第三百二十一話:狂気の地下農場(プランテーション)建設。特濃・豚骨魚介つけ麺と、極太自家製麺の啜り音
「申し訳ございません、奥様! 本日の『究極の若返りパフェ』、およびお持ち帰り用の『虹色王冠メロン』は、すべて完売いたしました! 明日のご予約もすでに満席となっております!」
王都の一等地にオープンした『完全会員制サロン・最強農園』。
その重厚なオーク材の扉の前には、オープンから数日しか経っていないというのに、連日連夜、目を血走らせた王都の貴婦人たちの乗る高級馬車が長蛇の列を作っていた。
エレナ様とマリアさんが、丁寧にお辞儀をしながらも、押し寄せる美への欲望(客波)を必死に捌いている。
「嘘でしょ!? 私、朝の6時から並んでいたのよ!! 50万でも100万でも払うから、どうにかして1杯作ってちょうだい!!」
「私なんて、隣の領地から三日三晩馬車を飛ばしてきたんですのよ! あの若返りの奇跡を味わうまで、絶対にここを動きませんわ!!」
店内に戻ってきたエレナ様が、ふぅ、と額の汗を拭う。
俺とガリウス所長は、店の裏の事務所で、山のように積まれた予約台帳と在庫表を前に頭を抱えていた。
「ルークス君……。売上は右肩上がりどころか、天を突き破る勢いだが……致命的な問題が発生している。パフェの心臓部である『神話級・虹色王冠メロン』の在庫が、完全に底を突きかけているんだ!」
「分かってますよ……! モフ丸の種から育てたあのメロン、予想以上に口コミの広がるスピードが早すぎた。いくらチート農業とはいえ、郊外の拠点の畑で育てて、いちいち王都の店まで馬車で運搬してちゃあ、輸送のタイムロスがデカすぎる」
これこそが、商売が軌道に乗った経営者が最初にぶつかる最も幸福で、かつ最も胃の痛くなる壁……『需要爆発による供給不足(品切れ)』だ。
売れるのに、売るモノがない。これはビジネスにおいて最大の機会損失(罪)である。
「ガリウス所長。輸送に時間がかかるなら、解決策はただ一つしかありません」
「な、なんだい? まさか、王都の農地を買い上げるつもりか? だが、この一等地の周辺にそんな広大な土地は……」
俺は、事務所の硬い床を、ドンッ!と力強く踏み鳴らした。
そして、暗黒メガコーポの経営者のような、悪魔的な笑みを浮かべる。
「土地がないなら、作ればいい。……この王都の店の『地下』をぶち抜いて、メロン専用の『秘密の巨大地下農場』を建設するんだよ!!」
◇
その日の深夜。
王都が寝静まり、サロンの営業も完全に終了した頃。俺は店の地下貯蔵庫の床材をひっぺがし、白銀に輝く相棒を構えた。
「行くぞ! 変形! 『真・アダマンタイトの鍬(螺旋掘削ドリルモード)』ッ!!」
ギュイィィィィィィンッ!!!
防音魔法を何重にも展開した上で、俺は王都の地下深くに向かって、凄まじい勢いでドリルを突き立てた。
固い岩盤を豆腐のように粉砕し、一気に地下数十メートルの空間を丸ごとくり抜く!
さらに、崩落を防ぐためにガリウス所長が土魔法で強固なコンクリートの壁を生成し、フェンが瓦礫を外へと運び出す。
「よし、広大な地下空間はできた! 次は俺の番だ! 超絶農業スキル……『大地の息吹・極』ッ!!」
暗く冷たい地下空間の床一面に、俺の魔力が限界まで注ぎ込まれた極上の『神話級・黒土』が、まるでふかふかの絨毯のように敷き詰められていく。
「だがルークス様! 地下では太陽の光が当たりませんわ! これでは植物は……」
「抜かりはねえよ、エレナ様! ポイントショップで大枚叩いて買っておいた、コイツの出番だ!!」
俺が天井に設置したのは、莫大な魔力ポイントを消費して稼働する最新鋭の魔導具……『疑似太陽光照射システム』!
カッ!!と眩い光が放たれ、漆黒の地下空間が、真夏の白昼のような暴力的な明るさに包まれた。
温度、湿度、そして日照時間。すべてを魔導具と魔法で完全にコントロールする、天候に一切左右されない究極の『完全制御型・地下プランテーション』の完成だ!
