44話「メデューサは鏡を見られません」
現世界 公園
俺「あ。悪い、遅くなったか?」
フカザワ「う、ううん。そんなに待っーー」
ヤマ「遅えよ!! 早く! 早く行かせろよ!」
す、すごい温度差……。
俺がこうして現世界に戻ったのにはもちろん理由がある。
門星学園の学園祭に招待するためだ。
……とはいえ、学園祭自体は明日に開催される。
いきなり混乱させるようなことを防ぐために前日に観光して、慣れさせるというのが学園祭のルールだからということだ。
俺「そんな焦らなくても……門星学園の時間はこの世界の2倍ぐらいなんだから」
フカザワ「……それって疲れそうだよね」
俺「睡眠時間も2倍だから問題ない」
ヤマ「そんなことより早くっ! 俺の! 俺のシナプスが!」
うるせぇな。
俺「ちょっと待て。カエデの友達に待ってからにしよう。お前らは2人だからいいかも知れないけど、彼女は1人なんだ」
ヤマ「……カエデちゃん。友達少ないの?」
俺「それ本人の前では言うなよ」
妹「遅いよ」
突然間を割って入ってきた妹に俺とヤマは驚いた。
俺「い、いたのか」
妹「エリちゃんもいるよ」
エリ「ど、どうも」
俺「ごめんねエリちゃん、騒がしくて。カエデからよく話を聞いてるよ」
エリちゃんという少女は見た目妹と変わらないようにみえるが、どちらかというと消極的な子のようだ。
だが、空色のワンピースを上手に着こなしており、オシャレな雰囲気も持ち合わせている。
妹「あと、私ほかにも友だちはいるよ? ただ、複数人だからえこひいきみたいになるのが嫌だったの」
俺「でもエリちゃんは?」
妹「エリちゃんは親友だから」
なるほど。
エリ「えっと、そこのお姉さんたちが一緒にいてくれるんですか」
俺「そのはずなんだけど……」
横目でちらりと見る。
フカザワ「そんなとこにいたくない! わたし部屋に戻る!」
ヤマ「それ死亡フラグだから」
エリ「……えっと、お姉さんはどういう?」
妹「人外とかモンスターが苦手なんだってさ。 無理して来る必要ないんだけど、何故か最初は行きたいって言ってた」
何でだよ。
俺「……フカザワ。嫌なら無理すんな。ただフラグは処理しとけ」
フカザワ「えっ……でも……」
俺「どっちだよ!?……まあ好きにしろ。無理強いはする必要ないからな」
俺はそう告げると、いつものように魔法陣を作った。
ヤマ「おおっ! すげ〜ミヅキ、賢者みたいだな!」
俺「大げさな……。とりあえず準備は出来た? 酔い止め飲んだ?」
ヤマ「おう!」
エリ「はい!」
2人の返事を聞くと妹とエリちゃんは先に飛ばされた。
続いて俺も行く。
ヤマ「じゃあな、フカザワ。エリちゃんは俺に任せておけ」
フカザワ「あーっ! そうだった、ダメぇ!!」
ヤマ「えっ!? ちょ、うわっ!」
結局、全員飛ばされることになった。
******
門星学園 校門前
俺「……大丈夫か? 俺は慣れてるから良いんだけど」
ヤマ「……いや……これは」
エリ「……カエデちゃん……気持ち悪いよぉ」
フカザワ「……うぅ」
これは……仕方ないな。
俺「えっと、こっから名前で呼ぶの禁止な」
ヤマ「なんで?」
妹「校則で決まってるの。名前と顔を知るだけで悪用されることもあるらしいからね」
エリ「へぇ、分かったよカエ……えっと……」
まあ、そうなるよな。
俺「……この世界では、俺は『俺くん』、妹は『妹ちゃん』と呼ばれることが多いな」
妹「たまに『日本ちゃん』ね」
エリ「じゃあ妹ちゃん!」
ヤマ「俺くんだな! 理解した」
とりあえずこれで安心かな。
俺「じゃあとりあえず町の方行こうか。 雰囲気や他種族に慣れてほしいし」
ヤマ「あ、ちょっと待って! 門星学園写真撮りたい!」
なるほど。
俺「ダメだ」
ヤマ「なんで!」
俺「カメラは魂を封じるから」
ヤマ「なるほど!」
さすがファンタジーヲタ。理解が早い。
俺「ってか、さっきから黙ってるけどフカザワ大丈夫? 戻りたいなら無理しなくてもいいんだよ?」
フカザワ「だ、大丈夫……。エリちゃんをヤマの魔の手から守らないと」
ヤマ「酷い」
別にヤマはロリコンじゃないから、どちらかというと他種姦しそうだけどな。
******
城下町 広場
ヤマ「ギャー!」
フカザワ「ギャー!」
悲鳴と歓声を上げる2人。これは前日に連れて来て正解だったと思う。
エリ「うわぁ! 凄い! 絵本の世界みたい!」
俺「……お前ら、エリちゃんを見習えよ」
ピュアとナチュラルは月とスッポンだ。
ヤマ「フカザワ、落ち着けよ」
フカザワ「ヤマこそ」
お前らの場合は亀とスッポンだ。
ヴァンプ「よお、俺くん」
俺「ヴァンプか。おはよう」
ヴァンプ「おう。後ろの人らはお前の連れか?
俺「ああ。現世界から連れてきた」
ヴァンプか……。見た目的には顔色が悪いだけで人間と変わらないし、慣れさせるにはいいかもしれないな。
俺「えっと、彼はヴァンパイア」
ヤマ「えっ! マジで!」
ヴァンプ「お、おう」
フカザワ「ひいっ!?」
まあ反応はそれぞれだけど、悪い反応ではないな。
ヴァンプ「俺くんー!」
俺「悪い悪い、こいつら他種族初めてだからテンション上がってんだ。慣れるまで付き合ってやれないか?」
ヴァンプ「あー、なるほどな。……悪いけど、ステージ役員の用事があるんだ」
俺「……そっか、頑張ってな」
最後にヴァンプは、学園祭楽しめと一言告げると足早に帰って行った。
ヤマ「なんか、人間ぽいな」
俺「人間ぽいというか、感情あるもの全てあんな感じなんだよ」
フカザワ「……悪い人ではないのかな」
とりあえず難問は抜けたとして、次は少しレベルを上げ……
俺「……ちょっとこっち行こうか」
フカザワ「え? な、なに?」
四人を連れて路地に逃げる。
危ない……ラミアに見つかるところだった。
ラミアは見た目的に蛇だから苦手な人からしたら堪らないし、何より彼女は人間に対して強い好奇心を持っている。
今、見つかってしまえばフカザワのSAN値が失われてしまうところだった。
俺「……うーん、ヤマは何に会いたい?」
ヤマ「俺か? ……そうだな……何でもいいな!」
俺「……そか」




