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45話 「グールはゾンビではありません」

オオカミ「よお俺くん、時間だ」


俺「ん、わかった。じゃあオオカミ、妹、後は任せた」


オオカミ「おう、任された」


妹「じゃあねー、お兄ちゃん」


目の前で連れてきた本人がいなくなり、戸惑う3人。


オオカミ「……? 説明してなかったのか?」


妹「……あー、忘れてたね」


オオカミはそれを聞き、やれやれという仕草を見せた。


妹「えっと、実はお兄ちゃん学園祭の準備が盆と正月だから、私とこのオオカミさんが案内することになってたの」


オオカミ「よろしく頼む」


訳を理解し、エリとヤマはぽんと手を叩いて納得した。


ヤマ「ミヅ……俺くんは学園祭何するんすか?」


オオカミ「あー……悪いな、言えない決まりなんだ」


ヤマ「分かったっす! メガネ同士仲良くしようぜ!」


オオカミ「……俺くんの妹よ。大半は任せていいか?」


オオカミの泣き言に妹は苦笑いを浮かべた。


******


移動中、エリはオオカミにこっそりと話しかけた。


エリ「……あの貴方も人間ではないんですよね?」


オオカミ「ん? ああ、俺は狼男だぞ?」


フカザワ「フェエッ!?」


言葉にならない悲鳴を上げたフカザワにオオカミもビクッと驚いた。


エリ「おー、本当ですね。耳と尻尾が生えてます」


オオカミ「油断するとこうなるんだ……今戻す」


ヒョコっと生えた耳と尻尾を戻すと、エリは「あぁ〜」と惜しむ声を上げた。


オオカミ「……そこの挙動不審な女はなんなんだ?」


フカザワに聞こえない大きさで聞いたが、答えたのはヤマだった。


ヤマ「あー。実は彼女、家が悪魔払いらしくてモンスターとかが怖いらしいです」


オオカミ「……なんでここに来たんだ?」


ヤマ「……さぁ?」


そんな会話をされてるとは思っていないフカザワは気を紛らすため小声で賛美歌をループして歌っていた。


******


城下町 ホテル


オオカミ「着いたぞ。とりあえず人型種族はここで一晩過ごしてもらうことになる。ちなみに宿泊費は学園負担だから気にしなくても構わない」


ヤマ「ひょえー、デケー」


エリ「学園とどっちが大きいんですか?」


オオカミ「それは……余裕で学園だろうな」


門星学園はこの世界で一番大きい場所である。


フカザワ「あ、あの……私、大丈夫ですかぁ?」


オオカミ「ん? ああ、心配ないと思うぞ? ここは人外とはいえ人型しか異形みたいなのはいないからな。それに今日に限っては従業員は門星学園の生徒ばかりだから慣れやすいと思うぞ?」


