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◆幕話 ユイト、ミリ、ライの初月給

商業区の店に入った瞬間、店主の目が、三人を上から下までなぞった。


「お子様だけでしたら、通り向こうの雑貨店の方がよろしいかと」


丁寧な声だった。

けれど、意味は分かる。


ここは、お前たちの来る場所ではない。


「これをお願いします」


ユイトは棚の前に立ち、差し出された勘定石かんじょうせきへ手をかざす。


【支払い要求:1,500刻】

【決済完了】


店主の笑みが固まった。


「……失礼いたしました。ただいま、お包みします」


三人はようやく、客として数えられた。



夕刻。


拠点きょてんに戻った三人の荷物を見て、レティシアは帳簿ちょうぼを開いた。


【購入品:保温布ほおんぬの茶葉ちゃば/焼き菓子】

【支出:1,500刻】


「自分のために使うよう、申し上げたはずですが」


ユイトは背筋を伸ばした。


「これが、自分たちが一番欲しかったものです」


ミリとライも、うなずく。


「俺たちは、ずっと受け取る側でした。でも今は、自分たちの稼ぎで、エリセ先生や小さい子たちに温かいものを持っていけます」


ライが包みを抱え直す。


「菓子も、少しだけある」


ミリが小さく笑った。


「小さい子たち、喜ぶと思います」


レティシアは帳簿を見つめた。


それから、静かに閉じる。


「……わたくしも、初めてのお給金は、同じ使い方をしましたから」


それ以上は言わなかった。



三人は包みを抱え、孤児院へ続く道を歩いた。


「あいつら、菓子を見たら絶対走ってくるぞ」


「転ぶ前に止めろよ、ライ」


「俺かよ」


孤児院の屋根が見える。


中庭から、子どもたちの声が聞こえた。


ミリが少しだけ足を速める。

ライも文句を言いながら、歩幅を合わせた。


ユイトは包みを抱え直す。


焼き菓子の箱は軽い。

保温布も、茶葉の缶も、たいした重さではない。


それでも、腕の中はずしりと重い。



ユイトは、口元が緩むのを止められなかった。


孤児院へ帰るのが、こんなに楽しみな日が来るなんて思わなかった。


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