「モフ丸から貰った種を植えろ! 一気に成長させるぞォォォッ!!」
ズゴゴゴゴォォォォッ!!
強烈な疑似太陽光と神話級の黒土の力を受け、地下空間に無数の『神話級・虹色王冠メロン』の巨大な果実が、まるで卵から孵る魔物のようにボコボコと実を結び始めた。
「ふははははっ! 見ろ! 王都のド真ん中の地下で、超高級メロンが量産されていくこの背徳感! これぞ、俺たちだけの秘密の果樹園だ!!」
◇
そして、空が白み始めた朝方。
泥と汗にまみれ、徹夜の超絶土木作業を終えた俺たちは、サロンの厨房の床にへたり込んでいた。
「ハァ、ハァ……。さすがに、徹夜で地下空間をぶち抜くのは骨が折れたな……。だが、これでメロンの供給問題は完全に解決だ」
「ガウッ……。腹が、減った……。石を食っても美味く感じるレベルだぜ……」
「皆様、お疲れ様です……。こんなに泥だらけになった後は、何かお腹にたまるものが……」
俺は、重い身体に鞭打って立ち上がり、魔導コンロの火をつけた。
「泥だらけの徹夜明けだぞ!? 上品な朝食なんて食ってる場合か! 疲労困憊の身体が今、一番求めているのは……ガツンと脳を殴る『濃い炭水化物』と『極限の塩分』だろォォォッ!!」
俺が昨日から密かに仕込んでいたもの。
それは、神話級の古代砂小麦を使い、俺の農民のチートパワーで何百回も力強く打ち据え、踏み鍛え上げた『自家製の超極太麺』。
そして、隣の巨大な寸胴鍋で、丸三日三晩、オークキングの巨大な豚骨と、海で獲れた魔物魚の節(極上カツオ節や煮干し)を強火で炊き出し、骨の髄まで完全に砕け散るまで煮込みに煮込んだ……ドロドロの茶褐色に輝く『特濃・豚骨魚介スープ』だ!!
「麺を茹でる! 極太だから時間はかかるが、その分、噛みごたえは最強だぞ!!」
茹で上がった極太麺を、氷水で一気にキュッ!と締める。これによって、小麦の香りが引き立ち、強靭でワシワシとした暴力的なコシが生まれるのだ。
大皿に山盛りに盛られた、艶やかな褐色の極太麺。
そして、熱した石の器に注がれた、ボコボコとマグマのように煮えたぎり、魚粉の香りが強烈に鼻を突く、超高粘度のドロドロつけ汁!
「完成だ!! 『最強農園特製・ワシワシ極太麺の特濃豚骨魚介つけ麺』!! 一気にすすり上げろォォォッ!!」
俺は、極太麺を箸でガッツリと掴み、熱々でドロドロのつけ汁の海へとドップリと沈め込んだ。
粘度の高いつけ汁が、極太麺にこれでもかと、ネットリとまとわりつく。
それを、口の周りが汚れるのも構わず、肺活量の限界までズズズズズッ!!と強烈な吸引力ですすり上げた!
……ズバァァァッ!!
ワシワシッ! ドロァァァァァァァンッ!!!!
「んんんんんんんんんッ!!!!??」
俺の徹夜で疲労しきった脳髄が、炭水化物と塩分の暴力的な一撃で完全に吹き飛んだ。
美味い!! 美味すぎる!! なんだこの、理性を直接粉砕するジャンクな旨味の爆弾は!!!
冷水で締められた極太麺を噛みちぎるたびに、アゴを押し返すような「ワシワシ」とした強靭なコシと、神話級小麦の圧倒的な風味が爆発する!
そして、それに絡みつく熱々の特濃つけ汁! オーク豚骨の野性味あふれる重厚な動物系のコクを、魔物魚の節の強烈な魚介の旨味とザラザラとした魚粉の舌触りが完璧にまとめ上げ、超濃密な旨味となって口の中を蹂躙する!
