#02
第1章、「華の宴 編」の第2話です。
朝食を終え、部屋に戻る途中、フェルアはずっとあることについて考えていた。
なんのことかといえば、言うまでもなく『華の宴』に付いてである。
参加したくないのだ。
理由は、ただ、面倒くさいから。
だが皇帝がああも言った以上、フェルアは参加せざる終えない。
フェルアは、自分の父たる、スラミント国王こと、オルレリダ・ホボルデ・スラミントが許可を出さないわけがないと考えている。
なぜならあの国王は何でも首を突っ込みたがる性格だからだ。
「ねえ、カルノ……」
「何、フェルア? 『華の宴』だったら参加しないとだめだよ」
カルノはフェルアの考えを読んだかのように発言した。
「私まだ何も言ってないよ!?」
そう訴えるフェルアを見て、カルノは小さくため息を付いた。
「俺達、幼馴染だろ。ずっと一緒にいるんだから相手の考えてることなんてだいたい分かるよ」
「……つまり私の考えはカルノにお見通しってこと?」
「まあ、全部見抜けるわけじゃないけど、だいたい分かる」
「ううう……」
「そんな顔すんなって。どうせ俺だって出るんだし、端っこの方でじっとしてればいいよ」
と、カルノは慰めてくれる。
「それより、準備しないと。来月だけど、すぐ来ちゃうから」
「出たくないよぉ……」
「準備は多分母上が手伝ってくれると思う。細かいことは母上に聞いたらわかる」
「カルノは?」
「俺? 俺は……まあ父上かアクロ様あたりにでも聞くから。ってか自分の国のことだし父上がなんとかしてくれると思う」
カルノに聞くと、彼の口から出てきたのはまさかの名前。
カルノの父上ことガーバン皇帝はわかるとして、もう1人カルノの口から出てきたのは、フェルアの兄、アクロだったのだ。
(以外。カルノの口から兄様の名前が出てくるなんて)
「あ、フェルアー!」
向かいの廊下から、さっき話題にしていたアクロが歩いてきた。
愛する妹の名前を呼びながら。
「兄様見っけ! じゃあね、カルノ!」
「またな」
「兄様、どしたの?」
フェルアは小走りにアクロの方へ向かって、着いた途端質問をした。
「どうしたもなにも、愛する妹よ。来月セルテ帝国で行われる『華の宴』について、ヒメリ王妃から呼ばれてた」
「……兄様、『愛する妹よ』とか言うタイプだっけ?」
「こ、細かいことは置いといて。フェルア、今すぐヒメリ王妃にところに向かうように」
「はーい! 兄様も『華の宴』、参加だからね!」
「わかってる。セイン兄様が出席できるかわからないから僕が代わりに出ろって話だね」
「うん。詳しいことは、カルノか皇帝に聞けばわかると思うよー」
「僕は最初からそのつもりだよ。じゃ、僕行くね」
「まったねー。当日かっこいい兄様が見れるのを楽しみにしてるよー!」
そう言い残してフェルアは去っていく。
フェルアの姿が見えなくなったところでアクロは呟く。
「めんどくさ……」
兄妹2人して考えていることが同じなのであった。
☆ ☆ ☆
フェルアが呼ばれた先は、セルテ帝国の第1王妃、ヒメリ・コルミラ・セルテの私室である。
コンコンコン。
規則正しく、3回ノックをする。
すると中から返事があった。
「誰かしら?」
「ヒメリ王妃様。フェルア・ノエスト・スラミントでございます」
「フェルア様ね。入って頂戴」
「失礼しいたします」
ヒメリの許可が降りたので、私室に入る。
入るとそこには、当本人のヒメリと、ヒメリの娘でセルテ帝国第1王女、ラノアがいた。
「ラノア様、なぜここに……?」
フェルアの疑問に答えたのはラノアではなくヒメリであった。
「私達も『華の宴』には当然のように参加するわ。そこで、衣装は私のほうで調達するの。ラノア、フェルア様。自分が『華の宴』でどんな衣装を着たいか、要望はあるかしら?」
ヒメリはわざわざフェルアの衣装まで用意してくれるというのだ。
「あ、あのヒメリ様……。私の分まで用意してくださるんですか……?」
「遠慮しなくていいのよ、フェルア様。スラミント王国とセルテ帝国は昔からの長い付き合い。セルテ帝国の歴史的行事である『華の宴』にはスラミント王国家には毎度参加していただいているの。そして衣装は主催者であるこちらで揃えるというのが昔からの習わしなのよ」
そう言うヒメリ。
「えっ……。あー、じゃあ私の分の衣装もお願いしていいですか?」
「ええ! よろしくてよ」
ヒメリは満円の笑みを浮かべた。
こうして、『華の宴』のフェルアの衣装についてはヒメリに一任することになった。