39話「カンヘルは正義のドラゴンです」
門星学園 高等部βクラス
オオカミ「……出し物?」
テストも終わり、夏休みまで残るイベントは学園祭だけとなったある日。ついに我がクラスもイベントに向かって動き出した。
ケットシー「そうにゃ、今度行われるの門星学園祭は部門がそれぞれあるにゃ」
先生の話によると部門は全部で3種類あるようだ。
劇やダンスを披露し合うステージ部門。
次に校庭で屋台を行うストール部門。
そして教室で展示やレストランなどをするアトラクト部門である。
俺(なんだ、俺の世界の学園祭と変わらないんだ)
ケットシー「とりあえず代表は平行世界の2人にしてもらうにゃ」
一瞬の間が空く。
俺&ハーピー「「えっ!?」」
俺「な、なんでなんすか!?」
ケットシー「だって、ここの学園祭は平行世界のものを参考にさせてもらってるからにゃ、ちなみに拒否権はないにゃ」
なんだよそれ。
ブラック企業かよ蟹工船かよ。
…………
……
俺「んじゃあ、一応聞くけど。元の世界に学園祭という概念があった人ってどのくらいいる?」
パラパラと手が上がってるのが見える。一応、学園祭自体は色んな世界でもしてるのか。
俺「えーっと、じゃあどんなことしてたか教えてくれるかな……例えば、悪魔くんとかは?」
悪魔「サバト」
ですよねー(笑顔)
俺「んーと……じゃあ悪魔くんに手を出そうとしてる天使さんは?」
俺の言葉によってほぼ同時に悪魔が顔を振り返り、天使が手を引っ込めた。
天使「ん? 私? 色々してたよ、アーチェリーとか弓道とか流鏑馬とか、1番盛り上がるのは頭に乗せたリンゴを外すまで射ちつづけるのが最高だね!」
全部弓やん、あと最後のウィリアム・テルはなに?
外すまでって、学園祭のたびに人が死ぬのか?
王女「あのー……俺さんよろしいですか?」
俺「はい、王女様」
いつも物静かな王女がか細い声を上げた。
王女「あの、世界軸と言うものがよく理解出来ないのですが……平行世界とはどういった世界のことを言うのでしょう?」
俺はハーピーと顔を見合わせたが、お互い頭にはクエスチョンマークを浮かべていた。
俺「うーん……すいません、難しいです。かなり複雑な世界なので」
王女「そう……ですか」
ハーピー「でも、うちの世界の学園祭なら説明できるよー」
ハーピーが珍しく、ちゃんとしたことを言ったので俺は少々驚いた。
王女「そうですね!まず、学園祭とはどういったものかを知りたいです」
ハーピー「だってさ、俺くん。説明したげてよ」
……こんなやつだとは思ってた。
俺「んーっとそうだね……簡単に生徒でも出来るものを料理してそれを提供するというのもあるけど、たまにお化け屋敷やメイド喫茶をするところもあるよ。大体はテーマを決めてそれに沿ったものを提供するのが主だね」
流暢とはいかないが、比較的スラスラと言えたと思う。
ヴァンプ「ちょっといいか? 俺、演劇部だから気になるんだけど、劇ってどんな演目を選ぶんだ?」
俺「特にって言うものはないけど、多いのは古典文学やオリジナル脚本かな」
ヴァンプ「オリジナルって……生徒が考えるのか!?」
俺「うん、でもまぁ大体は混沌と化しちゃうからやめた方がいいと思うよ。それなら、古典選んだ方が安全策かな」
実際に中学の学園祭でやったオリジナル脚本「人魚姫サバイバー」は酷かったからなぁ……。
ラミア「ねーねー、劇に使う古典ってどんな作品があるの?」
俺「うーん……大体盛り上がるのは悲恋かな?」
ラミア「ヒレン?」
