来だった。
ベイサイドプレイス博多までは福岡中央郵便局前から徒歩で十五分くらい。
ゆっくり歩くと二十数分かかるかな。歩けない距離ではない。
高さ百三メートル赤い鉄塔・博多ポートタワーが良い目印になる。
もちろんバスでも行ける。
ベイサイドプレイス博多には「博多ふ頭第1ターミナル」「博多ふ頭第2ターミナル」という二つのフェリーのターミナルがある。
私は間違えて正面に見えた「博多ふ頭第2ターミナル」に入って、焦ってしまったが、
志賀島行きは「博多ふ頭第1ターミナル」だ。
博多ふ頭第一ターミナルから出ているフェリーの行き先は「玄海島」「海の中道」「志賀島」「博多湾クルーズ」「壱岐対馬」。
博多ふ頭第一ターミナルの切符売り場は、ベイサイドプレイス博多C館の奥にあった。
なんか外国人が結構いた。
トイレもきれいで、ロッカーもある。
料金は、志賀島まで片道30分、670円。
私は10:15 福岡市営渡船志賀島「きんいん」号に乗った。
「きんいん」は小型旅客船で、
ベイサイドプレイス博多(10:15)⇒西戸崎(10:30)⇒志賀島(10:45)
の三十分で志賀島に到着する。ちょっとした船旅を楽しめる。
甲板の席はすぐに埋まったので、階段を下りた席にすわった。
席は早い者勝ちだ。
見た目小さなフェリー「きんいん」だが、中は思ったよりゆったりとしていた。
座席数は三十人分くらいかな。
平日の昼間だったので、乗客は十数人、本当にゆったりとしていた。
地下の、これが一階なのかもしれないが、目線が海面に近くてこれはこれで良かった。
フェリーのスピード感と水しぶきが感じられる。
快晴の天気、沿岸にある福岡タワーやヤフードームも望めて壮観だった。
普段、見ることのない景色に心も晴れる。
テレビも設置されていて「ひるおび」が流れていた。
昼間のテレビをみることもなかなか無いのでかなり惹かれたが、
いや、気分転換だからと、海側に視線を向けた。
すると番組は「ティッシュペーパー、トイレットペーパー 値上がり?」という話題に。
「マジか」
思わず画面に目が留まる。
いや、今は、海を見なければと視線を戻す。ニュースはいつでも見れるから。
値上がりするのかよ!
鼻炎気味の私は悄然とした気分になったが、
花粉症の人たちはもっときついだろうと思い直した。
西戸崎に着き、結構乗客が降りた。
室内は、三人になった。
ほんと、ゆったりしている。
西戸崎を出発すると、スピードが上がった気がした。
船首が波を切る音と、波に揺れながら進む爽快感!
すると、電波が悪いのか時々テレビ画面にエラーメッセージが表示されたりした。
やっぱりこうなるんだな~。
既に普段できない体験をしている。心が躍った。
三十分で時間通り10:45に「志賀島」に着いた。海の旅は渋滞もなく快適だ。
やはりフェーリーの旅を選んで正解だった。
まずは、徒歩で金印公園へ向かった。
志賀島旅客待合所から歩いて三十秒ほどの場所には、志賀海神社の石造りの鳥居があり、
そこから左に歩みを進めた。
志賀海神社の鳥居のすぐそばにレンタルサイクル店もあるが、
本日の目的は、金印、志賀海神社、海浜辺なので、のんびり歩くことにした。
両側に民家が並ぶ道路を歩いていると、甘夏の無人販売が置かれていた。
「代金はこの中へありがとう」と書かれている。甘夏 一盛300円だった。
いつもあるのかは分からないが、「のんびりしてるな~」と思った。
良い感じだ。自分が旅人になったような異空間を感じる。
また少し歩くと、志賀島小学校や保育園があった。
運動会の練習をしているようだった。
生徒の人数が少ないような気がするし、何かホノボノとしているように見えた。
そのまま歩みを進めると、
突然、潮の香りと、強い潮風が吹いてきた。帽子が飛びそうなほどの風が襲う。
視界の左側にパッと海が広がった。いい眺めだ。
しかし、今日は暑いな。
だいぶ気温が上がっているようだ。
少し歩くだけで喉が渇く。ただ、ジメジメしていないのと、潮風のおかげか不快ではない。
ペットボトルの水で喉を潤しながら道なりに進む。
