第六話 消えた令嬢
学園生活始めました
入学式当日は快晴
ジュリアたちはヒロインを見つけるべく周囲に気を配りたかったのだが…
「ジュリア様、クロード家の方々には先代の頃から当家はお世話になっており~」
「スザンナ様、当伯爵家でもあの芋を譲っていただいたおかげで~」
派閥の子たちのこれでもかというくらいの挨拶攻めに会いヒロイン探しどころではなくなっていた
魔物退治で名を馳せて腕っぷしが強いフェリシアでも
「フェリシアお姉様、お噂は兼兼、我が領でも武勇伝は伝わっていますわ~」
騎士科のフェリシアはドレスではなく騎士(見習い)の出で立ち真紅の髪も邪魔にならぬ様編み込んでまとめている。身長も女性としては高く七公爵家の令嬢で一番高い。騎士の装いも様になっているのも彼女達の興奮を掻き立てる要因になっている。真紅の前髪を払っただけでも
「キャァ~、私ともあろうものが鼻血だなんて、でもそれだけフェリシアお姉様が麗しい証明」
当のフェリシアはうんざりといった感じでため息を付いても
「憂いたお顔も素敵!」
年頃の女の子は魔物より手強い…
ジュリアが何かを紙に書いたかと思えば畳んでセレーナに渡す。残りの五人はセレーナから情報を伝達される
作戦変更、ヒロインなら第一王子との遭遇が在るはず、王子を観察に切り替えたし
互いに目配せで了承し、第一王子には近づかないように監視を始める。一人を除いて…
「シンディー!こっちこっち!」
淑女らしさの欠片もない完全に姉馬鹿と化したヘレネ
「お姉様、探してくださってありがとうございます」
妹の方がよっぽど公爵令嬢らしさがある。妹の晴れ姿に瞳がうるんでいるヘレネを見て
「あの子は今日は役に立たなそう、放っておきましょ」
全会一致のアイコンタクトでヘレネは捨て置かれるのでした。
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入学式の新入生代表の挨拶は首席入学のジルベリオ殿下
ぶっちゃけて言えば実質中学生レベルの問題、私達なら満点取れるでもしなかった示し合わせて数問ほど適当に間違えた、勉強嫌いのフェリシアだけは別だけど。全員満点取って殿下が7~8位とかだとバツが悪いから
式も終わりクラス分けの用紙を渡され教室へ向かう、まあ自分たちがどのクラスかは事前に知っているんですけどね。権力って怖いわ~
私達はBクラス、Aクラスじゃないのかって?原因は私達の所為、ジルベリオ殿下を女性恐怖症にしちゃったので成績優秀者の男子をAクラス、女子をBクラス、Cクラス以降は男女混合クラスという世にもおかしなクラス分けになってしまったのよ…
ヒロインからしたらいきなり絶望の展開よね、ごめんなさいまだ顔も知らないヒロインさん
私達も2mまでなら近づけるけどそれ以上は無理、手紙のやり取りはしているから嫌われているというわけじゃないと思うけど、ヒロインじゃない他の女子たちからみても何してくれてんねんって感じよね、返す言葉もないわ
Aクラスの男子にもごめんなさいしておこう。バラ色の学園生活を夢見て入学してみれば自分のクラスだけ男子校、成績優秀者なのに罰ゲームがごとき鬼畜の所業
はい、全部私達の所業です…
教室での自己紹介も終わり一通り教材を手渡される、ちなみに学園では侍女やメイドは連れてくることは出来ない。生徒が自分たちでやることで働いている人間の気持ちを考えさせるためだと聞いているわ
確かに良いかもね、大変さを知れば侍女たちに暴力振るったり無茶な注文しなくなるでしょう。言ってて特大のブーメランが突き刺さって自己嫌悪
寮へ帰ってきて公爵家専用サロンで報告会
結局ジルベリオ殿下に近づくヒロイン候補らしき人物は誰も見ていなかった。ただメリーナが一言
「アリシア・サウストン…」
一同は小さく頷いた、そこには学園での慎ましくも寛大な公爵令嬢の姿はなかった
「この件でなにか知っていることは?」
セレーナは立ち上がりサロンのテーブルにまとめられた書類を置き話し始める
「アリシア・サウストン年齢は勿論私達と同じ十五歳、元平民、四年前の十一歳のときにフェネル男爵家に引き取られ男爵令嬢になってる、貴族としての最低限の淑女教育を受け今から一年前、十四歳になると同時にサウストン伯爵家の養子になって伯爵家令嬢としてこのハミルトン王立学園に入学、そして彼女は入学式には現れなかった」
ジュリアが口を挟む
「戸籍と爵位のロンダリングね、そういったやり口は他の貴族でもすることも有るし特別珍しいということでもないわ、特に子供が落とし胤だった場合はね。それで寮の彼女の部屋は?」
「誰も居なかったわ。部屋は荒らされた形跡もなく家具も揃っていたし荷解きもされていて生活する気満々ね、とてもじゃないけどこれから失踪しますっていう人間の取る行動じゃないわね、、、偽装って可能性もなくはないけど」
「けどさー、令嬢一人居なくなってんだよ、誰かしら不審に思うだろ」
令嬢とは思えない言葉遣いのフェリシアこちらの姿が素だ、かたっ苦しくて嫌なんだよなーと言いつつも外ではしっかりと猫を被っている
「それが不思議なことに学園には体調不良で二、三日休むかもしれないと連絡がきたそうよ」
「どうやってさ?侍女もメイドも寮には居ないんだぜ」
フェリシアは不可解といった様子だ
「隣部屋のエミリア・ジョルジュと名乗る女性が連絡に来たらしいわ。それで当の本人に挨拶がてらアリシアさんはそんなに具合が悪いの?って聞いてみたら会ったことも話したこともないので解りませんと」
「めんどくさい!結局犯人は何がしたいのさ」
「東の国のグリムワルドは知っているわよね」
「知ってるもなにもうちの領地が向かい合ってんからね、今はまだ小競り合いで済んでるけど」
セレーナは顎に手を当て歩きながら話す
「あの国は二年前に国王が急逝、後継者も決まってなくてクーデターまで起きた、今も後継者争いで揉めていてひと月前に開戦派の主導者の第二王子が暗殺されたわ」
「だから?開戦派が殺されたんなら落ち着くんじゃないの?」
フェリシア以外はもう判っているようで誰も口を挟んでこない
「サウストン伯爵家は元を辿ればグリムワルドの人間、二十年前の我が国との戦争でこちらに寝返って伯爵の位を得たまだ新しい貴族よ、そしてアリシアが男爵家に引き取られたのは四年前、ちょうどグリムワルドがこちらに仕掛けてくるんじゃないかという話が聞こえ始めた頃ね、後継者争いが激化し始めると今度は伯爵令嬢にランクアップ、偶然かしら?」
「伯爵家は敵?味方?」
「さあ?攫った犯人と伯爵本人に聞いてみるしかないのではないかしら」
歩いていたセレーナの動きがピタリと止まる
「セレーナ?」
「しっ!ちょっと黙って」
しばしの沈黙の後セレーナは両手を広げて恍惚の笑みを浮かべ
「実行犯の所在が解りました。みなさんお仕置きのお時間です。米粒一つでも薄汚いネズミにくれてやるわけには行きませんわ。何処の国に手を出したのかたっぷりと時間を掛けて理解していただきましょう。容赦はいたしませんわ、だって私たちは悪役令嬢なのですから!」
その言葉に呼応するように全員が公爵令嬢らしからぬ笑み浮かべていた
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