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僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
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大魔神と化す

「え~、それではダンスバトルの勝敗について決めたいと思います。」

舞台の上に電龍組と森 星明が距離を置いて立った。

 誰が見ても、どう考えても、森 星明の舞、神の舞の方が勝っている。

 元カレの新生徒会委員長の林崎 武が内心の喜びを隠しきれない様子で

マイクを握った途端、事件は起こった。

「こんなの無効だ。」「そうだ、そうだ。」

「あんなのはダンスじゃない。」

 先ほどまで森 星明の舞に感動して、涙を流していたはずの電龍組のファン、

親衛隊が突然暴れ出した。勝ち負けになると、話は別なのかな。

「何を言ってやがる。」「ふざけんな。」

「決めるまでもなく、星明きらら様の勝ちだ。」

 森 星明のファン、親衛隊も黙っていられない。両陣営の激しい

乱闘騒ぎが勃発した。

 最初は、僕には関係ない、どっちが勝っても僕の一日の自由は奪われる、

下手をすれば一生が終わると、悲観的に静観していた僕であった。

 しかし、次の瞬間、僕は、激怒した。

 文化祭実行委員長を務めるコンタックこと近藤拓也、僕の親友のタックンが

間に入って、止めようとしたが、あっけなく撃沈。もみくちゃにされ、床に

押し倒され、無残にも踏みつけられているではないか。

「許さん。」

 こんな時の僕は、大魔神と化す。怒りのオーラを身にまとい、自分の席から、

スクッと立ち上がる。

 五感はこれ以上なく研ぎ澄まされ、乱闘騒ぎの中心に静かに歩み寄る。

 一番近い男子の肩に触れた。決して、つかんではいない。ただ、触れただけで、

その手で小さく円を描いた。それだけで、その男子がストンと腰を床に落とす。

 ポカンと口を開けて、僕を見上げる。

 暫く、数人を同じように、面白いくらい床に落とした。

 そのうち、異常な事態に気づいた者の一人が、「何だ、おまえ。」と近づき、

僕の肩をつかもうとした。僕は、その手を払うことなく、肩で小さく円を描いた。

 またしても、その男子はストンと腰を床に落とす。今度は、幽霊でも見るように、

僕を見上げる。

 別のボクシングの心得があるらしい者が、左ジャブから僕の顔面に右ストレートを

繰り出した。 僕は、避けることもせず、包み込むように左手を差し出すと、その男は

後ろ向きに激しくふっ飛び、他の男子を巻き込み、床に倒れた。

 自信のあった攻撃だけに、茫然となっている。

 祖父の技の切れに比べれば、雲泥の差であるが、僕だってこれくらいできるぞ。

「気をつけろ。そいつは、何かやってるぞ。」

 額や耳に柔道をやっている証を刻んだガタイの良い男が叫ぶと、その仲間の一人が、

用心深く近づき、素早く右手で僕の奥襟を、左手で右袖を取った。

 僕は脱いだら凄いんだけど、身長170cmの細身で、見るからにガリ勉タイプで、

とても強そうには見えない。

 みんな、「可哀そうに投げられるぞ。」「全身骨折で、内臓破裂か。」「死んだか。」

「死なないよな。」などなど、心の中で心配してくれたらしい。

 その男子が必殺の払い腰に移ろうとしたが、床に倒れたのはその男であった。

 僕は、気を合わせて、体さばきだけで投げたのである。本来ならば、腰にガツンと

当身を入れるところだが、うちの高校の生徒なので優しくしなければならない。気を遣うな。

 流石にこうなると、みんな、僕を見る眼が変わった。

 学年二の秀才が、これほどできるとは、とても信じられない。

 今度は、用心深く、左右から男子二人が僕の両腕をつかみ、なおかつ、背後から僕を

羽交い絞めにする。三人の屈強な男子に身動きのできない状態になり、誰もがこれで

終わりだと思った。

 次の瞬間、床に投げられたのは、僕ではない。その三人であった。

 簡単に言えば、三人取り。完全脱力し、螺旋の動きで、三人の力のベクトルを誘導して

やったのだ。 力に力で対抗してはいけない。 三人は、お互いの力がぶつかり合い、

どうしようもなくなってしまったのである。

 乱闘はおさまり、会場はシーンと静まり返り、僕の周りから、みんな大きく円を描いて

離れる。半径5mくらいかな。幽霊か、魔法使い、UMAでも見るような眼で、僕を見るではないか。

 コンカツだけは、僕の技の切れに度肝を抜かれていた。

「そこまでにしてちょうだい。」

 鶴の一声、そこで声があがった。

 

 

 





 



 


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