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出会い
僕は、大学進学とともに実家を出た。
県外の私立大学に入学したが、知り合いはおろか人と話すのが苦手でろくに友達もできず、講義も昼休みも休日もほとんど一人で過ごしていた。
唯一の友達は、もっぱら文庫本。サークルも入らずバイトもせず、空いた時間はだいたい読書に充てていた。
2年の夏休み明けになると、それぞれ研究室への配属が決まった。4年が8人、3年が10人、僕ら2年は6人と少なかったが、僕以外の5人は全員顔見知りのようで、すぐに打ち解けて仲良くなっていた。しょっちゅう遊びやご飯に出かけているみたいで、僕も何度かお誘いを受けてついていったこともあるが、茶髪にピアス、派手な装いの彼らと一緒に行動する気にはなれず、何かと理由をつけて断るようになった。それでもいつも声をかけてくれるので、チャラチャラしていてもいい人たちなんだろうなとは思う。人は見かけによらないとよく言うが、僕自身も小柄で中性的な顔立ちでモテるでしょ~とよく言われるのに友達がいないので、人のことは言えまい。
こんな僕にも、この頃彼女ができた。読書のために大学図書館に入り浸る僕は、図書委員のバイトをしている学生と話す機会が多く、このバイト学生の小高という友達ができ、小高の紹介で彩香という彼女ができた。2人とも2年で読書家なので気が合い、研究室の人たちよりも居心地がよかった。
彩香と付き合いだしてからは一緒に行動することが多くなった。最初はおとなしく賢い印象だった彼女だが、次第にわがままを言うようになり、僕の生活を侵害するようになった。もともと一人でいるのが好きな僕は、彼女に時間を奪われるのが腑に落ちなかったが、手料理をふるまってくれたり記念日にプレゼントをくれたりする謙虚な姿勢に何も言えず、一緒にいなければという使命感のみで付き合っていた。