「う、美味ぇぇぇぇぇぇっ!!! ドロドロのスープが麺に絡みつきまくって、啜るたびに脳内麻薬がドバドバ出るぞ!! 上品なフレンチもいいが、徹夜の泥仕事の後に食う、この下品で暴力的な濃さのつけ麺こそが、世界で一番美味いんだよォォォッ!!」
「ズズズッ! はふはふっ! お、おネギと極太のメンマが、ドロドロのスープの中で最高のアクセントになっていますわーっ!」
「ズゾゾゾォォォッ! なんだこの噛みごたえのある麺は! 腹の底から力が湧いてくるぞ!! 大盛りで、もっと大盛りで持ってこい!!」
俺たち全員が、厨房の床に座り込んだまま、ズズズズッ!という豪快で下品な啜り音を響かせ、顔をつけ汁の飛沫で汚しながら狂ったように極太麺を貪り食った。
「まだだ! つけ麺の本当のクライマックスは、麺を食い終わった後にあるんだよ!!」
俺は、極太麺をすべて平らげ、魚介の旨味が凝縮されて少し残った熱々のドロドロのつけ汁の中に、炊きたての『白飯』をドカンッ!と容赦なくブチ込んだ!
「究極の追い飯だ! スープの一滴、魚粉の一粒まで、米に吸わせてかき込めェェェッ!!」
ズズッ!! ジュワァァァァァッ!!!
「おおおおおおおっ!!! 炭水化物に炭水化物を重ねる究極の背徳!! 豚骨と魚介の旨味を限界まで吸い込んだ米が、美味くないはずがねえェェェッ!!」
極限の満腹感と、暴力的な塩分の摂取による圧倒的な幸福感。
俺たちは、器の底が見えるまで、スープの一滴すら残さずに完全に平らげた。
◇
「ふぁぁぁ……食った、食った。これで、あと三日は寝なくても戦えるぜ」
腹をパンパンに膨らませ、厨房の床に大の字になって寝転がりながら、俺は達成感に満ちた溜息を吐いた。
「ルークス君……。君のその無茶苦茶なバイタリティには、本当に頭が下がるよ。だが、これで……」
「ああ。これでメロンの供給問題は完全に解決だ。この地下の秘密農場があれば、王都の天候にも左右されず、1日100杯でも200杯でも、確実にパフェを作って売りさばくことができる」
俺は、床からむくりと起き上がり、地下農場へと通じる隠し扉の奥から漏れる、疑似太陽光の眩い光を見つめた。
「需要爆発、上等だ。俺たちの提供する『若返りの奇跡』に、王都の富裕層どもはもはや完全に依存しきっている。……俺たちのビジネスは、ここからが本当の『インフレ(拡大)』だぜ!」
王都の地下深く、誰にも知られずに稼働を始めた秘密の巨大プランテーション。
極太つけ麺の暴力的な旨味と塩分で完全復活を遂げたルークスの、悪徳経営者としての果てしない野望は、途切れることのないメロンの供給ラインと共に、さらなる莫大なポイントの海へと力強く船出していくのだった。
**【読者へのメッセージ】**
第三百二十一話、いかがでしたでしょうか!
口コミで大爆発したパフェの需要!「嬉しい悲鳴」によるメロンの在庫不足という、ビジネスならではの壁にぶつかったルークス一行。
その解決策は、なんと「王都の店の地下をチートでぶち抜いて、秘密のプランテーションを作る」という力技でした(笑)!
疑似太陽光システムと神話級の黒土で、天候に左右されない完璧な量産体制の構築。秘密基地のようなアンダーグラウンドなワクワク感、楽しんでいただけたでしょうか?
そして、徹夜の重労働明けのまかない飯は、深夜のラーメン欲を限界まで刺激する「最強農園特製・ワシワシ極太麺の特濃豚骨魚介つけ麺」!!
冷水で締めた極太麺を、豚骨とカツオ節が溶け込んだドロドロの熱々スープに沈め、ズズズズッ!と豪快にすする。仕上げの「追い飯」で炭水化物×炭水化物の背徳感!
上品なパフェの後だからこそ際立つ、この暴力的なジャンクフードのシズル感をお届けいたしました。
完璧な量産体制(供給ライン)を整え、いよいよビジネスを本格的にインフレ(拡大)させていくルークス。
しかし、これだけ目立つ商売をしていれば、当然「邪魔者」が現れるはず……?
次回の展開にも、ぜひご期待ください! ブックマークと評価もよろしくお願いいたします!




