表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、現代ダンジョン物拾い生活  作者: 自爆霊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/43

初心者狩りブーム

 全ての探索者が最初に挑戦するダンジョン【始まりの平原】。このダンジョンには最近、沢山の探索者が集まっています。


「ひええぇぇ!?」

「ドラゴンだァーー!?」

「カッケー!!」


 理由は主に二つ。一つ目はセーフゾーンの引きこもりたちが前のイベントで殺し合いに慣れて、死亡リスクのあるダンジョンにも挑戦するようになったこと。

 丁度今ワイバーンに襲われて「ドラゴンへの憧れ」と「生命の危機」で板挟みになってる三人の探索者も、そういった初心者たちの一人です。


「えっ、どっどうする!? 逃げる!?」

「飛べる相手から逃げきれないでしょ! それにドラゴンなんだぞ!!」

「ドラゴンなら当然だな! 行くぞ!!」


 ドラゴンだから(?)というのは死への恐怖を乗り越える理由になるんですかね? 順番に丸かじりされた三人の死体は何も語ってくれません。


 と、まあこのように。大量の初心者がダンジョンに押しかけているのが今のロビーなのです。テキトーに歩いてれば人間の死体が転がっている、まさに死屍累々といった風情ですね。

 そうしてドラゴン三人衆の死地にすぐ次の初心者がやってくる程度には、今のここは人が多いのです。


「うえっ……何じゃあこのグロ死体は」

「頭から丸かじりされた感じやな、踊り食いとは通やねぇ」


 次なる初心者はTHEスジモンって感じの二人です。気合いの入った腕の刺青を惜しげもなく晒す姿はまさにヤの付く自営業。大方「甘っちょろいパンピー共に本物の暴力ってヤツを教えてやるぜククク」みたいなノリで来たのでしょうね、雑魚狩り専門が何を勘違いしているのか。

 そして初心者あるところに初心者狩りあり。自営業コンビの前に、軽装の女子高生二人が現れました。


「へいへい初心者ちゃーん! お金貸してくんなーい?」

「あの刺青……もしかしてみっちゃん! あれヤクザってヤツじゃない!?」

「えっガチヤクザー!? ヤバー!!」


 そう、探索者が集まる二つ目の理由とは、増えた初心者を狙った初心者狩りの殺到です。

 妙に可愛らしいデザインの直剣を持った彼女たちに臆する様子はありません。多少紋が彫られていようが目の前にいるのは初心者という名のカモ、狩り慣れた獲物に足が竦む猟師など存在しないのです。

 一方のスジモン二人は鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしてます、刺青を見てキャッキャされる経験に乏しいのでしょうね。そんなものロビーでは挨拶にもならんぞ。

 とはいえ腐っても悪党、豆鉄砲スタンからすぐに復帰して、シームレスに恐喝を始めます。


「はっはっは、生憎金が無うてなぁ。後で現世で会いに行くから勘弁したってや」

「返済は要らんで? 君らを売ればお釣りが来るやろうからなぁ?」


 はっはっは、我々(うんえい)のシマで恐喝とは恐れ入りますね。ロビーなんて異世界をポンと用意できる上位存在に喧嘩を売るとは、よほど頭が軽いと見える。

 そもそもソレは対策済みです。チュートリアルで説明してあげたハズなんですけどね? ギャルたちがちゃんと覚えているあたり、説明抜けがあったとは思えないのですけど。


「ナニソレウケるんですけどー!」

「ロビーじゃ絶対身バレしないのに特定できると思ってるトカ、もしかして掲示板特定班の方ですかぁぁ?」

「『コポォw拙者らに喧嘩を売るとか人生終わりでござるよwww』ってかぁー?」


 ギャハハハハと笑うギャル、笑顔をピキらせるヤクザ。ロビーではありふれた光景です。

 それとロビーでの身バレは絶対にあり得ません。高度な情報封鎖処理をかけてあるので、仮に大声で本名と住所を叫ぼうが身バレしません。皆すぐにど忘れします。

 そしてそんなことを理解できない刺青ブラザーズがのっしのっしとギャルに近寄って行きますね。いかにもなチンピラムーブ、感動的ですらあります。


「おーうおーぉう! 元気だねぇ姉ちゃん! おじさんとも遊んで欲しいなあぁ!?」

「元気で良いねぇ元気で良いねぇ元気で良いねぇぇ!!」


 相手を威嚇するための肩を揺らした緩慢な歩き方、そして相手をビビらせるため大袈裟に振り上げた拳。現世だったらチビること請け合いです。

 そしてそんな威嚇性能全振りの緩慢な殴打を、当然ギャルたちは身をかがめて回避しました。


「うっは! 大振りすぎでしょやる気あんの!?」

「サンドバッグでも殴るつもり? 『これから殴るから無抵抗で殴られてくださーい!』とでも!?」


 回避とカウンターはセットです。そして攻撃が大振りであればあるほど、致命的な反撃を受けることになるのですよ。

 すれ違いざまの剣閃で腹を引き裂かれたスジモンが、間抜けな顔して傷口から零れた臓物を眺めています。初心者は腹を裂かれると腹圧で腸が飛び出すことを知りませんからね、こういう初々しいリアクションを見ていると優しい気持ちになれます。


「ぁ……? なんや、これ?」

「変や、な……?? 立ってられ、へん」


 きっと彼らも数か月後にはロビーに慣れて、世知辛い現世の反社組織から解放されたセカンドライフを満喫していることでしょう。

 やっちゃいなさいギャルコンビ。彼らの商売道具である安い暴力を叩きのめして、ロビーでも通用する真の戦士への道へ送り出すのです。


「お腹裂かれたらそりゃ内臓も零れるでしょー、人間エアプか~?」

「腹筋切断されたんだからそりゃ立ってられないでしょ、人体模型見たこと無いの?」


 若者らしいエネルギッシュな煽りですね、首を断つ「えーい!」という掛け声も若々しくてカワイイです。

 そうして無事に初心者狩りを終えたギャルたちが次の狩場へ向かった後、こそこそと死体へ寄っていく小さな人影が、二つありました。その人影はスジモンコンビの死体を通り過ぎて、近くの草陰に転がるドラゴン三人衆の死体を漁り始めたのです。

 死体の遺品を回収して持ち主に送り届けようという人道的極まるボランティア活動に精を出す、その子供達の正体とは……


「ぐっへっへ、初心者の死体から漁る武器は格別の味だじぇぇ……!」

「マリー! ワイバーンのウロコ落ちてたよ!」

「おっほう臨時収入! サナダナイスだよぅ!!」


 そう、我らがサナダとマリーです。

 イベントで増えた初心者、それを狩りに来る初心者狩り。彼らの死体で溢れ返った【始まりの平原】はまさに物拾いの聖地、二人が来ない理由などありません。


「死体が沢山で拾い物がおいしい! 来てよかった!」

「三歩歩けば死体が見つかる、アイテム集めのボーナスタイムだね」


 このように、今のダンジョンは初心者・初心者狩り・死体漁りの三つに別れ、混沌を極めていたのです……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