閑話 事件翌日の悲喜交々
物事って後始末の方が大変ですよね。今日はこの閑話ともう一つ主要登場人物紹介の項を投稿しています
「もう大丈夫だから…」
あの懐かしい声、懐かしい香り…
「おねぇちゃん!」
一人っ子だった僕に出来た血の繋がらないおねえちゃん、あんな事になるのなら好きだと伝えればよかった
僕が10で姉さんが16の時、事故で姉さんは帰らぬ人となった
気がつけば伯爵家の私の部屋
「あれは夢?」
「アリシアお嬢様、お目覚めになられましたか?」
「どうしてここに?私は攫われて…」
私は昨晩の真夜中に玄関の前に倒れていたところを発見されて部屋に運ばれたみたい。お父様は夜通し私の捜索に出ていてまだ私が帰ってきていることを知らせる伝令が間に合っていないのだとか
「何がどうなっているの?」
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「学園長、何がどうなっているのか説明いただきたい」
学長室に乗り込んだジルベリオは有無を言わさず回答だけを求める
「こ、これはジルベリオ殿下どうぞお座りください。昨日の件は令嬢も無事帰ってきておりますので…」
「まさかこのまま有耶無耶にする訳ではあるまいな」
「警邏の数も増やしておりますし」
温厚で知られるジルベリオ殿下のお怒りに学園長もタジタジで禿げ上がった頭から流れる脂汗が止まらない
「その警邏も学園内でも外での遺体で見つかっている、そもそもその生徒は寮で攫われたそうではないか!人の出入りに対して今後どう対策するのか教えてもらおう!」
学園長室のテーブルをダンッと叩きジルベリオは再度答えを求める
「ですが、それは…」
ジルベリオはため息を付いてソファーに座り直すと
「学園長、事態を甘く考えてい過ぎでは有りませんか?学園長は元平民で新興伯爵家の令嬢とお思いかも知れないが、これが公爵家の令嬢でも同じ態度で居られたか?もし攫われたのが私だったら?」
ぐうの音も出ない学園長は俯いたまま流れ出る脂汗をハンカチで拭いている
「いいですか学園長、起こってしまったことはなかったことには出来ないからそれをとやかく言うつもりはない、王立学園である以上最終的な責任は王家にある」
「いえ、そんな事は…」
「問題はこれからどうするかなのです。警邏の数だけでなく二重三重の警備体制を整えなくてはいけません」
「おっしゃる通りで御座います」
これではどちらが大人でどちらが子供かわからない、その後もジルベリオが案を挙げては学園長が予算に見合わないと却下する展開が続き、結局この件は王家預かりとして解決は持ち越しとなった
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「ということですまないが君たちの領地ではそれぞれに新たな物が生み出されている何か良い知恵はないだろうか」
学園の応接室に集められた七家の公爵令嬢へのジルベリオの第一声だ傍らには騎士団団長の息子ルーカスと宰相の息子サイファスが控えている。殿下と彼女達の距離(物理的な)も以前に比べると近くなった。2mから1m80になった程度だが
ジュリアが立ち上がりカーテシーをして発言の許可を求める
「なにか良い案は有るのか?」
「その前にジルベリオ殿下、失礼ながら殿下は王族、我々に簡単に謝ってはなりませぬ。殿下は堂々と私達にご命令を」
「判った以後注意しよう。それで誰か何か良い案は有るか?」
今度はスザンナがカーテシーを見せ発言の許可を求める
「少々堅苦しいな、この場での発言には許可を求めなくて良い、そうだな手を挙げてから発言してくれればそれで良いことにする」
「かしこまりました。では我がタダリア領では工業の発展に伴い情報の漏洩対策として魔力に反応する扉、正確には扉の鍵を試験的に導入し始めたところです。もしよろしければ学園に導入することも可能です」
「おお!それは大規模な工事が必要なものだろうか?少々予算の件で揉めていてな」
「それに関しては今ある扉に装置を取り付けるだけですので小規模な工事で済むかと思います」
「それはありがたい。これは個人的な興味なのだがどのようにして作られたのか教えて貰ってもよいだろうか」
