表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/50

檻の中

叫んだ。

 力いっぱい叫んだ。気付いて欲しくて、飛んだり跳ねたりしてもみた。


「ぜぇ、ぜぇ、ゴホッゴホ・・」


 無駄に体力を使った上に、喉が嗄れただけだった。


――――どうして ? スタッフの人、気付いているよね ? 何で無視するの ?! 


 壁際で、上に居る警備兵やスタッフに向かって武器の入れ替えを訴える私に、直立不動の彼らは一言も返してくれない。返って来るのは数百、数千と言う観客達のヤジだけ。「殺せ」「殺す」そんな恐ろしい言葉が私の耳に飛び込んで来る。野蛮極まりない大歓声。今までそんな口汚い悪罵に晒された事など無い私の身体は完全に萎縮して強張ってしまう。


「な、なんなのっ ! 殺すとかっ、訳わかんないっ」


 私が思い描いていた形とは、どんどん違っていく状況。

 形式的 ? 型通り ? 違う。全然違う。これは私の予定とは全く違っている。


「何なのよ・・・・もう」


 目を泳がせた私の視線の先の地面に付いた、赤黒い液体。良く良く見れば自分の足元にも転々と落ちている、それは、血 ? 


――――これは本当の――――なの ? 


 ブルッ。とんでもない事に気付き、途端に私の体が細かく震え出す。不安に呑まれ壁に縋り、助けを求めるように3階の猫柳君を仰ぎ見た。


「ネ・・・・だっ・・ !! 」


 彼が何を言っているのか聞こえないけど、滅茶苦茶に暴れているのは分かった。遠目でも激しく動く体が確認できたから。


「猫柳君っ。私これからどうしたら良いの ?! 本当にアレと闘うの ?! 無理だと思うんだけどっ !  」


 到底、届くわけのない私の叫び。だけど私の予想に反して返答が帰って来た。


「ねーちゃんっ !!! 」


 それはもちろん遠くに居る猫柳君じゃなくて、もっと思い掛けない人物の声だった。


「ねーちゃん、ごめん ! 俺のせいなんだっ」

「キジ君 ?! どうして此処に ?! 」


 観客席の最前列で身を乗り出し、下を覗き込んで叫ぶ少年、キジ。彼はアルゴル城に居る筈なのにいったいどうして、こんな所にいるのか。何かあったのだろうか。

 私は彼の居る壁際に駆け寄った。


「ごめん。俺がお姫様に教えちゃったんだ ! だからヤナギ殿下がしようとしてた事が駄目になっちゃった。俺のっ、俺のせいなんだ ! 」

「え、何 ? どういうこと ? 」

「ねーちゃんが勝てる様に立てた計画を俺がばらしちゃて、お姫様にすり返られたんだよっ」

「だから、何を ? 」


 下を向き涙目のキジ。私は要領を得ない彼の話を頭で纏めながら次を待った。


「あれは、ねーちゃんが闘うはずだったアウストラリスじゃないんだ。あの、でかい奴はお姫様が用意した『メガスコリデス‐アウストラリス』なんだよ ! 違うんだ。別物なんだよっ ! 」


 もう叫ぶ声も涙声のキジ。私は「落ち着いて」と呼びかけた。すると彼は益々ヒートアップ。


「落ち着いてなんていらんないよっ ! メガスコリデス・アウストラリスは普通のアウストラリスの4倍でかいんだよっ ! おまけに・・・・・・・・ものッ凄い、肉食なんだ―――――――っっ !!! 」

「い・・・・・・・・、今更、言われても困るぅぅぅ」


 必然的にこの場合、肉=私。つまり何 ? 私は、ものっ凄い肉食の巨大ミミズと同じ檻に、すっからかんの丸腰で入れられているって訳かっ !? 


「ど、どうしよう !! 出してっ出してっ ! 無理無理~~っ。アイツはかなり美味しかったけど、私は食べても美味しくないっ。だってさ、私、食用じゃないもんーー ! 」

「落ち着いてよ、ねーちゃん ! 言ってる事が可笑しくなって来ているよ ! 」

「落ち着いてなんてっ、どうやって ?! あぁもう、私どうしたらっ」


 一瞬で入れ替わった私達。

 事実を聞かされた私は一刻も早く、このミミズの檻から脱出したくて観客席へよじ登れそうな場所を探し周りを見渡した。


「ロープとか無いかな。台になる物でも良いけど。ねぇキジ君 ! そっちに何か長いものな・・・・・・・・ん ? 」


 私が脱出するのに使えそうな物がないか、キジ君に聞いていると足に何かが触った ? モゾモゾと何やらくすぐったい。


「ん ? 縄 ? 」


 下を見ると私の足首にボロ(きれ)を捩り集めたような縄らしき物が絡まっていた。ボロボロだけど長さと強度はありそうで実に手頃だ。


――――良かったっ ! 神様は私を見放さなかったっ ! 


「・・・・・・・・・ねーちゃん、それって・・・・」


 恐る恐るのキジの声に、何 ?と、上を見ると、凍り付く表情の顔と目が合った。

 どうしてそんな顔をしているのだろう ? 目当ての物が見つかったのに。これがあれば上にだって登れる。


「それ ? この縄がどうかしっ !! わ゛ぁっ、わ゛ぶっっ 」

「ねーちゃん !! 」


 絡まった縄がキュッと足首を捉え、そのまま思いっきり引っ張られた。


「いだっっ ! い゛だだだだだーーーーっ 」


 おでこを強かに打って痛いと思う間も無くズザーっと中央に向って引きづられる。剥き出しになっている部分の肌が固い地面に削られた。


「ねーーちゃん ! そいつは触手を使って餌を巣穴に引き摺り込んでから食べる習性があるんだーーーー !!! 」


 うつ伏せで引き摺られていく私に、キジが「聞いてー」と叫ぶ。


 だから、今更、言われたって困るってば・・・・・・・・。

 








猫柳「ネズ子っ、気を付けろっ !! パ、パンツが、み、見えそうだぞっっ !!!」


猫島「その、M836(軍用双眼鏡)は、いったい何処から ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