表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/60

4話 「ケンタウロスはプライドが高いです」

門星学園4


ラミア「…え?…えええええ!?」


ラミアは赤面している。

本人の前で人間の魅力を散々語ってたのだから無理はないが。

まぁ人間に会えた興奮のせいもあるだろうが。


ケットシー「元気がいいですにゃ、いいことですにゃ。人間としては初めての生徒ですから、頑張ってくださいにゃ。」


俺「…はぁ。」


ケットシー「んじゃ最後にゃ。」


しかし、誰も立たない。

僕は悩みすぎて突っ伏しているが、他の生徒は辺りを探しているだろう。


ケットシー「一番右後ろを見るにゃ。」


先生の一言でそこに注目が固まる。

そこにいたのは…


??「……♪」ウニュウニュ


言葉を発しない謎の半凝体だった。


ケットシー「彼女は見ての通りスライムにゃ。これでも首席入学者なのにゃ。」


いや首席も何も入試受けてないのに。


ケットシー「ほら自分で挨拶しないのかにゃ?」


いや、しようにも制服みたいな袋で包んだ30センチ程の透明な餅だ。

まずは話せないだろう。

そう思っていた。


俺「……え?」


どんどん大きくなり形が歪になって行く。

そして最終には


スライム「……カラキマシタ。スライムデス。ヨロシキピロシキ。」


明らかに質量の違う半透明の美人女生徒の姿が……。

ちなみに、制服は体内に取り込まれている。つまりは裸だ。


俺「ス、スライムが洒落言った…」


ヴァンプ「…そこか」


こうして誰もスライムの出身地を気にすることなくホームルーム及び今日の学校が終了した。

……


そして、蛇系女子の獲物となった。


ラミア「うへへへへへへへ」


俺「た、頼む離れてくれ。」


さっきまで赤面していたのが嘘かのように額に汗をかき、息を荒くして…


気持ち悪い


ラミア「逃がさないよぉ〜」


ちなみに、体は蛇部分で縛られて動けない。

やはりラミア、力が強い。

いや、人間が弱いのだろうが。


ケンタウロス「やめろ!俺くんが嫌がっているだろ!」


ラミア「出た、風紀委員。」


ケンタウロス「まだだ。とにかく相手は人間なんだから優しくしろ!」


ラミア「ちぇ。」


なんとかケンタウロスさんのおかげにより解放された。


ケンタウロス「大丈夫か?」


俺「はぁはぁ…学級委員…」


ケンタウロス「うむ、まだだ。」


俺「…俺、周りから俺くんって呼ばれてるんすか。」


ケンタウロス「…そこか。」


ちなみに、この俺くんはかなり速いペースで広まっていった。


………


門星学園 自室


俺「うっわすげぇ。本当に個室かよ」


とりあえず自室を見たいと思ったので部屋に来てみたがここまでとは…


パンフレットに書いてあったとおり個室なのだろうが、普通に広いし良い。

東京の郊外あるような家賃10万円のアパートよりもよほど良いだろう。


冷暖房もテレビもベッドもある。

正直ベッドよりも布団派なのだがそこはいいだろう。

あと風呂は別に大浴場があるらしい、日本妖怪とかが集まったりしてるのだろうか?どちらにしろ日本人の俺は大歓喜だ。


ベッドに目をやるとカバンが置いてある。俺のものだ。

多分入学式前に預けた荷物だろう。


まあほとんど妹がしてくれたから、中身はあまり理解していない。


さて中は何があるだろうか。

ジャージと携帯充電器と文房具、衣服に歯ブラシにトランプ?

あいつ修学旅行かなんかと勘違いしてるんじゃないか?