道路では「自転車通行帯」の工事が行われていた。
車は結構な間隔で行き交っている。
サイクリングを楽しんでいる人たちともすれ違った。
道が狭いので、たしかに、この工事は必要だろうな、と思った。
十八分くらい歩くと、金印公園に着いた。
ちょっと狭い駐車場と、出来たばかり(?)の清潔なトイレがあった。
平日だが四台ほどの車が停まっている。
公園の入口には、「漢委奴國王金印発光之処」記念碑が建っていて、
整備された階段を登ると、高台に金印公園があった。
金印公園には、金印のレプリカがある。
いや~、小さい、小さいとは聞いていたが、ホントに小さい。
一辺2.3cmの正方形、重さ108gの金色で、つまみの部分は蛇がとぐろを巻いたような
形になっている。本物は福岡市博物館にあるそうだ。
まあ、これはこれで可愛いもんだな。
また、展望台からは福岡市内が一望できる。
今日は快晴だが、福岡ドームは靄がかかったように霞んで見えた。
もしかしたら光化学ダイオキシンの影響?かもしれない。
わからないけど。
ちなみに、ダイオキシンとはオゾンのことだそうだ。
ただ、壮観であることにはかわりない。良い眺めだった。
この金印公園。金印のレプリカと、この眺望以外にはこれといったものがない。
そう長く滞在できる場所ではないかもだ。
今日は暑いし。
ここから、徒歩10分くらいで蒙古軍の供養のために建てられた蒙古塚などがあるそうだが、志賀海神社に一番時間をさこうと思っていたため、志賀島旅客待合所に戻った。
志賀島旅客待合所は、静かでそして涼しかった。
あまりに静かで居心地がいいので暫しトイレ休憩。
トイレもきれいで、小便用が三つ(だったと思う)と、
狭いが掃除の行き届いた洋式便座が一つあった。
十分ほど休憩して、志賀海神社へ向かう。
志賀島旅客待合所からすぐのところに志賀海神社の石造鳥居「志賀宮」があるが、
そこで久しぶりに「赤いてんとう虫」を見た。
少し前、テレビ番組で『日本で赤いてんとう虫が消えつつある!』という話題を見たばかりだ。
確かここ数年見ていないな、とは思っていたが、ここで出会った。
じっくりと見る。
赤いてんとう虫といえば、
タイムボカンシリーズのテントウムシ型小型飛行機「テントウキ」を思い出す。
この「赤いてんとう虫」が消えつつあるのか~。
何か愛おしく感じる。
本当だとしたらやはり寂しい。
参道はここから真っ直ぐ伸びている。
この鳥居の元に「レンタルサイクル店」があり、参道を進むと、
すぐに「中西食堂」などの食事処もあった。
八分ほど参道を歩くと、
二本のポールが立った場所があり、そこから志賀海神社・本殿への階段を上る。
そこには御潮井と呼ばれる清めの砂があるので、
御潮井を左、右、左と軽くふり身体を清める。
さすが、禊祓いの神様だ。
そういえば御潮井って、筥崎宮にもあった気がするがこんな風に使ったことないな。
いいのだろうか?あの御潮井は持ち帰り用か?
などと考えながら、本殿へ向かう。
まず、印鑰社に参拝。
そのまま上ると、志賀海神社楼門の手前に境内末社「山之神社」と
書かれた神社が祀られていた。ご祭神は大山津見神。
御神前に、オコゼやアラカブを備えるとその顔立ちの悪さを見て喜快に思われ、
快く願いを叶えてくれると由緒書にある。
何か楽しい神様のようだ。
また「空の財布」を供えると、財が貯まるといわれていて、「空の財布」が結構、
収められていた。
なんかすごいな。
「山之神社」に参拝すると、清らかな風を感じた。
楼門をくぐり、志賀海神社の拝殿へ進む。
手水舎で両手と口を清める。
本殿には三柱の綿津見神が祭られている。
相殿は神功皇后、玉依姫命、応神天皇。
禊祓いの神様のためか、拝殿の前にも御潮井が置かれていた。
御潮井を左、右、左と軽くふり清め、参拝した。
本殿の右には遥拝所がある。その向こうには海が広がっいて、
亀の形をした石(亀石)が二つ安置されている。
本殿の後ろには、今宮神社、荒神社、祇園社、大神宮社、末社の惣社などの摂社末社
が祀られていた。
そしてトイレも見てみたが、これはビックリ!
