19話「ケンタウロスの掟は複雑です」
王宮 ???
??「もう昨日言ったばかりでしょう。困りますよ。」
女性「いいじゃない、私はやりたいことと、やらなければならないことしかしたくないの。」
??「そんな身勝手な…」
………………
……
王宮 大広間
少し時間を待っていると、女性の言っていたとおり多くの客人が来た。
タウロ「な、なんだ…あの服は…背中が丸見えではないか…!ふしだらな…。」
ラミア「あんたが言うな。」
そういうラミアもエッチい服だと思う。ヘソが見えているような服で…蛇にヘソ?
俺「…?????」
オオカミ「…知らなくてもいい謎もあるんじゃないか。」
オオカミの言う通りだ、このことは考えるのをやめよう。たぶん本人もわからないだろうし。
すると、早速舞踏会が本格的に始まったのか曲が鳴り出した。
ヴァンプ「おおっ!あそこに美人の人型種族が!ちょっと落としてくるな。」
あいつ…こんなところでナンパする気か。
タウロ「お、おお…これが…なんというか、幼少期に読んだ城のままだな…」
オオカミ「まさに絵に描いたようなって感じだな、ラミア。」
オオカミはラミアに話題を振ったが、反応はなかった。
俺「…ラミアさん?」
ラミア「えっ!?…あ、うん、そうだね…」
なんだかラミアさんの様子がここに来てからおかしい気がする…何故だろう。
オオカミ「全く、俺くんの声なら聞こえるのか…。」
オオカミが突っ込んだあと、ふと思いついたように話し出した。
オオカミ「…そういや俺くんは踊らないのか?」
俺「えっ!?無理無理!踊れないし。」
一応俺もヒップホップを習っていたことがあるし、今も体には染み付いている…が、今回は高貴な場所で行う社交ダンスだ。
また物が違いすぎる…
オオカミ「でも、あれ見ろよ。」
指を差した方向に居たのは、微笑む女性と…たどたどしい足取りのヴァンプだった。
俺「…ああはなりたくないんだが。」
俺が呆れるとともに、オオカミも確かにと隣でため息をついた。
すると、ラミアが衝撃的なことを呟いた。
ラミア「…俺くん、踊ろっか。」
俺「えっ!?ちょ、ちょっと待って。ラミアさん踊れるの!?でも俺…。」
すると、意外なことに自信に溢れた顔で答えた。
ラミア「大丈夫、私に任せて。とりあえず足が尻尾に引っかからないように気をつけてくれれば問題ないから。」
そして、引っ張られるがままラミアに連れて行かれた。
………………
……
王宮 大広間
すでに、ホール内は満員だったが、ラミアは体が大きいながらも何とか隅っこを陣とったとき丁度、曲が変わる頃だった。
幻想的な世界観に相応しい音楽とともに俺はラミアと手を取り合った。
ラミア「足のある種族のことはよくわからないけど、取り敢えず三拍子のリズムで足を踏み出すの。」
言われたとおり、心で三つ数えながら時計の方向に歩く。
俺「だ、大丈夫かな。」
ラミア「大丈夫だよ、じゃあ次は回ってみようか。」
とりあえず、何と無く想像の動きで体を動かす。
ラミア「うん、上手い上手い。」
二人は一曲終わるまで踊り続けた。
俺は素人同然の動きだっただろうが、ラミアがリードをし続けてくれたおかげでなんとか乗り切ることが出来た。
俺は踊っている間、自分よりも背の高い半分蛇の少女に少しばかり恋愛感情を感じてしまった気がした。
………………
ラミア「んーっ!ありがと、俺くん!緊張ほぐれたよ。」
ダンスが終わると何時ものラミアに戻っていた。
俺「いや、それはいいけど…どこでダンスを?」
ラミア「うーん…私さ、教養いいから、こういうの分かるんだよね」
少々ぎこちなく照れ笑いながらラミアは答えた。
とりあえず疲れたので戻ることにする。
………………
タウロ「こ、こうじゃなかったか?…うわっ!」
オオカミ「タウロさん、無茶するなよー。」
戻ってくると、なにやらダンスの練習をしていたのか。
タウロさんがハーハー言っていた。
俺「ヴァンプは?」
オオカミ「ほれ、そこだ。」
顎で差した方向にいたのは鮮や踊り続ける女性と…踊り疲れてヘトヘトになっているヴァンプだった。
しかしラミアはヴァンプに目もくれずタウロさんにアドバイスを始めた。
ラミア「いい?せっかく足が有るんだから活かさないと…ここ、ここ、ここの順にステップを踏んで。」
オオカミ「…そうか、ナルホド。これは面白いな。」
オオカミが何かに気づいたらしく軽く笑った。
