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どっぺる!?  作者: 氷純


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何を作る気?

コメディ物というにはギャグが少ない気がしますので、ジャンルを学園に変更しました。

現在の雰囲気を変えるつもりはありません。

 佐也香に自信をつけさせる。

 言葉にするのは簡単だが、具体的には何をさせればいいのだろうか。

 落ち込んでいる女の子を励ます方法とかネット検索かけてみようか。

 しかし、気を使っているとバレたなら、佐也香はますます落ち込むだろう。

 下手なことは出来ないな。

 うぅむ、安請け合いしてしまった。

 あれこれと考えつつ、リビングに戻る。点けっぱなしのテレビから漏れる音声を聞きながら、冷めたお茶を胃に流し込む。

 明日の実験を手伝わせようかと考え、自ら却下する。

 実験内容は俺と佐也香の遺伝子を検査するというものだが、ほとんど機械任せな上に時間がかかる。手持ち無沙汰に機械を眺めて自信回復もないだろう。


「うぅ……む?」


 背後に人の気配。

 この天才が思索に耽る様子に声を掛けられずにいるのか。空気の読める愛らしい奴である。

 振り返ってみると、佐也香が俺をいつもの能面顔で見つめていた。


「宗也さん、夕食はどうしますか?」

「そうだな。母さん達は遅くなるし、今から作り始めても良いか」


 早めに食べて佐也香を寝かせしまおう。

 佐也香は俺の言葉にこくりと頷き、エプロンを手に取った。


「ち、ちょっと待て。佐也香が作る気か?」

「……はい」


 可愛らしく首肯する佐也香さん。実年齢二週間。

 佐也香は料理の知識はインプットされて人並みだが調理スキルは絶望的である。体の使い方が未だに上手くいってないからだ。

 本来なら寝返りからハイハイを通じて二足歩行に到り、体の使い方を自然に習得していく。しかし、誕生前に教育プログラムでインプット済みの佐也香はその過程をすっ飛ばしている。

 ただし、教育プログラムは男性であるという想定で作られていた。

 当然、弊害として佐也香は認識と肉体の筋力に差が生じている。そんな彼女に包丁を持たせるのは正直な所、怖い。

 十分な力で掴んだと思っていた包丁が肉体の筋力不足で滑ったりしそうだ。

 だから、俺が夕食を作ると提案するつもりだった。

 ーー佐也香が伏し目がちになりつつも、表情を繕っているのに気付くまで。


「はぁ……。いいか、力は少し強めにいれつつ注意してやるんだ」


 止めないのが意外だったのか、佐也香は俺の瞳をまじまじとのぞき込んできた。


「……作る気なら早めに頼む」


 照れ隠しに佐也香を急かすと、不思議そうに俺を見ていた彼女は台所に向かった。

 その後ろ姿に胸をなで下ろす。どうやら気を使ったことはバレていないらしい。

 人生経験を積んでいないから人の機微には疎いのだろう。

 これで少しは自信を取り戻してくれると良いのだが。

 ガリガリと米を研ぐ音を聞きながら、俺は密かに溜め息を吐く。

 夕飯の米は細かくなっていそうだ。消化に良くて万々歳だな。

 危なっかしい佐也香を見守りながら俺は明日の予定を組み立てる。

 実験は延期にして、明日は佐也香と外出しよう。料理本なんかを買ってやりたい。

 幸か不幸か両親は頻繁に家を空けるため、佐也香が料理する機会は自然と増やせる。

 家の仕事を任せる事で自信も回復していくだろう。

 そして、俺は毎日女の子の手料理が食べられる訳だ。

 一石二鳥、天才とは一動作で複数の利益を手に入れる者を言うのだ。


「くっくっく」

「宗也さん」

「なんだね? 天才の知恵を借りたいのかね?」


 貸してやろう。特別に無料でな。


「包丁はーー」

「押しても引いても切れるぞ」


 先回りしての解答。定番過ぎて最後まで聞く必要もない。


「包丁は切る道具なんですね」

「そこからかよ!?」


 基本事項ですって。むしろ切る以外にどんな用途で使うつもりだったの?


「ニュースで使い方を知りました」


 ……そう言えば通り魔がどうとか言ってたな。


「って、それ一般的な使い方じゃないから! やっちゃいけない使用法だから!!」


 法律知識とかインプット済みで助かった。包丁片手に家を出て行く事になりかねん。

 肉は外で調達って、市街地でどんなサバイバルする気だよ。

 佐也香は納得顔で調理を再開した。タマネギが少しずつ切られていく。

 流石に包丁の刃を上にするような事はなかったか。

 俺が安堵のため息をつく頃には次の工程に移行していた。

 佐也香が棚からおもむろに取り出したのは中華ナベと木べらである。

 彼女はしばし考え込むと中華ナベを、被った。


「……違いますね」

「自ら気付いてくれて何よりだ。中華ナベは安全第一なヘルメットじゃない」


 さては漫画で仕入れた知識だな。


「中華ナベは盾で木べらは打撃武器ですね」

「どっちも違うから! そもそも君は何と戦ってるの!?」


 料理してたはずだよね。

 そこで細かく刻まれたタマネギとかニンニクとかでチャーハン作るんだよね?

 それとも全部俺の早とちりだったのか。


「後は血を垂らして錬成陣を描けば料理人を錬成できます」

「真理君が出てくるからだめぇぇえぇぇ!」

「失敗しても打撃武器と盾があります」

「使い方違うってば!」


 何で自信ありげなの? 無表情のはずなのにやる気で輝いて見えるんですけど!?


「兄である宗也さんは天才です。成功するはずです」

「確かに、天才だけども! 柏手打って何でも作れたりしないから!!」

「最初はそうです。失敗した後にそれが出来るんです」

「失敗を前提にしてるよね? とにかくやめて。自分で料理作って、料理人は造らなくて良いから!」

「そうですね。人体錬成は完成品がありますし」


 自己紹介乙。

 ようやくこのボケとツッコミの応酬をやめてくれるらしい。

 正直疲れたぞ、おい。


「お腹が空きましたか?」

「……まさか、そのためだけに今の会話が!?」


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