スリッパに履き替えて入るのだが、休憩所と兼ねていて驚くほど綺麗だった。
志賀海神社は海が近く、深い緑に囲まれた山の中腹に位置していて、厳かな雰囲気に充ち充ちていた。
本当に清々しい気持ちになれる神社だった。
元宮は三つとも勝馬にあるそうなので、次回は訪れてみようと思った。
神社に参拝した後、浜辺に向かった。
参道を降りていく途中、眼前に浜辺が広がっているのが見えた。
本当にいい景色だ。
志賀島センターから志賀島橋沿いには、白い砂浜が伸びている。
もちろん海水浴シーズンではないので、ほとんど人影もなかった。
見るだけのつもりだったが、『海水に触れたい』という衝動がムクムクと
湧きあがってきた。
細かな粒度の砂浜に足を踏み入れる。
久々のこの感覚。心地いいサクサク感。靴が砂浜に埋まる。
波打ち際まで歩いた。
海水は透明度が高く青く澄んでいて、波も高くない。
折角だから、海に入ろう。タオルはリュックに入っていたはずだ。
私はリュックを降ろし、靴と靴下を脱ぎ、ジーンズを膝までまくり上げて海に入った。
海水はほど良く冷たくて、気持ちよかった。
志賀島橋は車が行き交っているが、広がる白い砂浜にいるのは私一人だった。
こんなことなかなかないだろう。
空は真っ青でうすい雲が流れ、海も青くて穏やかに波打っている。
水平線の向こうには福岡ドームや航行する貨物船やフェリーを見渡すことができた。
「これは良いや!」
これは初めての体験だった。
この眺望を独り占めにしてる感じ。
二十分くらい海に膝までつかった。ホントに気持ち良かった。
ジーンズが濡れないよう膝下くらいまで浸かったつもりが、
たまに湧き起こる高めの波に、まくったジーンズがぐっちょりと濡れてしまった。
「うわっ!」
と我に返ると、ふと心配になった。
これって、変な「入水○○」と勘違いされてないか?
一人、海に入っていく寂し気な男。
不安になった。
私はスゴスゴと浜辺に戻り、砂に塗れた足をタオルで吹き払って靴下を穿いた。
まくったジーンズを戻すと、膝下がぐっちょりと濡れていた。
しかし不快感は全くなかった。
この快晴ならすぐに乾くだろうと、志賀島センターの辺りまで戻り、今度は右に曲がった。
この先はどうなっているのか?
すると、左側に志賀海神社の駐車場があった。
志賀海神社の鳥居があり、そこからも本殿に上ることができるようだ。
志賀海神社に車やバイクで来るときは、ここから参拝すると良いだろう。
大分、ジーンズも乾いてきたし、お腹も空いてきたので、志賀島センターに戻り、
「志賀島 海鮮レストラン遊」で昼食をとった。
メニューは刺身や海鮮、天婦羅を中心としたものですべて美味しいそうだ。
私は、一番の人気メニューらしい「海鮮丼」を注文した。
値段は、1,300円で、+200円でお味噌汁をあら汁に変更できるそうなので、
折角だからそうしてみた。
合計1500円。
これは美味しかった。
魚は新鮮でプリプリだし、米(ご飯)も美味しかった。
食べ終わり、時間を確認すると、13:40。
もう帰る時間だ。
帰りのフェリーは13:50。
これを逃すと次は15:40になる。
ここは志賀島旅客待合所までは一分くらいのところだから、ちょうどよかった。
滞在時間、三時間。
自分なりには、十分堪能できた。今度は志賀島を一周してみよう。
ちなみに志賀島で12908歩、歩いた。
帰りのフェリーこそ甲板の席に座りたかったが、
すぐに埋まったので諦め、階段を下りた席にすわった。
ここには私ともう一人の乗客しかいなかった。
やはり、甲板は人気のようだ。もし座りたかったらお早めに。
テレビでは「ひるおび」が終わろうとしていた。
ちょっと笑ってしまった。
途中、西戸崎に着くと、すぐ近くに乗馬した人々の姿が見えた。
「何これ?ああ、ここか~」
乗馬クラブ クレイン福岡だった。
話には聞いたことがあったが、ここだったか。
こんなに海に近いんだ。
そして、なんか女性が多い気がした。
予定通り14:20にベイサイドプレイス博多に到着した。
志賀島は博多から三十分で行ける距離だが、十分、旅行気分が味わえる場所だった。
もっと早く行っておけばよかった。
海水浴シーズンを外せば、かなりゆったりと過ごせるのではないだろうか。
特に、フェリーはお薦めだ、
三十分(往復一時間)フェリーに乗るだけで「旅行した~」という気分になれる。
自宅に戻ったのは、十五時くらいだった。
鏡をみると、うっすらと日焼けしていた。
目も日焼けしたのか、なんかシバシバしながらこれを書いている。
良い休日の過ごし方を見つけた気がする。
また、行こうかな~。
最後まで読んでいただきありがとうございます。