と思ったら、缶詰に即席麺、コンパス、寝袋、発煙筒、充電式懐中電灯、多機能携帯ツール…無人島かよ。

しかも、缶詰あるのに缶切りがないとは。本当に遊びに行くとでも思ってるんじゃないだろうな。


そう思っていたが、しっかりと気にしてくれてるようだ。

キャリーバッグの奥にあったのは愛用のノートパソコンと3冊の本。


・世界神話妖怪事典

・明日から使える50の護身術

・家族


護身術は多分人型相手じゃないと使えないだろうが、せっかくの厚意だし一応読んでおこう。


家族とはアルバムの名前だ。

幼い頃から親は外国に行っており、俺は妹と一緒にアパートの大家をしている親戚の吉井さん元に預けられた。


…考えてみればまだ妹、小学生なんだよな。

しっかりし過ぎていてたまに忘れてしまう。

俺は妹を…家族を一人置いていくのか?


否、それは避けるべきだ。


しかし、入学してしまった。

一体どうすれば…


ラミア「人間さーん!!」


俺「うわっ!?ラ、ラミアさん!?」


ラミア「ごめんね、荷物の整理してた?」


俺「いや、今終わったとこだけど。」


ラミア「じゃあさ、学食行こう!」


俺「ま、待って!」


なんとかハンドバッグ一つ掴んだが、そういや無料なんだったな。


………

……


門星学園 カフェテリア


俺「わ、デカ。」


ラミア「そうだね、なんてったって全校生徒がいるんだもん。」


俺「そう考えれば妥当だな。」


ラミア「人間さんは何にするの?」


俺「そうだな…」


Aセット「マンドラゴラのバーサーカーソース炒め」

Bセット「人面魚の塩焼き」

Cセット「新入生限定!クトゥルル定食」


ラミア「私はCセットにするね!」


俺「そか、僕はいらないから帰るね。」


ラミア「俺くんが僕って言ったらダメだよ。」


俺「…じゃあ食が合わないから母国食でも食べるよ。」


カバン持ってきてよかった。

確かあれがあったはずだ。


……


ラミア「人間さん。それ確か。」


まさか異世界に来てまでカップ麺を食うとはなぁ。

まぁ食べるとすればAセットなのかな。

マンドラゴラは万病を治すとか聞いたことがあるけど…バーサーカーってなんだよ。


ラミア「…それインスタントだっけ?」


俺「おお、よく知ってるなぁ。」


ラミア「うん、でもさ…これだけ言っておくけど。カップ麺がある世界なんて数える程だよ。」


俺「……そうなの?」


そうか、だからさっきからチラチラ視線を感じるのか。


ラミア「ねー。一口ちょーだい!」


俺「いいけど…熱いぞ?」


ラミア「大丈夫ー。」


せっかくなので異文化交流と洒落込むことにした。


俺「お箸は使えるか?」


ラミア「大丈夫。人間さんの見て使い方憶えたよ。」


ラミアってこんなに学習能力高いんだ。知らなかったな。


ラミア「じゃいたらきまぁす。あちっ!」


舌長っ!…まぁ蛇だからか。

すするというよりと頬張るように食べる。


ラミア「んーっまい!うちの世界のとは全然違うね。」


俺「え?ラミアさんの世界にはあるの?」


ラミア「うん、人間さんは皮靴を煮て食べる話知ってる?」


俺「あぁうん、喜劇王の。」


ラミア「その要領で乾麺に水分入れるだけなんだけどね。」


俺「たぶん、それこれもだよ。」


ラミア「えっ!?」


俺「えっ!?」


乾麺のノンフライ技法は全世界共通か。


あと、折角なので都市伝説を調べてみる。


俺「それってどこで売ってた?」


ラミア「え?世界違うのに店名わかる?」


俺「予想、ロー○ン。」


ラミア「…正解。」


さすがロー○ン。異世界にも普通に店舗抱えている。


ラミア「私も一口あげるよー。」


…大丈夫だとは思う。

ただお腹の中にダゴン様とかがイアイアされたら…


ラミア「はい、口開けてー。あーん。」


俺「あ、あーん。」


なにやらクニクニしたものが突っ込まれる。

タコのようだが味は染みており、かなり出汁も日本人に合わせて作られてる。

見た目ほど臭みもなくマズイというよりも…


俺「…美味いな。」


ラミア「でしょーっ!」


あんたが作ったわけではないだろ。

まぁここでは先入観を捨てるべきかもしれないな。


ヴァンプ「お二人さんもお盛んだな。一緒にいいか?」


お盛ん…?