俺「どうした?」
オオカミ「いや、なんでも無い。いつか分かると思うぞ。」
俺は首を傾げながら曲が終わるのを待った。
………………
最後の曲となったとき、タウロさんが思い切ったように声をかけて来た。
タウロ「お、俺くん!い、一緒に踊ってはくれまいか?」
俺「…これまたどうして。」
タウロさんは顔を赤らめてモジモジしながら呟いた。
タウロ「い、いや。その、ダンスの成果を試したいし…それに…知らない人と踊るのも…なんだし…」
うーん…タウロさんが緊張しているなんて、珍しいな。
まあ、いいか。一応コツもつかんだし。
俺「いいよ。じゃ行こうか。」
タウロ「…えっ?」
タウロさんはなにやら驚いた様子で立ち止まった。
俺「どうした?早くしないと曲終わるぞ?」
タウロ「あ、あぁ!うん、行こう!」
………………
王宮 大広間
俺「…。」
タウロ「…。」
気まずい…。
思ったよりも身長差あるから踊りにくいというのもあるけど…何よりも会話が無い。
タウロ「あっ!」
俺「っ!!!???」
突如右の足の甲に抉るような激痛が走った。
どうやらタウロさんに踏まれたらしい。
タウロ「だ、大丈夫かっ!わ、悪い…こ、こんなことになるなら蹄鉄を外しておけばよかった…」
俺「い、いやいいって!それに蹄鉄外したらタウロさんの足が痛んじゃうよ。」
なんとか心の中で悶えながらも回答する。
が、タウロさんはまた泣き出しそうな顔になった。
俺「…えっと、今回は休もう。今度また踊ろうよ。」
タウロ「あ…うん…」
………………
王宮 庭園
一応タウロさんへの配慮として、人の少ない庭で休むことにした。
しかし、落ち着くまで時間かかりそうだな。
まあだからと言って、ドウドウとか言ったら怒られそうだけど。
俺「…タウロさん、俺は大丈夫だから」
タウロ「…しかし…また俺くんを…せっかく、騎士として護ると誓ったのに…」
うーん、これは重傷かな。
俺「…タウロさん、俺は確かに人間だし弱いよ。ヴァンプみたいに回復も早くないし、オオカミくんみたいに力もない。だからさ、やっぱり護ってもらわないとダメなんだよ。この足だと多分暫くは無茶出来ないし。」
タウロ「…すま…ごめん。」
固い言い方を言い直したのは俺に合わせるためだろう。
それも加えて、タウロさんを慰めた。
俺「でもさ、タウロさんは無理しすぎなんだよ。だから力んじゃってドジをしちゃうんだと思うよ。俺はさ、これでも人間の中ではタフな方だしね。」
タウロ「…。」
タウロさんは話を聞き終えると、俺の前で足を折って体制を低くした。
タウロ「…私の背中に乗った方がいい。…足が悪くなるぞ?」
顔は反対を向いているため表情が読めないが、とにかく言われたとおり、背中に乗った。
一瞬、びくんと動いたが暫くすると落ち着いて立ち上がった。
俺「…わわっ…高…。」
タウロ「危ないので、どっか捕まっておいてくれ。」
…なんか恥ずかしいな。
タウロ「ハウァッ!?む、胸はなるべく…」
俺「えっ…?あっ!?ご、ごごごごめん!!」
な、なに俺、セクハラしてんだ…
ラミア「あーっ!2人ともここにいたか!」
タウロ「ラミア。どうした?」
タウロさんもすっかり立ち直ったらしい。
すると、後ろにいたヴァンプが息を切らせながら言った。
ヴァンプ「ゼーゼー、ど、どうしたじゃ、ないだろ。手紙、忘れたのか」
どうやら皆勤だったらしい。
お疲れ様だと言いたいが、ここからが本番のような気配がするのは俺だけだったのだろうか。
………………
王宮 回廊
俺たちは手紙に書いてあったとおり、従者と思われる人物に生徒ということを告げた。
すると、一瞬驚いた顔になったがすぐに表情を戻し、着いてくるように案内された。
しかし今考えると、もし従者じゃなかったらと思うとゾッとするな。
俺「ねータウロさん。もう降ろしてくれても大丈夫だよ?」
タウロ「心配は無用。俺くんは軽いから私自身には負担なんてこれっぽっちもない。」
すると、タウロさんの前にいるオオカミがからかうように言った。
オオカミ「でも…タウロさん。今、すごい顔だぞ?」
俺「やっぱり、降りた方が…肩借りたら歩けるし。」
すると、また背中を震わせてから答えた。
タウロ「なっ!?…も、問題ない。この顔は…生まれつきだっ!」
そういえば、ケンタウロスに乗る話ってあまりないよな…
まあ最近の漫画とかでは、ケンタウロスの背中に乗るのは…あっ!?
