謎の武術
何を隠そう。僕は物心つく前から、祖父にある武術を叩き込まれている。
祖父は表舞台に立つことはなく、世間ではあまり有名ではないが、武術界では
生きる武神、ラストサムライとか呼ばれている実戦派の達人なんだ。
僕は祖父の教え、いやあれはシゴキだな、その御蔭でちょっとした達人かも。
森 星明がその僕と同じ技をつかえる、同じレベルに達しているとは、あれだ、
サプライズ、驚愕だよ。
正直、この目で見なければ信じられない。
武人の顔になって考え込む僕に、龍美が遠慮がちに聞いてきた。
「おいじゃなくて、あのう、あいつの技について教えてもらないかい。」
僕は立ち上がり、頭を掻きむしった。考え込むときの癖である。
「断定はできませんが、恐らく柔術でしょう。」
「柔術って、あのブラジルのかい。」
「そうか、あいつはブラジル人とのハーフだったのか。道理で、顔が濃いはずだ。」
バシッ バシッ
「そんなわけねえだろう。」
龍美が、葵と紅子の頭をどついた。こいつら、吉本か。面白い。
「やはり、柔術だったか。それで、ずばり聞くけど合気かい。」
こいつ、只のヤンキーじゃないな。僕は、ちょっと驚いた。
「姉さん、合気って合気道ですかい。」
「あのハリウッド映画のアクション・スターが修行している合気道ですかい。」
僕が驚いている隙に、懲りずに葵と紅子が割り込んで来た。
龍美は、呆れた様子で、二人に説明する。
「それは違うぞ。確かに、あのアクション・スターが映画の中で大暴れするから
合気道本部がイメージを損なうから、名を出すのはやめてくれって訴えたのは
ネットでも有名な話だが、合気道じゃないんだな。」
こいつら、武術オタクか。ちょと、親近感がわく。
「何、笑ってるんだよ。キモイ。それで、大東流のどっちなんだい。」
やはり、この龍美、只のヤンキーじゃない。
普通、大東流合気柔術の存在を知る者は少ない。
ましてや、大きく二つに分かれていることなど知る者はまずいない。
笑った時の龍美の笑顔、昔、どこかで見たことがあるような気がするが、
思い出せなかった。