俺「何のことだ。」


ラミア「いいよー。」


ヴァンプ「おお、母国飯か。」


俺「無視かよ…食わず嫌いなんだよ。」


ラミア「良くないよ。」


ヴァンプ「そうだな。」


そういうとヴァンプは赤い液体を机に置いた。


俺「…なぁそれって。」


ヴァンプ「あぁ血だ。あくまでもヴァンパイアだからな。」


ラミア「…なんの?」


ヴァンプ「…わからん、多分牛だろ。乳臭い。」


血にも味があるのか。

ってか成分的に乳も血液のようなもんだろ。


俺「まさか、それだけ!?」


ヴァンプ「あー。いや菓子で腹膨らますからいいんだ。」


ラミア「ビタミン不足になるよ。」


ヴァンプ「ビタミン剤やトマト取ってるし問題ないだろ。」


ラミア「…そか。」


まあ、ヴァンパイアだ。そう簡単に衰弱はしないだろう。


ヴァンプ「トイレ行く。…っとと」


ラミア「え?」


俺「…」


ヴァンプ「どうした?」


俺「…もしかして…立ちくらみ?」


ヴァンプ「そうだ。鉄分が足りないようでな。」


血を原液で飲んでいて鉄分不足ってなんだよこいつ。


俺「…そういや、オオカミさんとは仲良かったよな。」


ヴァンプ「あぁまあ、同郷の友って感じだからな。」


俺「今どこにいるんだ?」


ヴァンプ「山で狩りだとよ。自給自足じゃないと満足できないらしい。」


ラミア「さすがオオカミだね。」


ケンタウロス「お前らも食事か。」


上から突然凛々しい声が聞こえてきた。

上を見上げると、山の間からケンタウロスさんの顔が覗いていた。


俺の視線に気がついたのか


ケンタウロス「なっ何を見ている!?」


胸を隠して叫ぶケンタウロスさん。


俺「い、いや。…大きいなと思って。」


ラミア「そうだね、3mは超えてるよね、ケンタウロスさん。」


ヴァンプ「少なくともD…いやEか?」


ケンタウロス「身長と胸、どっちのことを言ってるんだ!?」



ケンタウロスさんは文句を言いながら机に昼食を叩きつけた。


って…?


ケンタウロス「そもそも、胸なんかが大きくても見てる方は良くても困るのは自分だ。」もぐもぐ


ケンタウロス「背が高いと言っても私もケンタウロスである以前に女性だ。気にしているのだ。」もぐもぐ


ケンタウロス「どちらにしろ、この学園の生徒ならばおかしなことは言わないで欲しい。」もぐもぐ


ラミア「…あのケンタウロスさん。」


俺「まってラミアさん。」


ラミア「え?」


俺「知ってるか否かは知らないけど、馬は平均一日に12〜15kgほど食べるんだよ。ちなみに人間は1.3〜1.7kg、ヘビは一週間に一回ネズミ食べるだけでも生きられる。」