俺「うん。例えば親同士が仲悪いせいで交際が出来なくなって、お互いに自害する話。種族の決まりごとのせいで人間と結婚出来ない異種族の話。他にも、主人公が好きだった女の子が実は幼馴染に心を寄せていたという話とか恋が実らない話とかいっぱいあるよ」
……まあベタすぎるかもしれないけど、そのくらいがいいだろう。
ハーピー「俺くん結構知ってるんだねー、わたしは学校行けなかったからあまり知らないんだー」
俺「ん、まぁ本はよく読んでた方だから」
ハーピーはそもそも本を持つ手がないから、そういう話は聞く以外に方法がなかったんだろう。
それに平行世界出身ということは人の少ないところでひっそりと暮らしていたのかもしれない。
物語を知らなくて当たり前だ。
俺「まあいいや、劇の脚本は俺が適当にいいのを選ぶよ」
他の世界の物語も知りたいが、今回は平行世界の学園祭だ。俺が選んだ方が良いだろう。
クラスからも異議は上がることはなく、順調にステージは決まった。
俺「でも俺生徒会で忙しいからヴァンプも手を貸してくれよ」
ヴァンプ「ああ、任せろ」
さてと、あとはストールとアトラクトか。流れ的にはストールを決めておきたいな。
俺「じゃあ次露店だけど、何がしたいとかってある?」
ラミア「俺くんのとこはどんなことしてたの?」
俺「そればっかだな」
オオカミ「いや、平行世界の住民に聞くのはかなり大事だと思うぞ。誤って平行世界とは全然異なるものになってしまうのは怖いからな」
確かに一理あるか。
でも、俺の中学は露店なんてしてなかったからなぁ……。まあドラマとか漫画のイメージでいいか。
俺「クレープとかたこ焼き、焼き鳥とかじゃないか?」
ハーピー「俺くん不謹慎だな」
俺「ごめん」
ハーピー「まあ焼き鳥好きだけどね」
しかし、今こう考えてみると結構コストの高いものを作ってるんだな。
ラミア「つまりは鉄板とか網焼きとかで簡単にできるものなの?」
俺「まあ、そうだな……オオカミくんよ」
オオカミ「狩りか? 嫌だぞ。一匹仕留めるだけでも体力使うのに、山賊の晩餐会みたいな量を作るとなると俺の体が干からびる」
……仕方ないか。体力はどうしょうもないことなのは俺が1番分かってる。
俺「そういや先生。予算とかはいいんすか」
ケットシー「まあそれは大丈夫にゃ。全額学園保証とさせてもらうにゃ。……でもキャビアとか烏骨鶏とかドラゴン肉とか嫌がらせにしか見えないものなら断るにゃ」
そりゃそうだろうな。ならやはりB級で攻めるしかないのだろう。
俺「えっと……じゃあ何か網焼きとか鉄板とか鍋とか扱える人っている?」
すると手が上がったのはスライムさん、カンヘルさん、そして鬼さんの3人だった。
俺「……3人だけか、とりあえず何作れるか教えてくれるかな」
鬼「えっと、地元でお団子作ってたよ。実家が和菓子屋だったから」
カンヘル「ホットケーキです。修道院でよく作って配ってました」
スライム「タコヤキ……ドビンムシ……」
なるほど、あとスライムさんは早く元の球体に戻ってほしい。
女性の裸は見慣れてないんだから、せめて服ぐらいは着せた格好には出来ないものか。
団子とホットケーキとたこ焼きと土瓶蒸しか。
……そうだ。
俺「スライム、少し似たものにしていいかな」
カンヘル「……何作るの?」
俺「うん、たこ焼き作る要領でベビーカステラ作ったり、土瓶蒸しの要領でプリンとかは出来ないかなと思ってね」
スライムさんは体をくねらしてOKというサインをしてくれた。
なんとか出来るらしい。
これなら、お菓子喫茶ぐらいなら出来るかもしれない。




