星のビーナスの謎
『平安時代の武将、新羅三郎源義光は、弓馬の術に優れ、笙の名手であった。
義光は、晩年、密教道場で心身を鍛錬し、無敵の神通力や霊力を体得し、源氏の家に
伝わる秘術、「手乞」に創意工夫を加えて、合気の術を創始した。
この合気の術を大東流と称するのは、義光が、幼児期、大東館に住み、大東三郎とも
呼ばれていることに由来する。』
僕は、幼い頃から、祖父に耳にタコができるほど、いやタコ焼きがつくれるほど、
その絵本を読み聞かされた。
「ワシは昭和の人間だ。外国人や芸能人のような名前は好かん。」
それにだ、本人は否定しているが、奏夢という僕の名前を推薦したのは、
祖父だと僕は睨んでいる。
話を戻そう。
大東流は中興の祖と名高い武田 惣角の流派、いわゆる宗家と、
武田惣角から免許皆伝を許された久 琢磨が組織した琢磨会に大きく
分かれている。幸道会、六方会など細かく分かれたことは、省略する。
僕の性が近藤ってことからもうお分かりだろうが、祖父は宗家の直系である。
大東流の技もその精神も、宗家直々に教えをいただいた。
森 星明は、果たしてどの大東流なのか、めちゃくちゃ気になる。
師匠は誰なのかも、どんな修行をしているのも、気になる。
「もしもし、近藤君、聞いていますか。」
よほど、怖い顔をしていたらしい。三人組が、恐るおそる聞いてきた。
「すみません。考え事をしていました。それで、話はもう終わりですか。」
「ここからが、本題だ。このままやられっぱなしでは、デビルドラゴンの名が泣く。
リベンジを申し込んだ。」
「あっ、そうですか・・・じゃなくて、それは無理でしょ。200、いや300%。
返り討ちにあいますよ。」
僕は、きっぱり断言した。
「うちらも、馬鹿じゃない。それくらい、わかっているわよ。
だからさ、近藤君。お願い、頼みがあるんだけどな・・・・」
急に、テレビドラマで見たキャバクラ嬢のような口調と仕草で龍美が迫って来た。
僕は現役高校生、断じてキャバクラなど行ったことはない。
大学を卒業して、就職したら、行きたいとは考えている。
いや、今はそんなこと考えている場合ではない。
咄嗟に危険を感じ逃げようとしたが、葵と紅子が道を塞ぐ。
誰か、助けてくれ。このままでは、塾の時間に遅れる。