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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第百四十四話:スローライフ防衛計画・初級編


 辺境伯城での騒動から数日。

 俺とフェンは、懐かしき我が家のあるリーフ村へと戻っていた。

 馬車から降りた瞬間、鼻をくすぐる堆肥と土の香り。そして、遠くから聞こえる村人たちの作業歌。王都の陰謀だの汚職だのにまみれた城の空気も悪くなかったが、やはり俺の居場所はここなのだと、肺の奥まで空気を吸い込んで再確認する。


「おーい! ルークス! 帰ったのか!」


 畑の向こうから、幼馴染のリサが元気よく手を振って駆け寄ってきた。

「あはは、リサ。ただいま。……って、うわっ!」

 駆け寄る勢いそのままに、リサが俺の胸に飛び込んできた。五歳児の体にはなかなかの衝撃だが、彼女の純粋な歓迎の熱量が、俺の心を温める。


「城でプリンを作って、お偉いさんたちを全員腰抜かせたって本当!? ずるい、私にも食べさせてよ!」

「噂が広がるのが早すぎるよ……。わかった、後で家族と一緒に食べよう」

「約束だよ! あ、それから村長さんが呼んでたよ。『ルークスがいなくなると畑の機嫌が悪くなる』って」


 リサの屈託のない笑顔を見送りながら、俺は改めて周囲の気配を『識別』と『気配察知』で探った。

 のどかな村の風景。だが、あの城で感じた「冷たい刃」のような視線は、まだ完全に消えたわけではない。


(……この村の平和を、あのドロドロした政治の渦に巻き込ませるわけにはいかない)


 俺は、村の入り口にある大きな樫の木の陰に腰を下ろすと、周囲に誰もいないことを確認して、システムウィンドウを開いた。


「さて、と……。一万ポイントの使い道、防衛会議を始めようか、フェン」

「ふむ。主よ、我としては『無限に湧き出る極上肉の山』というスキルを提案したい」

「却下。……真面目にやるぞ」


 俺は画面をスクロールし、現在のポイント残高を確認する。

 【保有ポイント:8,950pt】

 ※プリン材料費、高級ブラシ代、道中の食費などを差し引いた正確な残高だ。


 俺が求めているのは、村全体を覆うような派手な結界ではない。そんなものを使えば「ここに何かすごいものがある」と宣伝しているようなものだ。

 必要なのは、「いつの間にか、誰も悪意を持って近づけなくなっている」という、ブラック企業のセキュリティ対策のような、さりげなくも鉄壁な仕組みだ。


(まずは、情報網の構築。それから物理的な足止めの罠……。あとは、いざという時の迎撃用か)


 俺は、これまでロックされていた項目の中から、今のポイントで手が届くものを精査していく。


【スキル:植物成長加速 Lv.2 への強化(3,000pt)】

 これを、ただの成長促進ではなく「防衛」に転用する。例えば、村の境界線に植えた茨や茨の蔦を、侵入者の悪意に反応して異常発達させる、とか。


【アイテム:防衛用・偽装魔石セット(1,500pt)】

 これを村の四方に埋めることで、村全体の魔力反応を隠蔽し、外部からの「探知魔法」を妨害できる。これなら魔法使いの刺客が来ても、村の正確な位置を誤認させられるはずだ。


「よし、まずはこの二つを……。ん?」


 選択しようとした指が、リストの最下部で止まった。

 そこには、ノイズが走ったような不自然な空白と、文字化けした項目が並んでいた。


【 [SYSTEM_ERROR: L0-V3-PR0T0C0L] …… ???pt 】


(なんだこれ……。校閲用Geminiが言ってた『スキルの違和感』ってやつか?)


 一瞬、その文字が【対侵食防衛】と読めた気がした。

 だが、次の瞬間にはただのノイズに戻り、俺の脳内に微かな頭痛が走る。

 ……今はまだ、これに触れるべきではない。本能がそう告げていた。


「……ルークス? どうしたの、顔色が悪いわよ」

 いつの間にか戻ってきたリサが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

「あ、いや……なんでもないよ。ちょっと考え事をしてて」

「もう、城から帰ってきたばっかりなのに。ほら、今日はもうおしまい! 私の家で、ママが焼きたてのパンを作って待ってるんだから!」


 リサが俺の手を引く。その手の小ささと柔らかさに、俺はハッとした。

 俺は今、五歳の子供なんだ。

 あまりに効率や防衛ばかりを考えて、この「今」という時間を忘れてどうする。


「……そうだね。ごめん、リサ。行こう」


 俺は意識的に口角を上げ、リサと一緒に村の小道を歩き出した。

 五歳児らしく、わざと水溜りを飛び越えて見せ、失敗して靴を汚して「あーあ」と困ったフリをする。


「あはは! ルークス、ドジだなぁ!」

 リサの笑い声が響く。それにつられて、フェンも「ワフッ!」と楽しげに吠えた。


 だが、俺の意識の半分は、依然として冷徹な「エンジニア」のままだった。

 歩きながら、村の地形、風向き、死角となる場所を全て脳内マップに記録していく。

 この笑顔を、パンの香りを、リサの手の温もりを守るためなら、俺は喜んで「化け物」の知恵を振るおう。


(夜になったら、こっそり『防衛用植物』の種を撒いて回るか……。あとはギデオンさんに頼んで、古びた農具のフリをした『特製トラップ』を村の倉庫に配置してもらおう)


 最強の農民による、ガチすぎるセキュリティ工事。

 その第一歩は、一見するとただの「子供の泥遊び」のような、密かな種蒔きから始まった。


---




【読者へのメッセージ】

第百四十四話、お読みいただきありがとうございます!

「城での活躍」から「村への帰還」。そして、ルークスが自分の平穏を守るために本格的な内政・防衛へと動き出す準備回となりました。

一万ポイントという力を、ド派手な攻撃魔法ではなく「さりげないセキュリティ」に使うあたりが、ルークスらしい「ブラック企業仕込み」の慎重さですね。

次回、村が「生きた要塞」へと姿を変える!? 驚きの防衛アイテム活用術にご注目ください!

引き続き、ブックマークや評価での応援、お待ちしております!


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