「元々開発が進めば王家に進呈差し上げるものでしたので問題有りません。ですが現時点ではまだ秘匿技術ですので…人払いをお願いできればと思います」
「うぐっ…」
ジルベリオはルーカスとサイファスの顔を見る。女性恐怖症のジルベリオにとって同じ空間に1対7は辛い
「殿下…ご無理は…」
自分たちが原因なのでスザンナもためらっている
「殿下御自分でお決めください」
宰相の息子サイファスはどうやら甘やかすつもりはないようだ。一方でルーカスの方は心配顔で殿下を見守るがこちらも口を挟まない
「判った…二人とも外へ出ててくれ」
サロンの中は特に暑いというわけでもないが二人が出ていくと同時に殿下の額に汗がにじむ
「申し訳有りません殿下、決して近づきませんので」
自分たちの罪深さに全員の顔は俯きがちだ
「構わない、ちょうどよい少しでも慣れていかないといかないからな」
言葉とは裏腹に汗の量は増えている
「殿下できるだけ簡潔に申し上げますね」
若干説明役のスザンナは早口だ
「頼む」
「では、使われる素材は鉱石を採掘した際に付着している物質で今まで使用価値がなく捨てていた物ですので現時点では素材はタダ同然です」
「これからの需要で価値が上がるということか」
スザンナは頷く
「この素材カラナ鉱石と名付けました。そして単体では微量の魔力を取り込むだけの機能しか有りませんが我が国だとメリーナの居るシュルツ家の鉱山で採れるノルド鉱石、こちらも比較的安価で手に入れられる鉱物です。この二つは強烈に引き付け合います」
「扉側と壁にを付ければ扉をロック出来るということか」
「はい、扉側にカラナ鉱石、壁側にノルド鉱石を取り付けそして間にトレントの樹皮を集めて圧縮したものを挟みます。トレントの樹皮はカラナ鉱石に取り込まれた魔力を外へ放出することが出来、カラナ鉱石とノルド鉱石の間に魔力が生じると引き付け合っていた力が途切れることを確認しております」
「それでロックを解除出来るのだな?」
「その通りです。そしてこれはセレーナの領地での研究でわかったことですが魔力は個人個人で波形が違うことが解りました。このトレントの樹皮にはその波形を記憶することが出来、記録されていない波形の場合魔力を通しません。今はまだ試験導入ですが加工した鉱石を取り替えるだけでいいので精度の上がった物や改良した物も後から入れ直すことも出来ます」
「なんと!では魔力を持っていたとしても部外者には開けられないのか、それは凄いなそれに交換出来るということは費用も抑えられるということだろう?」
スザンナは肯定の意味を込めて笑顔を返した
「実物を見てみたいのだが取り寄せることは出来るだろうか?」
「勿論です。数日いただければご用意できます。ね!メリーナ」
「はい、ご用意できます」
「そうか!スザンナとメリーナそれに集まってくれた皆に感謝する」
ジルベリオは廊下に出ているルーカスとサイファスを呼び戻そうと…
「殿下もう少々お付き合いを、お耳に入れておいていただきたい事があります」
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ジルベリオと公爵令嬢ズがセキュリティについて話し合っている頃、廊下には落ち着き払った宰相の息子サイファスと廊下を行ったり来たりしている騎士団団長の息子ルーカスが問答をしていた
「落ち着け、悪い事態にはならないだろう令嬢達は分を弁えている」
「落ち着いていられるか!お前は分を弁えていると言ったがそもそも殿下がああなったのはその令嬢たちのせいなんだぞ」
「トラウマに打ち勝たなければ殿下に将来はない、彼は王位継承者候補だ」
サイファスは表情一つ変えずに告げる
「それは解っているがなんというかそのもう少し手心というか時間をだな」
「東のグリムワルドがきな臭い、数年以内に開戦する可能性も高い、この学園生活の間に妃を見つけ子を成してもらうくらいの気概を持ってもらわねば困るのだ」
ルーカスは答えに困り、二人の間に沈黙が落ちる
扉が開きジルベリオが出てきて開口一番
「至急確認したいことが有る、二人共付いてきてくれ」
ジルベリオは二人を伴い王城へと馬を走らせた
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