表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
9/59

龍笛の調べ

 その日は散々だった。

 電車を乗り過ごすわ、塾の時間に遅れるわ、授業中、集中することが

できないわ、先生に叱られるわ、いつもの僕ではなかったよ。

 これも、すべてアイツらのせいだ。本人らは、デビルドラゴンを

名乗っているが、高校の大三元、大惨龍と呼ばれるヤンキーのお姉さま方の

せいだ。

 『厄介ごとに巻き込まれるのは、お前に隙があるからだ。』

 祖父にそう叱られるだろうけど、そもそも何故、僕が助っ人として眼を

付けられたのか甚だ不思議なんだよね。

 僕が大東流合気柔術を修行していることは、祖父以外、知らないはず。

 僕は見た目、モロ、がり勉タイプ。これでも、脱いだら細マッチョで

凄いんだけど、誰も僕が強いだなんて絶対に思わないはず。

 これは、きっと神の気まぐれか、悪魔の仕業に違いない。

 お祓いをしなければと思い、帰り道、漁港の市場に立ち寄った。

 夜遅く、誰もいないので、遠慮なく海に向かって演奏ができる。

 肌身離さず持ち歩いている龍笛りゅうてきである。

龍笛は竹の管で作られ、表側に「歌口うたぐち」と7つの「指孔ゆびあな」を

持つ横笛で、能管、篠笛など和楽器の横笛全般の原型・先祖であると

伝えられている。

 龍笛はシルクロードを伝わって、ヨーロッパでフルートになったとも

言われている。  現在では入門用にプラスチックでできた物も存在するが、

僕のは正真正銘、本物。

 煤竹すすだけ製で、上部に鉛を入れ、外側をかばとう

巻いたりするなど意匠が凝らされている高級品なんだよね。

内部に漆を塗り重ねるなどの工程で、豊かな倍音と音量が得られる逸品。

 指孔が龍の背中、背びれを思わせるほどカッコいい。

 これも、祖父から与えられたものだ。

 雅楽の楽器の中では広い2オクターブの音域(E5~D7)をもち、低い音から

高い音の間を縦横無尽に駆け抜けるその音色は「舞い立ち昇る龍の鳴き声」と

例えられる。

 そう、それが名前の由来となっている。

 同じ運指(指使い)であっても、息の吹き方によって、低音であるフクラ

高音であるセメとに吹き分ける事ができるのが、妙である。

 龍笛は古くから貴族や武将に好まれ、堀河天皇や源義経、源博雅みなもとのひろまさなどの、

龍笛にまつわるエピソードはいくつも伝えられている。

 また、清少納言も『枕草子』の中で、「楽器の中では、笛がとても良い」と

書いている。

 こんな話も、幼い頃から祖父に聞かされ、龍笛の修行もさせられた。

 悪いことには悪いことが重なるものだ。

 僕が、何もかも忘れ、一心不乱に、龍神・倶利伽羅龍の真言をイメージした曲を

演奏していると、秘かに静かに近づく影があった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