20話「ネイプシーは王室です」
ラミア「…え!?いや、あのどうしてあなたが?」
皆の気持ちを代弁するように、ラミアが質問をする。
相手からの返答は実に簡単なものだった。
女性「そういえば、自己紹介まだでしたね。私は、ゲスター王国第1王女テイスタといいます。」
まさか、王女だったとは思わなかった俺はかなり動揺した。
俺「お、王女さま…。あ、お、俺…いや、自分はミズ…」
タウロ「お、俺くん!私も気になるが本名はダメだ!」
あ、忘れてた。
危ない、もう少しで…別に困らない気もするが校則に違反するところだった。
ってか、この国ゲスター王国って言うんだ。
王女「その話は聞いております。ですので、申し訳ありませんが種族名で呼ばせていただきます。」
オオカミ「あ、はい。構わないです。」
王女は一呼吸おいてから話し出した。
王女「この世界は真新しいものです。実際創世主が在住している世界なども珍しいと思いますし、何よりもこの世界には未だここしか国と呼べるものはありません。」
ど、どんだけ狭いんだこの世界。
王女「私の種族はネイプシーの中でも少なくないルリア族といいます。」
ネイプシー…か。
確か、この世界で生まれて一般国民として暮らしている人のことだよな。
王女さまはその後も続けた。
王女「本当は、私なんかがなるような者が王女になるよりも、門星学園のOB、OGの方を推奨するべきなのですが…この世界に残るものは居ないのです。」
そりゃそうだろう…
生まれ育った故郷を捨てて、新天地で暮らすなんてそうできることじゃない。
やはり皆、出て行くのだろう。
王女「その上、先日外出した際も生徒の方に助けられるようなことになり、感謝とお詫び、挨拶を含めて今回招待させていただきました。」
…なるほど。
要約すれば、助けられたことの感謝、力不足なのに王女に就ていることの謝罪、それから挨拶のために呼ばれたということか。
ヴァンプ「礼には…」
タウロ「礼には及びません、それに今回招待していただき大変嬉しく思います。」
一瞬ヴァンプが小声で「何でだよ」と言っているのが聞こえたが気にしないことにする。
王女「…遠くで見ていて思いました。人間、ラミア、ケンタウロス、ワーウルフ、ヴァンパイア、それぞれ種族は別なのに実に楽しそうに接していると。」
皆、顔を俯く。
少し恥ずかしいんだろう。
ってか、俺と妹纏められたのか。
王女「…長々と申し訳ありません、これだけは言いたかったんです。」
こちらも、軽く会釈する。
俺「いえ、御丁寧にありがとうございます。自分たちも、こういう場に呼んでいただき感謝しております。」
少し食い気味かなと思いながらも告げる。
王女「そう…ですか。それならありがたいです。」
王女は少し困った顔をしながらも納得してくれたようだ。
………………
……
城下町 表通り
王女との会合が終わった後、俺の足の怪我のこともあり、せっかくだが帰ることにした。
王女はまた会う日までお元気でと言ってたけど…まあ、もう会うのは難しいだろう。
タウロ「…すまないな、私のせいで帰ることになって。」
タウロさんが申し訳なさそうに話してくる。
俺「え?いやいや、謝るのはこっちの方だよ。皆して一緒に帰ってもらわなくても…」
タウロ「その足では学園まで帰れないじゃないか。」
ラミア「私は俺くん居ないとつまんないし。」
ヴァンプ「俺は疲れたから、せっかくだし帰ろうと思って…。」
オオカミ「俺は性に合わないからな。」
みんな、それぞれの理由を話す。
結局、みんなこういう場は好みじゃないらしい。
…帰宅後、補習で部屋に居なかった妹に問い詰めを食らったのは言うまでもない。
………………
……
門星学園 高等部βクラス
俺「おはよー。」
ヴァンプ「ああ…おはよう。朝もお前ら一緒なのか。」
ラミア「えへへー。体温が上がるまで一緒にいて貰ったの。」
全く、変温動物だからというのは言い訳にならないと思う。
それにしてもヴァンプの様子がおかしい。
いつもより、グッタリしているというか顔色が悪いというか…
どちらもいつも通りか。
ラミア「…どーしたの?元気ないけど。」
ラミアも気づいたようで質問する。
ヴァンプ「…ああ、筋肉痛で…やばい。」
…さいですか。
ケットシー「はーいにゃー。挨拶するにゃー。」
オオカミ「…。」
ケットシー「…えっと…。いつも言ってるけども挨拶するにゃーっていうのは挨拶しなさいって意味にゃ。」
多分、分かって無視してるんだと思う。
………………
ケットシー「…ってまあ今日はこんなとこにゃ。あと、追加。今日は新入生がいるにゃー。」
…?
門星学園に新入生ってことは、誰かが俺みたいに誰かを転入させたということか?
教室が少しざわめいているなか、先生は構わず新入生を入れた。
ケットシー「さー、入るにゃー。」
ガラガラと音を立てて扉が開く
そこにいた人物を見て、教室で5人が突っ伏した。…もちろん俺を含めて。
王女「今日からこの学園に通うことになりました。種族はネイプシーです。」
ケットシー「ネイプシーさんはこの国の王女にゃ。だから、特別に王宮からの通学という処置を行いますにゃ。」
…これは。
また、大変なことになりそうだ。




