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僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
11/59

祖父は超女嫌い

「只今、帰りました。遅くなってすみません。」

 夜、10時を過ぎ、帰宅したが、家の中は真っ暗だ。

 人の気配が、微塵も感じられない。

 シュッ

 暗闇の中、白刃が一閃、背後から僕を襲ってきた。

 僕は、前回り受け身を取り、かわしてから、素早く振り返った。

「御祖父様、遅くなったのには理由があるんです。

 聞いてくれますか。」

 了承の印に、電灯が着けられた。

 まったく、僕の祖父は困ったものだ。

 時折、修行と称し、こうやって僕を襲ってくる。

 僕だからいいようなものの、いくら刃を研いでない日本刀とはいえ、

当たったら、鉄だもの、無事に済まない。打撲ですまない。

 骨折か、下手をすれば内臓破裂、危険だ。時代錯誤も甚だしい。

 教育委員会に、児童虐待で訴えてやりたくなる。

「おまえ、女の匂いがするな。そこに、座れ。成敗してくれるわ。」

 龍美の匂いを感じ取られたのかと慌てた僕は、必死に、塾の帰り、

漁港で会った不思議なご婦人の話をして、話をそらそうとした。

「ほう、おまえの背後をとったとな。

 おまけに、倶利伽羅龍の真言を知るとな。

 極めつけは、ワシの口ずさむ曲に、肩を震わし涙したとな。

 ふ~ん、面妖な。不可思議な話じゃ。」

 良かった、喰らい付いてくれた。命拾いしたぞ。

 結婚の約束もしていない嫁入り前の娘と接吻したなどと

知られたら、殺される。

 まったくもって、祖父の女嫌いには困ったものだ。

 町内会の敬老会にいくら誘われても、一度も行ったことがない。

 理由は一言、「ワシは女は好かん。嫌いじゃ。」である。

 よっぽど、昔、どこかの女に酷い目にあったんだろうな。

 それにしても、よくそれで御祖母様と結婚して、子どもつくったよな。

 「何か、言ったか。」

  僕の祖父は時折、エスパーかと疑うくらい、人の心を読む。

 「いいえ、何も。今日は、遅くなったので、もう寝ます。

  お休みなさい。」

 僕は逃げるように、自分の部屋に駆け込み、べッドの上にバタンと

文字通り倒れ込んだ。

 今日は、色々なことがありすぎた。めっちゃ、疲れた~。

 明日に備えて、早く寝ることにしよう。

 僕は、その頃、祖父が仏壇の前で、祖母の位牌の前で、何やら

語りかけていることに、まったく気が付かなかったのである。

 


 

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