表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

全ては闇の中

作者: 紫ヶ丘
掲載日:2017/06/13



《エリーゼ・ティラミ公爵令嬢》


原作


四歳のとき父親が義兄を連れてきた事により両親の仲が拗れ母親が病に倒れる。

六歳で母親が死亡。

父親と義兄のせいだと恨む。

七歳のとき第二王子との婚約を打診されるが第一王子に一目惚れし第一王子の婚約者になる。


性格はわがままで酷い癇癪持ち。

ヒロインいじめの筆頭。

ラストでは身を滅ぼす。



現状


母親が健在。

両親の仲も良好。

義兄大好き。

仲良し一家と評判。

第二王子の婚約者候補。

領地改革に暇がない。




「……これ、絶対エリーも転生者だよね」



集めなくても集まるエリーの噂は明らかに原作と乖離していた。

わがままで気に入らないことがあると使用人達をムチ打ちしていた原作と違い、朗らかで人当たりがよく友人も多いらしい。

エリーが開発した商品は上流階級向けのものが多いが領民向けの物もあり、中でも道具類は前世を思い出す物ばかりだ。



「……私の出番はないか」



私はリリィ・フロランタン。

一応原作漫画のヒロインだ。

原作ではリリィ・シフォンだったが母の再婚相手が変わったため今の名前になった。

本来の父親はシフォン男爵。

私が六歳のときに鷹狩りをしに来た男爵が母を見初めるということが分かっていたのでその前に良さげな相手を探すべく頑張った。

だってシフォン男爵嫌いだったんだよ。

顔はいいけど原作では母を過労死に追いやった元凶だからね。

ヒロインの義父だからかいい感じに言い繕ってたけど途中で病がちになって隠居、甥に後を任せてそのままフェードアウトかと思えば最後王子とヒロインの結婚式にちょろっと出る。

『お前は私の自慢の娘だよ』という台詞のなんと陳腐なこと。

そんなこんなで現在の父親はやり手の商人だ。

商売に関しては色々シビアだけど家庭では母だけでなく連れ子の私にもとても優しくしてくれる。

原作では一人っ子だったけど七歳下に可愛い弟が産まれてハッピー。

ちなみに父親の出身はティラミ公爵領にある町。

まさか自分のお膝元でヒロインが生活しているとは思わないようで何回かニアミスしたけど全く気づかれなかった。

原作のゆるふわショートボブではなく伸ばして一纏めにしているからかもしれない。

茶髪に緑の目は珍しくないからね。

ヒロインにありがちなピンク髪じゃなくて良かった。



「うーん、どうしよっかな~」



今朝、両親から原作舞台の王都学園に通わないかと打診があった。

たまたま店の手伝いに入った時にやって来た客が流離いの魔術師だったらしく『この子には魔法の才能がある!磨かないのはもったいない!』と余計なことを言ったのが原因だ。

魔術師になれば軽視されやすい女性でも一目を置かれる。就職先も選べるようになるし給料もいい。運が良ければ貴族の妻にもなれる。ティラミ公爵領も富んでいるが王都は更に豊かで行くだけでもいい経験になる。やりたいことも見つかるかもしれない、という感じの事を言われた。

王都学園はその名の通り王都にある学園で、通うなら三年間寮暮らしになる。

正直行きたくない。

だってせっかく目立たないよう過ごしてきたのに学園に行けば始まらなくていい物語が強力な原作補正で始まってしまうかもしれない。

そんなの嫌だ。

私は王子と結婚したくない。

王族や貴族なんてまっぴらごめん。

ぱんぴーが未来の王妃とか無理ゲーにも程がある。

私は平民として生きていくんだ。

それに原作の主要キャラは多種多様のイケメンだけど皆大なり小なり何かしらのトラウマがある。

そうじゃなきゃ話が膨らまないのかもしれないが漫画の世界が現実の今、セラピストでもない私がそこをつついて良いものかわからない。

下手に突っ込んで悪化させたら悪いし責任も取れない。

私は原作のヒロインみたいに明朗快活ではなくどちらかと言えばインドア派で更に口下手。

むしろ噂に聞くエリーの方が原作ヒロインに近いんじゃないか?

そして恐らく王子に近い原作キャラはエリー派になっていると思われる。

意図的か偶然かエリーはほんのり逆ハー築いてるのだ。

現在エリーに婚約者がいない、エリーからアプローチしていない、二人っきりでは会っていない、公爵家に喧嘩を売るのは不味い等の理由で表立った非難はされていないが早めに旗色を鮮明にしておいた方がいいと思う。

ティラミ家が没落とか笑えないし。

今と同じくらい良い領主が来るならともかく直轄領になったら色々ややこしそうなんだ。

だからそこそこちやほやされたら身を固めて欲しい。

あ、横取りとかないよ?

