5話 「鬼もたまには泣きます」
門星学園 10階階段前
俺「ハァハァ…体が鈍ったかな?」
なんとか頑張ったが10階で疲れてしまった。
どうやら一段一段が人間の平均よりも高くなっているらしい。
俺「この階で休むところは…」
生徒手帳を見る。
立体映像の中で10階の間取りが出てくる。
俺「図書館か…読めるかな。」
ちなみに、この生徒手帳は魔法の板のようなもので立体映像が浮かび上がる型である。
きちんと手帳の役割にも使え、校則や学校の間取りも見ることが出来る。
ちなみに、内線携帯にも使え、生徒同士で互いに同意をすれば通話が可能、個人情報も少々知ることができる。
ついでに、俺はラミアとヴァンプとタウロとオオカミとしか登録をしていない。
ちなみに、これを使えば、城下町での買い物もサービスしてくれるらしい。
図書館の入り口は各数カ所にあるが、全て同じ図書館に繋がっている。
わかりにくい説明かもしれないが、つまり図書館の入り口が1階にも10階にも南校舎にもあるが、どの入り口を通っても同じ図書館に着くということだ。
しかし、この入り口が1番高い階らしいので最上階へのショートカットはできないようだ。
……
…
門星学園 図書館
俺「うわっ…デカッ…」
中は空間を歪めなければいけないくらい大きかった。
この校舎とほぼ大きさは変わらないだろう。
外から見てもこんな大きさのものは見つからなかったから実際に空間を歪めているとか次元の狭間とかにあるんだろうか。
この世界だからあり得なくもない。
とりあえず壁と同一化をしている本棚を見てみる。
やはり、あの文字で書かれている
たしか…ル…ルヨメ?だっけ
まぁいいや
本をじっくり見ていると何やら見たことのある本がある。
俺「これって…『エルマーの冒険』か?」
まさか元の世界の児童文学まであるとは、侮れないな。
と思ったら、見たことのある本が乱立している。
川端康成、村上春樹、野村美月、東野圭吾、井上堅二、湊かなえ、西尾維新、米澤穂信、宮部みゆき
ラノベと文学が入り乱れているというのに、普通に見えてしまうな。
並べ方は適当のようだ。
もちろん元の世界の本以外もある。
バイブルとかは危なそうだ。
魔法書もあるが使えないだろう。
なかなか面白そうな本が見つからない中ふと上を見ると、小さな文庫本があった。
『城下町パンフレット』
俺「これだな。」
文庫本なのにパンフレットというのはよくわからないが使えるだろう。
しかし高い位置にあり梯子を使っても届かない。
すると、その本がとなりから出てきた手によって抜かれるのが見えた。
??「これ…だよね?」ポポポ…
隣を見ると背の高い白い服を着た女性がいた。美人である。
なんかどこからかポポポと聞こえるけど。
人のようだが、それにしては肌が白く背が高い。
俺「もしかして、今年初めての種族ですよね。」
??「うんそうだよ、…君は人間だね。いいショタだよ。」ポポポ…
間違いない。
ハッシャクだ。
ハッシャク「あのさ…もしよかったら、これ譲ってくれないかな?」ポポポ…
俺「あ、うん。いいですよ。」
ハッシャク「悪いね。私のクラスは大学部のαクラスだから。じゃあね。」ポポポ…
こうして女子大生八尺様と顔を知り合ったけども。
ここまで、安全なものなんだな。
俺「いつかテケテケやペタペタさんとかも来るのかな…」
しばらくして、今度はガイドブックがあった。
この辺りのことのようだ。
さっきの文庫本よりは内容薄いかもしれないが仕方ないだろう。
しかし、またしても届かない。
最終的に本棚にへばりつく形になるがこれでも無理だ。
最後に梯子に戻ろうとしたとき
