女子風呂を覗きたい!!!!
「来るぞ田中!」 「ああ、分かってる!!」
――シュカッ。
壁にチョークが突き刺さった。殺意すら感じる一投に背筋が凍る。 だが俺たちは走る。全力で。肺はもうギリギリ、今すぐ倒れて息を吸いたい。でも――
止まれない。あの扉の向こう、女子風呂を覗くまでは……!
……何故そこまでして女子風呂を覗こうとしているのか? それには、深い深い理由が――
◆◇◆ 五分前 ◆◇◆
「修学旅行の夜って暇だなぁ。風呂でも行くかー」
「よし、女子風呂覗こうぜ」
「お前、伝説の鬼教師『藤井』が来てんの知ってるよな?地獄耳、鬼足、体罰御免のモンスターだぞ」
「……それでも、俺は行く」
「よし乗った!」 「「ヒャッハー!」」
──あの瞬間、俺たちは正気を捨てたのだった。
◆◇◆ 現在 ◆◇◆
うん、別に深い理由なんかなかった。勢いだけだった。
ちなみに、部屋を出た瞬間に藤井にバレて、今に至る。
「おい鈴木!二手に別れるぞ!俺は右、お前は左だ!」
なるほど、確かに藤井は1人。こっちは2人。なら1人は生き残れる!
「でも風呂は!? どっちが見るの!?」
「生き残った方が勝ち取れ!!」
「負けた側が可哀想だろ!!」
「じゃあ、スマホで撮って後で送ればいいじゃん?」
「!! 天才か!」
「俺たち親友だもんな、恨みっこなしだぜ」
「田中……!」
全力ダッシュしながら作戦会議は完了。 十字路で運命が分かれる!
「せーのっ!」
田中は右へ、俺は左へ!
(さあ藤井、どっちに来る!?)
「待て田中あああぁぁぁ!!」
右へ行った!つまり田中が餌になった!グッジョブ田中!君の犠牲は無駄にしない!
――と、背後から声が響く。
「藤井先生!鈴木、学校でタバコ吸ってましたー!」
「おのれ田中……!」
「本当か鈴木いいいいぃぃぃ!!」
藤井ターン!しかも怒りのあまり足が速くなってる気がする!
「嘘に決まってるだろうがあああああ! タバコなんか、煙で肺が真っ黒になるけど、でも……美味しいから中毒になるんですよ!」
しまった、本音が。
「ゴルァァァァァァァ!!」
鬼の形相が更に進化して般若になりそうなその時――
「あらあら、走っちゃダメですよ~」
学校一の美女、城ケ崎先生が通りかかる。
「すいません先生! 急に腹が……!トイレへGOです!」
「あらまあ、それは仕方ないですね~ 気をつけてね~」
ゆるい!甘い!まさかこの言い訳が通用するとは……!
……と思ったら、藤井もまさかのストップ。
「やあ城ケ崎先生、夜分お疲れ様です」
「あらあら藤井先生も~、お疲れ様です~」
「巡回とはご熱心ですね」
「子供たちの監視、大事ですからねぇ~」
「まったくですな、ワッハッハ」
お前……さっきまで般若だったやん……!
だがチャンス! 俺は再び風呂場を目指して全力疾走!
廊下、食堂を抜けたその先――
「田中……!」
「よう、鈴木……」
そこにいたのは裏切り者、田中だった。
「よくもチクってくれたな……!」
「いや、あれには深いワケがあるんだ」
「ほう、聞こうじゃねぇか……」
シュッ!
「うおっ!」
田中の右ストレートが顔スレスレをかすめる!
「なんとなく、1人で覗いた方が“特別感”あるだろ……」
「浅っっっっっっ!!」
――そして、始まる二人の殴り合い。勝った方が風呂覗き放題!
ここからは、語るまでもない。
二人で揉み合っているところを風呂上がりの女子に見つかり、追いかけてきた藤井にボコボコにされ、
そして今――停学になり、こうして反省文を書いている。
だが、俺は諦めない。
修学旅行は終わった。でも、夏のプール授業がある。
そう、戦いはまだ始まったばかりだ――!
超絶雑な小説にお付き合いいただきありがとうございました。
アキチ先生の次回作にご期待ください。なんつってね!