私、昔から人のものを取るのも自分のものを取られるのも嫌なんだ。

ざっくばらんに言えば寝取り寝取られ物がイヤ。

エリーの逆ハーメンバーに行くとか多分無理。

それすら超えるイケメンっぷりだったら少し悩むかもしれないけど恐らく恋愛はないと思う。

逆にいくら原作のヒロインだからといってイケメンにコロッと惚れられてもそれはそれでおかしいし不気味だ。

だから学園には近づきたくない。

流石にエリーも学園で会ったら私に気づく可能性が高いと思うので変に警戒されて家業に影響が出るのも嫌だ。

第一、二人の王子双方好みじゃないんだよね。

目には見えないキラキラオーラが目に悪いというか、もう少し普通の人がいい。

それによくよく考えれば少し気になることがある。

エリーと気軽に呼んでるけど彼女はティラミ閣下の娘、エリーゼ・ティラミ公爵令嬢だ。

十四歳で嫁ぐ事もある世界で十四歳のエリーに婚約者がいないのは立場的に不自然。

王妃を狙うなら原作通り第一王子と婚約すればいいし、第二王子が好きなら婚約者候補止まりなのはおかしい。

他に好きな相手がいる?

その人に婚約者がいるからチャンスを狙ってる?

それともヒロインや転生者が現れるのを待っているんだろうか?

何らかの意図を感じる。

のこのこ近づいたら罠に嵌まる、もしくは藪蛇になりかねない。

私はこんなに無害なのに。

だいたい前世で流行ってた小説、電波系ヒロインが多すぎなんだよ。

あと腹黒系。

世界は自分の為にある、皆にちやほやされて当然、逆ハーは当たり前、……痛すぎるでしょ。

どうしてわざわざ波風立てに行くかね?

それでざまぁされてちゃ意味がない。

すっごい嵌まりまくって昼夜問わず読んでた私が言うなって感じだけどね。

この世界、娯楽小説がなくて悲しい。

ざまぁが読みたい、悪役令嬢かもーん。

でも自分がざまぁはされたくない。

私も大概性格に難ありだと思うけど少しはマシだと思いたい。

逆ハーとか七面倒くさいこと絶対しないし、そもそも恋愛相手は一人で十分だ。

自分も好きで相手も好いてくれる、相思相愛とか奇跡じゃない?

身分の差とかめんどくさい。

身の丈にあったものが一番よ。

まぁ恋愛音痴の私が言うことじゃないけどね。

というか私恋愛できるのかな?

そういう相手と出会えるんだろうか?

原作はご都合展開が多く勝手に王子が落ちてきたみたいな一面もあったけどヒロイン自体には抜きん出た才能はなかった。

強いて言うなら相手が欲しいときに欲しい言葉を掛けてあげられる子。

あ、あと神がかったエンカウント率も才能か。

やっぱり学園行きたくないな。

エリーも私に会いたくないだろうし、よしんば話す機会を得ても私の話を信じてくれる可能性は低いと思う。

だって言えば言うほど嘘っぽく聞こえるでしょ?

フリか何かと取られたら立場的にこちらが不利。

それにもし万が一エリーが良くも悪くも動くとしたら学園を卒業してからのような気がする。

何となくエリーの中の人は生真面目な完璧主義者っぽい匂いがするんだよね。

ヒロインや転生者がいるかもしれないという不安があるうちは良い子ちゃんを演じ続ける感じ。

当たって欲しくないけど勘はいい方なので大外しはしないと思う。

我が家の家計のためにも変わらないといいな。

ティラミス公爵領ほど住みやすい領地はないんだから。

とりあえず私は平民用の学校に通ってたまに店番したりして良いお相手を探すことにしよう。

まずは家族とお話か。

……ハードル高いなぁ。















そんなこんなで六年が経過。

二十歳になった私はフロランタン一家揃って隣国にいる。

現在妊娠六ヶ月。

そうです結婚したんです。

旦那さんは流離いの魔術師。

六年くらい前に店番していた私を見て魔法の才能があると両親に告げ口した人だ。

人生どうなるかわからないものだね。

年齢差八歳。

薄汚れて気づかなかったけど意外と若かった。

本人地味に老け顔を気にしてるから言わないけど私は好きよ。

ティラミ公爵領から隣国に引っ越しという名の亡命してきた理由は簡単。

クーデターが起きて王国内がぐちゃぐちゃになったから。

首謀者はエリーゼ・ティラミ。

元公爵令嬢で現女王陛下。

まさかまさかのどんでん返し。

いやぁ人は見かけによらないね。

よもやあの女王エンド目指してるとは思わなかった。

原作漫画が最終回で初めて好きなキャラ、嫌いなキャラのアンケートをとった。

何でこんな時期にと思ったけどそれぞれ一位になったキャラに焦点を当てて一本の読みきりを描くって事で私は好きなキャラに母親のクロエ、嫌いなキャラをシフォン男爵で送った。

