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エレベーターは一人で乗りたい話


 私はエレベーターに乗り込むと、まず『目的階』のボタンを素早く押し、

 すぐさま『閉』ボタンを押下する。


 せっかちなのだろうか。


 しかし日本人にはそういう類の人が多いとみえて、

 少し古風なエレベーターの乗ると『閉』ボタンが薄く褪色しているところをよく見かける。


 そして、私は安心する。


 俺だけじゃないなと。

 

 特に、自宅マンションのエレベーターは、一人で乗りたいと思う。


 もし、エレベーターホールに先客が居る場合、その人が乗り込んだ後に、

 エレベーターホールに向かうようにしている。


 階段を使ってもいいが、十階以上はちょっときつい。


 まだ昼間はいい。


 夜は、階段の電灯が切れていることもあるし、人が座っていてゾッとしたこともあった。


 自宅で吸えないないのだろう。階段にポツンと座り、煙草を吸っていた。

 右手に火の点いたタバコ、左手に携帯灰皿。


 相手も私を見て、気まずそうにペコリと頭を下げた。

 年齢は私より少し若いくらいだろうか。

 すこし同情したが、ビクリとはするものだ。


 また夏場は電灯に虫が集まる。

 そのため気味の悪い蛾などの虫に襲われることもある。


 なるべくエレベーターに乗りたいとものだ。


 エレベーターでは他にも悩むことがある。


 自分がエレベーターに乗り込んだ後に、女性の人影がちらりと見えた時、

 『開』を押して待つべきか、そのまま行くべきかだ。


 扉を閉めたとき(私はいつも「閉」を押下して閉めているから)、

 扉越しに相手と目が合うとかなり気まずい。


 ただ、親切心を出して『開』を押下して待っていたとしても、

 相手が本当は乗りたくない場合がある。女性ならなおさらだろう。

 しかし、しょうがなく乗らざるを得ないことになってしまうかもしれない。

 有難迷惑になってしまうのでは?などと答えのないことも考えてしまう。

 

 また、エレベーターホールに先客がいることに気づかず、

 うっかり姿を現してしまったときなどは、

 何か用事を思い出した風な子芝居をうって、オートロックの自動扉に向かうことも度々だ。


 他にもある。


 特に気まずいのは「ゴミ出し」だろう。


 なるべく階段を使うようにはしているが、雨の日などはやはりエレベーターに乗りたい。

 うちのマンションは階段まで雨が降り込んでくることもあるからだ。


 ゴミの一杯詰まったゴミ袋を抱えているときに、

 途中階で乗り込んで来られたときのあの気まずさといったらない。

 申し訳ない気持ちになる。

 ゴミ袋は透明だし、相当嫌だ。相手もそうだろうけれど。


 逆も気まずい。


 ゴミ袋を持って乗っている人がいる時に、乗り込むパターンだ。


 ちらと相手を見遣ると、相手もちょっと気まずい表情をしていたりする。

 そのとき凝視するのはやはり階数表示器だ。

 心の中で八階、七階と無意味にカウントしていたりする。


 ホント、気まずい。


 たまにだが、エレベーターの壁面の鏡で髪型をチェックしてる人がいることもある。

 笑ってしまったのは、あまりにもヘアスタイルに集中していたのか、

 私の階で止まった時、一階と間違えて、降りてしまったことだ。

 さすがに途中で降りないだろうと思い、いつもはすぐに押下する『閉』ボタンを

 押さずにいたら、照れくさそうな顔をしてエレベーターに戻ってきた。


 また、昔は『階』を押し間違えた時も、非常に気まずかった。

 誰もいない階で扉が開くときのあのシュールな感じ。


 ちなみに今のエレベーターはボタンを押し間違えてもキャンセルすることができる。

 昔から出来たのかもしれないが。私は知らなかった。


 その方法はエレベーターメーカーにより様々なようだ。


 一例を上げると、キャンセルしたい「階数ボタン」に対して以下のような操作を行う。


1.キャンセルしたい「階数ボタン」をドアが開いている間に二回連続で押す。

2.長押しする(三~五秒)

3.五回連続で押す

4.ボタンを「×」となぞる

5.長押し(一秒程度)後、点滅したら、もう一度押す。


などなどだそうだ。


 ちょっと話がそれた。


 やはり、エレベーターは一人で乗りたい。


 たまにエレベーターが三階くらいで止まっているときに、

 マンションの玄関ドアが開いて風除室に人が入ってきた場合、

 一基しかないくせにボタンを押下してもなかなか下りてくる気配がないときがある。


 そんなときは、なぜか焦ってボタンを連打してしまう。


 ジェイソンかゾンビが迫ってきたのか、というくらいに。

 ボタンを連打してもエレベーターの動きには何の影響もないというのに。


 だからエレベーターホールで待つときは、

 わざわざ自分の姿がオートロックの自動扉から見える位置に立っていたりもする。


 もし相手が私と同じような、一人でエレベーターに乗りたいタイプだったら、

 私が視界に入れば、エレベータのエントランスには入ってこないだろうと思うからだ。


 気を使いすぎかもしれないが、私も風除室から確認して、エレベーターホールに人がいると

 わかったら、メールボックスの中身を確認するなどして、その人がエレベーターに乗り込む

 まで時間を潰す。


 しかしなぜ私はここまで一人がいいのだろうか、正直よくわからない。


 会社やオフィスビルでは大丈夫なのに。


 気が張ってるからだろう。


 仕事中の時間は会社が管理している時間だし、

 いろんな気を遣うこともないからかもしれない。


 唯一オフィスビルのエレベーターで困ることは、「お腹が鳴る」ことだ。


 集団でエレベータに乗っていると、空腹なわけでもないのに「グ~」となる時がある。


 不思議だ。一人でエレベーターに乗っている時に、お腹が鳴ったことなど一度もない。

 それもいつもではなく、たまに来る。

 そのときは息を詰めて我慢するが、結構苦しい。


 これにもホントに困っている。


 こんな感じだから、私は成人してからは百貨店、デパート等の商業施設では

 エレベーターに乗ったことがない。

 なかなか一人で乗ることが難しいからだ。

 だいたいエスカレーターか階段を使う。


 人見知りがそうさせているのだろうか。知らない人と密室状態になるのが嫌なのか?


 エレベーターに一人で乗ろうとすることと、

 集団で乗った時にお腹が鳴ることの原因は同じなのかもしれない。


 わからないが、そんな気がする。


最後までお読みいただきありがとうございます。


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