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心を埋めるもの  作者: hEy
3/5

第2話

少年と少女は邂逅する…

少し時間を戻して、夏の宿泊研修のお話。

光山中学校は平々凡々な市立の中学校である。その教育カリキュラムの中に宿泊研修という、プチ修学旅行がある。

修学旅行が2泊3日ならば宿泊研修は1泊2日。内容も修学旅行のように自由に遊べる日があるわけでなく、東京までいって博物館をみて、感想文を書いて終わり。

なんともつまらない旅行だ。

だが、この無駄とも思える旅行が、大袈裟に、極めて大袈裟に言えば、運命の出会いをもたらした。

この博物館が俺、神崎恭介と鍵坂秋葉の初めて出会った場所だった。


「なあ、神崎」


「なんだ、相沢」


相沢朋也(あいざわともや)。クラスメートで俺の中では1番仲の良い友人。

成績はクラスで5番以内には必ずいるし、人望もあり、クラスのまとめ役だ。

そんな尊敬すべき人間なのだが、やはり人間、欠点があるようで。


「あの受付のお姉さんめっちゃ美人だったな!」


女の子(美人、可愛い子限定)が大好き人間なのだ。

自分の好みを見つけるとすぐ俺に同意を求めてくる。いや、まぁ確かにコイツの見る目は確かなんだけれども、今日で3回目となるとウンザリしてくる。


「そーだな」


「なんだよ、お前のためを思って紹介してやってるのに」


「は?どういう意味だよ」


「だってお前だけだよ?ウチのクラスの男子で彼女作ったことないの」


そう、我らがクラスの男子勢は全員ませていて一度は恋愛経験をしているらしい。

だが俺には興味がなかったし、縁もなかった。


「とは言ってもなぁ、そう思える人がいないんだ。しょうがないだろ?それに俺みたいな無愛想なやつを好きになる物好きなんていないだろ」


「はぁ。そうかい(ファンクラブあるやつの科白とは思えねぇよ)……」


「そんなことよりこの絵のめっちゃ綺麗だなぁ。水面に映る月…か」


「ん?あ、あれは!」


呆れてたかと思うと、いきなりテンションメーターをあげ始める相沢。

いったいどうしたというのか。


「みろ、隣のクラスの鍵坂さんだ」


相沢が指さしたその先に1人佇んでいた少女。その姿はとても美しく、様になっていた。おそらくあの姿をモデルに絵なり、写真をとれば賞を貰える可能性もあるだろう。


「誰だ」


鍵坂秋葉(かぎさかあきは)さん。校内美少女ランキング(非公式)で5本の指に入る美貌の持ち主だよ。成績優秀、眉目秀麗、品行方正、口調が少し変わっているがそこにグッとくる男は数知れず…」


「ふーん。ところで相沢よ」


「なんだぁ〜?神崎ぃ?鍵坂さんに興味があるのかなぁ?」


「お前、レポート素材を集めなくていいのか?」


そう、俺たちはこの博物館に美少女探しをするために来たのではない。学校に帰ってからのレポートのネタを探しにきたのだ。


「ちょっと待て!確かにそうだがちょっと待て!お前、いつの間にネタを見つけた?!」


「相沢が受付のお姉さんをガン見してたとき」


「つまり入ってすぐかよ!チクショウ、覚えてろ!お前よりすっげぇネタ見つけてギャフンと言わせてやるんだからな‼」


まったく意味がわからなかった。

バカなのか頭が切れるのか、お人好しなのか、単純なだけなのか……

まあ、そんなやつだから気兼ねなく接することができているのだから。


「「やれやれ……」」


思わず洩らした言葉が誰かと重なった。

誰かといっても、そのとき俺の周りにいたのは鍵坂秋葉ただ1人だけだったのだが。


「キミたちは他人の噂話をするときはもう少し音量を下げて話したらどうだい?」


「は?」


「丸聞こえだよ」


「お、おう。悪かったな。気をつけるよ」


これが最初。よくよく考えれば、相沢が俺たちを出会わせてくれたと言っても過言ではないのかもしれない。


「……不快ではないのか?」


「え?」


もう会話が終わったものだと思っていた俺にとって、それは予想外の科白だった。

というかモノローグ的には話が終わる流れだったじゃないか。


「いや、普通の人間は初対面の人間に注意されると不快感を示すものだよ」


その言い方だと俺が普通じゃないみたいじゃないか。そっちのほうが不快だよ。

……普通ではないことは認めるが。


「まぁいいさ。新しいパターンを得られた。ありがとう」


「お前は心理学者かなんかなのかよ……」


眼鏡の奥を光らせ笑う変な女。それが彼女への第一印象だった。


「鍵坂さーん!」


遠くから女子の声。どうやらコイツと一緒に行動している子だろう。


「それじゃあボクはこれで」


「ああ、悪かったな。その…相沢のやつも悪気はないんだ。許してやってくれ」


彼女は驚いたように両目を見開き、微笑んだ


「いや、気にしてないから大丈夫さ。またね」


手を振って去っていったので俺も手を挙げてそれに応えた。

だが、それ以降暫くの間は彼女とは特に接点なんてなかった。

廊下をすれ違うことも、そもそも見ることすらなかった。クラスが違うのだから当たり前だろう。

俺はそんなこと気にもとめてなかった。彼女のことを忘れた訳ではないが、「ああ、そんな奴もいたな」くらいのものだった。

彼女と再会したのは、中学3年になる前の春休み。

俺が生き甲斐をなくしたまま、ただただ漠然と、ただただ惰性に人生を貪っていた春休みだった。



基本、地の文は主人公の独白形式でいこうとおもってます(*´ω`*)


キャラ紹介は全員が出揃ったらあげようと思ってます

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