ケンタウロス「っ!?」


ヴァンプ「へえーよく知ってるなぁ。」


ラミア「私、腹持ちいいんだ。」


俺「まぁ気にすることはないけどね、ケンタウロスさん。」


ケンタウロス「な、なんのことだ。」


ケンタウロスさんは食べた皿を何処かに隠したようだ。

気にすることないのに。


ケンタウロス「そ、それにしても『ケンタウロスさん』とは長ったらしい上によそよそしくないか?」


俺「まぁ言いにくいね。」


ラミア「じゃあさ、あだ名考えよ!」


うまいこと話をそらしたようだ。

もしラミアさんが居なければそんなことはなかっただろうが。


俺「俺はなぜか俺くんなのだが。」


ヴァンプ「だって俺くんだろ。」


ケンタウロス「君は俺くんで充分だ。」


ラミア「そういや俺くんって呼んでなかったなぁ。」


俺「…はい、俺くんでいいです。」


ラミア「私はそのままラミア。ヴァンプはヴァンプでいいとして。」


ヴァンプ「呼び捨てかよ。」


俺「ケンタウロスさんですね。」


ケンタウロス「良いのを頼む。」


ヴァンプ「健太くん。」


ケンタウロス「誰だよ!チキン焼いてそうな名前だ!」


ラミア「けったろ。」


ケンタウロス「せめて女性にしてくれ!」


俺「健太郎。」


ケンタウロス「混ぜるなぁっ!」


少し面白かった。


俺「んーじゃあ、ウロスさんとかタウロさんとか、タウロスさんとか。」


ラミア「おお、センスあるね。」


ヴァンプ「本人、選べよ。」


ケンタウロス「ふむ、そうだな。タウロか…タウロちゃん…ウロスちゃん」


ラミア「ケンタウロスさん乙女ですね。」


ケンタウロス「なっ!?…タウロだ。気に入った。」


俺「そか、じゃあよろしくタウロちゃん。」


ケンタウロス「あ、あぁよろしく。」


あれ?からかったはずなのに。


ラミア「タウロさん、よろしくお願いします。」


ヴァンプ「おう、タウロさん。」.


ケンタウロス「……」


俺「どうかしました?」


ケンタウロス「なぜ私に対してはそんな敬語を使うのだ?」


俺「そりゃケンタウロスだから。」


ケンタウロス「え?」


ラミア「だって軍人ぽい性格だし、タウロさん。」


ヴァンプ「お前もその方がいいんしゃないか?」


ケンタウロス「そ、それは偏見だ!私ももっと友愛を深めて行きたいのだ。」


俺「…わかったよ、タウロさん。」


ケンタウロス「こらっ!さんは抜け!」


俺「いやいや、俺、女子には全員さん付けなので。」


ラミア「本当だ!なんで呼び捨てじゃないの?」


俺「いや呼び名が種族名で呼び捨てとか無いだろ。」


ラミア「俺くんのことも俺ってよぶから!」


俺「ややこしいよ!」


ヴァンプ「べつにさん付くらいは許してやれよ。」


ケンタウロス「むう…まあ良いだろう。」


そうだ、これだけいるんだ。

一人くらいヒントくれるだろう。


俺「あのさ、突然だけど学園長室ってどこ?」


ヴァンプ「なんだ、いきなり悪事でも働いたのか。」


俺「見た目で判断するのもなんだが、お前には言われたくない。」


ケンタウロス「学園長室ならこの棟の最上階だ。しかし、エレベーターのようなものはない。ほとんどの場合、魔法や魔法陣を使って移動するのだろう。」


俺「つまり?」


ラミア「階段を上るしかないよね。」


俺「他に方法は?」


ヴァンプ「壁を登る。」


俺「俺は人間だ、しかも普通の。」


ヴァンプ「わかってる。タウロに手伝ってもらうのはどうだ?」


ケンタウロス「私か?」


俺「乗せてってもらうということ?」


ケンタウロス「なっ…!?だ、ダメだダメだ!私は人どころか荷物さえ乗せたことがない!それに鞍がないと腰を痛めるぞ!」


なぜか顔を真っ赤にしてパニックになっている。


俺「そっか…まぁいいや。食べたら行ってくるよ。」


ラミア「あのさ、目的は何なの?」


俺「あー、ワガママを聞いてもらうためだな。」

スライム:

ファンタジー作品における主にゼリー状、粘液状の怪物。元々はラヴクラフトの「狂気の山脈にて」から他の作品にも出現するようになる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