ヤマ「だってさ、よかったな」


フカザワ「う、うるさいなぁ……」


二人の光景をみたエリはなんだかんだ言いながらも仲がいいんだと年下ながらも微笑ましく思った。


******


ホテル フロント


ヤマ「すいませーん」


?「はーい……っ!?」


受付の一見普通の人間に見える男性はヤマの姿を見るや否や顔を俯けた。


ヤマ「……? どうしたんすか?」


?「い、いえ何でもないです。失礼しました、あ、あはは」


ヤマ「?……。あの、部屋が分からないので案内お願いできますか?」


男性はヤマの後ろを見ると口を押さえながら人数を確認する。


?「え、えっと、生徒1人、外来客が3名ですね! 畏まりました、すぐご案内します」


そういうと男性はフロントの奥に行った。


ヤマは二人と不思議そうに顔を見合わせると、代わりに別の女性が現れた。


エルフ「やれやれ先輩、ここ合わないのになんで選んだのかな……」


妹「あ、エルフさん」


エルフ「おー! これは運命かな!? ……あ、いや。はい、3名ですね。ご案内します」


エルフは顔をとろんとさせる前に3人に気がつくと、営業の顔に切り替えた。


…………

……


?「フィー危ない危ない……」


ダンピール「様子見にきたが……お前、ここ担当で大丈夫なのか?」


?「せ、先生……だ、大丈夫です! 自制効いてますし!」


ダンピール「でもお前、グールだろ。人喰鬼だぞ? 問題ないのか」


ダンピールの言葉にグールは息を詰まらせたが、顔を横に振り気を切り替えた。


グール「が、学園でも俺くんに慣れてますし。大丈夫ですよ! それに……」


ダンピール「それに?」


グール「この作品は日常系なんですから、残虐な描写は絶対あり得ません!」


ダンピール「……フラグにしか聞こえないぞ? それ。そもそもお前俺くんに関わりあったことあったか?」


再びグールは、ううううと言葉に詰まらせ、結局受付に立つことを諦めた。


******


ホテル 部屋


ヤマ「おーすげぇ! 広いな! フカザワと同室か!」


エルフ「あ、いえ、個室です」


ヤマ「……」


ヤマの反応を見て、エルフはフカザワに同室にしようかと尋ねたが即答で拒否した。


エルフ「じゃ、日本ちゃんは学園帰るんだよね。頑張ってね」


妹「うん、ありがとう。……ということだからエリちゃんゴメンね」


エリ「ううん、いいよ。頑張ってね」


妹はエリの声援を聞くと、笑顔で手を振ってからホテルを出て行った。


ヤマ「それにしても、フカザワ。エルフさんには拒絶反応なかったな」


フカザワ「うん、エルフは悪魔やモンスターじゃなくて亜人だもん。そういうヤマだってエルフさんに反応薄かったじゃん」


ヤマ「それは……抑えられなかったときの俺が怖かったから」


フカザワ「あ、テンションは上がってたんだ」


ヤマはフカザワの言葉に「ファンタジーのスペシャリストだろ」と力説したが相手にされなかったため、諦めた。


ヤマ「しかし、あれだな。この街自体は馬とか走ってるしドイツとかの中世っぽいのに、このホテルに関しては日本のレジャーホテルみたいだよな」


フカザワ「うん、それ思った。エレベーターまであるし」


エリ「でもここに来るまでにも、自動販売機とか電子掲示板もありましたよ?」


ヤマ「えっ!? マジか」


エリの言葉にヤマは驚くと、一瞬間を開けて吹き出した。


ヤマ「ははっ今更だな。だってこの部屋だってテレビあるし」


フカザワ「そう言えばそうだね。元々慣れてたからあまり気にしてなかったよ」


エリ「何やってるんですかね……ヤマさん、つけていいですか?」


エリはヤマに許可を取るとリモコンのボタンを押した。

すると、ちょうど昼のエンタメニュース番組が流れていた。


キャスター『……では門星学園の学園祭です。門星学園の学園祭といえば世界的にもっとも大いなるイベントですね』


MC『ですねー、では現場の様子を確認しましょう。現場のタカハシさーん?』


アナウンサー『はい、タカハシです。前日ということもあり、学園の前は人でいっぱいです。生徒たちよ楽しそうな表情の中に力を感じますね。では早速インタビューして行きましょう! あのすいません』


タウロ『な、な、なんだ? 私かっ?』


選ばれたタウロさんはかなり動揺で顔を堅くしていた。

ちなみに、タウロさんを見た三人の反応はこんな感じだった。


ヤマ「あっ、ケンタウロスだ」


フカザワ「う、馬っ?」


エリ「おー、カッコいいです」


アナウンサー『はい。ではあの、あなたはどちらを担当されるのですか?』


タウロ『あ、ああ。私はクラス展示を行う。少し凝った喫茶店にするつもりだ』


アナウンサー『なるほどー! それは面白そうですね。 ところで、今回の学園祭、見どころはどこでしょうか?』


タウロ『み、見どころっ!? あー……い、一概には言えないが……あっ! そ、そう言えばスクールアイドルがデビューライブを行うとのことだったな』


MC『ほー、スクールアイドルですか。 kemkemoのネーネさんも現役のアイドルですが興味がありますか?』


ネーネ『ですね! というか私、既に門星のアイドル知ってます。ETOですよね、私、公式サイトで見たのですけどみんな可愛かったです!』


******


番組が終わりヤマはテレビを消すと、背伸びして話した。


ヤマ「へー、アイドルとかもいるんだ」


エリ「可愛いですね! すごい耳かわいいです!」


フカザワ「う……うん、これは可愛いかも……」


ヤマ「ん? フカザワも少し慣れたのか?」


ヤマの言葉にフカザワは顔を伏せて呟いた。


フカザワ「……でも、まだ少しだけど」


ヤマ「ふぅん……っていうか、フカザワとエリちゃんはいつまで俺の部屋にいるつもりなんだ?」


フカザワはヤマに問われると、息を詰まらせながらも聞き返した。


フカザワ「だ、だめ?」


エリ「私は一人で行くのは少し心細いですから」


ヤマ「……どうするんだ? どっちにしろお前怖がってるなら部屋一人になれないだろ」


フカザワ「で、でもぉ……」


フカザワはエリを見つめるが、本人は首を傾げるだけだった。


結局、三人はホテルに線引きだけして同室にすることになった。

グール:

爪が鋭く牙を備えており、人間の体を食べると言われているアンデッドの一種。ゾンビというよりかは精霊に近いものである。稀に人間と結婚するものもいる。

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