がたっ
俺「あ。」
梯子に足をかけてバランスを崩してしまって後ろから落ちる。
やばい、死にはしなくても頭打って後遺症とか残られたら困る。
そう頭の中を張り巡らしていた、その時だった。
ガシッと力強く、しかし優しく受け止められた…というより抱かれた。
なにやら身長差的に顔面に柔らかさが来ている。
命の恩人の感謝を述べようと立ち上がると、そこにいたのは…
俺「あ、たしか同じクラスの…」
鬼「…あ。」
鬼だった。
背は想像よりも高くはない。
せいぜい2mちょいだろう。
充分高く聞こえるかもしれないが、ラミアの場合4mあると考えれば妥当だろう。
俺「あ、ありがとう。」
鬼「ううん、いいよ。私ここの図書委員してるんだけど、探し物?」
やはり鬼らしくないな。
俺「探し物っていうよりも、そこの雑誌欲しいんだけど。」
鬼「ん?…ちょっと待ってて。」
鬼というより角の生えた女性は、俺と同じように梯子を登って本を取ってくれた。
鬼「はい。」
俺「ありがとう。えっと…なんて呼べばいいかな?」
鬼「え?」
俺「鬼って呼びにくいんだよね。僕のところでは…その…」
さすがに本人の前で悪口に使われていたとは言えない。
鬼「なんでもいいんだけどな。」
俺「気にしないものなの?」
鬼「うん」
俺「じゃ、じゃあ鬼さんで」
そういうと鬼さんは微笑んだ。
鬼「それにしてもよかった。」
俺「え?」
鬼「同じクラスに来た人間が日本人で。」
まあ、それもそうか。
住む世界が違っても、日本なのだろう。
鬼「そういえば知ってる?ここお風呂ある以外に敷布団や畳のサービスもあるんだって。」
俺「ほんと!よかった、布団じゃないと眠れないんだよ。」
鬼「やっぱ日本だよね。」
俺「日本だよなぁ」
日本か…
こう日本妖怪がいると、本当に日本って不思議だと思う。
地べたに寝るし、草の床だし。
でもそれが好きになってしまう。
本当不思議国家だ。
俺「じゃあ、借りてくるよ。」
鬼「うん、じゃ、またね。」
鬼っぽい子と別れて受付に行く。
すると、そこにはさっきの八尺様が。
俺「どうしたんですか」
ハッシャク「あ、うん、そのね。受付に人がいないの。」ポポポ…
俺「当たり前です。学園全て探しても人は俺しかいませんよ。」
ハッシャク「そうじゃなくて!受付に誰もいないの!」ポポポ…
受付を覗くと確かに誰もいない。
…一つ残された宝箱を除けば。
俺「多分いますよ。」
ハッシャク「え?」ポポポ…
俺は身を乗り出して箱にノックをしてみる。
俺「すいませーん。借りたいんですけど。」
俺は図書館だし司書さんはブックマスターかとかと思っていたが違ったようだ。
ミミック「…え ?」
ハッシャク「…箱が喋ったよ、俺くん。」ポポポ…
何故かさっき知ったばかりの人にも俺くんと呼ばれる。
俺「気にしないでください。」
ハッシャク「…そうだね、この学園だし。気にしたら負けだよね。」ポポポ…
本を元箱に渡す。
ミミック「…はい、オッケーです。貸し出し期間は二週間でーす。」
ハッシャク「はーい。じゃまたね。」ポポポ…
俺「じゃあの、これお願いします。」
ミミック「はーい。それにしても、よく私が受付だとわかったね。君新入生でしょ?」
中性ボイスで会話が行われる。
どっから声だしてるんだろう。
俺「勘ですよ。」
ミミック「ま、いいや。じゃ頑張ってね。」
俺「はい、また寝ないでくださいよ。」
ミミック「わかってるわかってる。」
わかってない人の返事だな。
ミミック:
主にゲームに出てくる怪物。
宝箱そっくりの姿で口に牙が生えている。
なお、神話や伝説は見つかっていない。