結果は好きなキャラ一位がシフォン男爵、嫌いなキャラがエリーゼだった。

解せぬ。


漫画の内容は婚約者の第一王子がヒロインに構ってばかりでイラついて周囲に当たり散らしていたエリーゼが気晴らしに町へ出掛けたところ鷹狩りに行く途中のシフォン男爵と出会い、あれよあれよと恋に落ちた。

クロエ・シフォンが死んで以来領地経営のあれこれが一気にのし掛かって来たことに嫌気が差したシフォン男爵は病と偽り甥に全てを押し付けて趣味に邁進するべく鷹狩りの聖地と呼ばれるティラミ公爵領近くで静養していたのだ。

異性に優しくしてもらいたいエリーゼ、優しくする代わりに面倒事の一切を押し付けるシフォン男爵。

歪ながらも需要と供給が一致したある種似た者同士の二人は密会を重ねる。

王子とヒロインの仲が進むほどにエリーゼはシフォン男爵に依存し、シフォン男爵はエリーゼのもたらす富に依存した。

やがて密会がバレて引き離される二人。

「どうして?どうして?王子はあんな女にうつつを抜かしているじゃない、私にとやかく言うくらいなら王子を諌めてよ!」

「男爵風情が、だって?公爵家に産まれただけの男のくせに、女心も分からない青二才のくせに、よくも私を虚仮にしたな、絶対に思い知らせてやる!」

歪んだ縁は執着となり継ぎ接ぎだらけの狂愛となる。

「「こんな国、滅びてしまえばいい!」」

晴れ渡る空のもと愛を誓い合う王子とヒロイン。

軟禁されたエリーゼが凪いだ表情で刃物を研ぐ。

(私達を虐げる者達に復讐を。)

穏やかな表情でヒロインに声をかけるシフォン男爵。

(私の為に死んでくれるね?)

さて、この物語はこれにておしまい。

このままヒロインが王妃になるか、クーデターを起こしたエリーゼが女王になるか、それは全て闇の中。


違う。

私はこんなのが読みたいわけじゃない。

何で最終回であれほど幸せそうな王子とヒロインを描いておいて不穏な空気を滲ませるんだ?

美麗な巻頭カラー。

《アンケート結果大発表!!好きなキャラ一位 シフォン男爵、嫌いなキャラ一位 エリーゼ》と書かれたボードを微笑みながら二人で持つエリーゼとシフォン男爵。

最初見たときは超力作だな~くらいにしか思わなかったのに読み終わったあとで見直すと色んな伏線に気づく。

例えば装飾されたボードがまるでウェルカムボードのようだとか、ボードで隠れている衣装がよく見れば婚礼衣装っぽいとか、濃い赤の花びらが舞う背景が一部血痕のようにも見えるとか、ラストの二人の表情とリンクしているとか、気づけば気づくほどモヤモヤした。

きっとエリーもあの読みきりを読んだんだろう。

でないとクーデターなんて思い付かない。

もしかしたらエリーはシフォン男爵が好きだった?

原作みたいに結婚したいと思った?

二人の年の差は二十歳で確かティラミ閣下よりも一つ上のはずだが見た目は正直私の旦那さんよりやや若い。

いくら家族仲が良好で娘のおねだりに弱かったとしても流石にバツ三の貧乏男爵に公爵家の一人娘を嫁には出せないだろう。

王子達と仲良くしていたのはティラミ閣下を説得してもらう為だった?

それとも味方を増やしたかった?

もしくは抜け道を探していた?

今エリーの隣にいるのはアッシュブロンドの美しい男だという。

アッシュブロンドといえばシフォン男爵とエリーの義兄。

瞳が青灰色ならシフォン男爵、灰色なら義兄。

それとも私の知らない誰か?



「リリィ、そろそろ帰ろう。義母さんがご飯を用意してくれてるって」


「はーい、今行く」



もしかしたら。

エリーゼは原作から抜け出したかったのかもしれない。

ヒロインや転生者に怯える日々を変えたかったのかもしれない。

でも全ては闇の中。

真相は彼女のみが知るのだろう。

エリーゼ、そこから見る景色はどう?

少しは楽になった?

あなたが今、幸せならいい。





旦那さんはフロランタン家に婿入り。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主役(ヒロイン)が役割放棄したため内乱、というのは斬新w [気になる点] 母親クロエの最初の旦那、リリィの実の父親が謎ですね 高位貴族の跡継ぎだったがクロエと駆け落ちした後若くして逝去…
[一言] 初めまして。 うーん、個人的には無関係そうなリリィの旦那様が怪しいのですが。 まぁ、リリィ本人は今幸せだしどうでもいい話ですね。 面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