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僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
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龍美の秘密

 放課後、コンカツこと柔道部顧問にして生徒指導部主任、

担任の近藤克治先生に生徒指導室に呼び出された。

「リー君、一体何したの。」

 近藤先生は、ヤンキーや不良生徒からは、鬼と恐れられている。

「安心して。僕、何も悪いことしてないよ。先に帰ってね。」

「うん、じゃあ。」

 コンタックこと近藤拓也君は、心配しながら部活に向かった。

 コンコン

「失礼します。」

 僕は、ノックをしてから生徒指導室のドアを開けて、入った。

「お~、来たか。すまんな。まあ、そこへ座れ。」

「あのう、何でしょうか。」

「いやあ~、龍美たちのことだ。」

「勉強を教えてくれと、頼まれた件ですか。」

 僕は、内心、ハートにダーツが刺さったみたいに、ドキッとしたが、

平静を装う。

「どうだ、引き受けたのか。」

「無理ですね。彼女らのレベルが低すぎます。

 それに、彼女らに勉強を教える暇があったら、自分の勉強をします。

 東大合格を目指してね。」

 自分でも呆れるくらいシャアシャアと嘘を並べた。

 彼女らの悪智慧の凄さは認めるが、これ以上関りは避けたい。

「そうか、そうだろうな。やっぱ、無理か。残念だ。」

 本当に、残念そうだ。あれほどデビルドラゴンに嫌われているのに、

この先生、やっぱ良い人だと、感心する。

「先生、どうして、彼女らに肩入れするんですか。」

 僕は、不思議に思った。

「あの龍美。白木龍美は今ではあんなんだが、中学校時代は柔道やってて、

女三四郎、やわらのお姫様といわれるほど、美しく強かった。

 全中で優勝経験もあり、我が高校にスポーツ推薦で入学した。

 もちろん柔道部に入部したんだが、色々あって辞めた。」

「イジメですか。」

 女子部員からの嫉妬、嫌がらせなんか容易に想像がつく。

 もしかしたら、男子部員からのセクハラやストーカーにあったのかもしれない。

 僕の質問には答えず、近藤先生は辛そうに言った。

「決定的にはだな、高一の新人戦の決勝で、相手に破れ、右肘を折った。

 再起不能までの怪我じゃなかったが、それで、心まで折れたんだろうな。

 辞めてしまった。

 詳しくは言えないが、葵と紅子も似たようなものだ。

 そして、あいつらは見ての通りになってしまった。

 俺は、あいつらの力になれなかった。未だに、救ってやれない。

 俺の力不足だ。悔しい。」

 魂の慟哭とも言える告白に、僕は鳥肌が立った。

 今どき、こんな先生がいるんだ。ちょっと、感動してしまう。

 あの三人の悪魔にもそんな悲しい過去があったとは思いもしなかった。

 少しだけ、ほんの少しだけだよ、あいつらに対して認識を改めた。

 しかし、今日の決闘だけは、余計だよなあ~。

 生徒指導室を退室した僕は、何はともあれ塾へと向かった。

 


 


 

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