俺「ああああっ!!?」
タウロ「な、な、なんだ!?」
俺「だ、駄目だって!そ、そんな簡単に俺なんかを乗せたらいけないって!」
慌てる俺を全員不思議そうに見ていたが、ことを悟ったタウロさんは俯き呟いた。
タウロ「そうか…やはり俺くんは知っていたか…。」
ラミア「なになに!?ど、どういうこと?」
タウロさん自身からは言い出しにくいだろう。
俺が変わって説明をした。
俺「ケンタウロスってやっぱりタウロさんみたいな堅実な人が多いんだよ。だから、背中に乗せるなんてことは稀なんだ。例え俺が怪我しようとも…。」
俺は続けた。
俺「ケンタウロスが人を乗せるということ。つまり、例えるなら、レイ…淫行を働くのと同じことくらい重要なことなんだ…」
言い方を考えるのも難しいものだが、全部言い切るとタウロさんの膝が折れた。
タウロ「う、うわあああああっ!!す、す、すまないっ!!き、緊急事態だからと思ったからつい…。せっかくの初めてを取ってしまって反省している!よ、よかったら本当に私の生殖器に…私のガバガバウマン…」
ラミア「ちょちょっとそれ以上言ったらダメだって!!?それに、私は気にしてないからいいよ!?ダンスで足踏んで怪我したから代わりに乗せているだけでしょ!そんな、本番とかはいいからってかヤメて!」
タウロ「はっ!そ、そうか…す、すまない。…しかし、これだけは言わせてくれ。私は俺くんなら別にいいと思っている。」
…え?
それって…どういうこと…?
そう聞きたかったが結局聞きそびれてしまった。
………………
扉の前についた。
かなり厳正そうな扉だが、この先に何があるかは全くわからない。
ただ言えるのは、ただ事で無い空気がこの先から感じられるということだ。
俺「こ、ここに入るのか?」
ヴァンプ「な、なんか、嫌な予感がするな…」
すると、突如重々しい扉が開き始めた。
その先にあったものは…
………………
王宮 謁見の間
左右には大勢の騎士が剣を構え、
床は大理石の上に赤の絨毯を敷いてある。
さらに、奥には左右に大臣らしき人物を抱え玉座に座る一人の女性が…
俺「…すいません、場違いのようですので帰らせていただいても良いですか?」
オオカミ「逃がさん」
ヴァンプ「逃がさん」
…逃げられない
仕方なく、ビビりながら従者のあとをついていきながら小声で相談する。
俺「…あの人って?」
オオカミ「…この国の王族じゃないか?」
それは正直薄々分かってた
俺「どうすればいい?」
オオカミ「とりあえず、玉座の前に来たらタウロさんから降りて、跪けばいいんじゃないか。…それに、こういう場はラミアの方が詳しいと思うぞ。」
最後の意味がわからないが、玉座の前に来てしまった。
とにかく、オオカミの言うとおりタウロさんから降りる。
これは流石に頭が高いというやつだ。
それから、周りに合わせて跪いた。
…ヤバい。
今更だが緊張して来た。
??「顔を上げて下さい。」
どこかで聞いたことのある声…
意外と最近というかちょっと前に聴いたような…
ゆっくり顔を上げる。
そこにいたのは他の誰でもないーー
俺たちが助けた女性だった。




