星の海を眺めながら 4
「お品書きまだ覚えてへんのか」
「たるんでるわね」
「うっせー、やってやる」
「うちのメニューちょっと複雑だもんね」
「甘やかしたらダメよアカネさん」
「せやで」
「アカネさんは天使かな?」
「手を出したら一東で生きていけなくなるわよ」
「なんだそれこえー」
「町内会のボスがアカネさんをお気に入りやからな」
「はい仕事。いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませー!」
「もうお冷や準備できてる……」
「お客様何名様ですか? 空いてるテーブル席へどうぞ! ご注文お決まりになりましたらお声おかけください。二番さんオーダー待ちでーす!」
「はいよ!」
「はえーよ!」
(走ったら間違いなく俺が速いのに! 反応だって俺が速いのに!)
(ゼロ秒で動いたってその頃アカネさんはゴールしてるんだから身体能力で勝てると思ってるのがバカだわ)
「四番オッケーでーす!」
「洗い物できたわよ。またこもることになりそうね」
「ケンシ、できなそうならやめるか?」
「やめません!」
(お父さんもあおるわね。それでやる気出すんだから男の子だわ)
「オーダー入りまーす!」
「あいよ!」
(なんでだなんでだなんでだなんでだなんでだ?)
「いらっしゃいませー!」
(え、お客、いつ入ってきたの? チャイムか? それでもうお冷やが準備できてる? 人数分きっかり?)
(あはは、たまにくるお客様の家族構成まで覚えてるのなんなんだろうね。肌感覚で覚えてるとか恐ろしいこと言ってたけど)
「四番さんオーダー待ちでーす。追加入りまーす、ライムチュー四つ、以上でーす。ライムチューいきまーす!」
「二番刺し身大ー」
「刺し身大いきまーす。お待たせしました。刺し身大のお客様、他のメニューは少々お待ちください」
「唐揚げ大六番ー」
「唐揚げ大いきまーす。お待たせしました。唐揚げ大のお客様。以上でよろしいですか? 二番さん追加入りまーす、お寿司一丁、レモンチュー二丁、レモンチューいきまーす」
「はえーよ! マシンガンかよ!」
「やめるかぁ~?」
「やりますよ! ちくしょー!」
「二番お寿司ー」
「おすっ」
「スズちゃんのお寿司になりまーす。ごゆっくりどうぞー」
(だーかーらー! はーやーいー!!)
(声がして反応したんじゃ遅いんだって。アカネさんはできるの予想して待機してるもの。しかも他の仕事をこなしながら)
(絶対おかしい。声がした時にはもう持っていってるってなんだ?! 予測してるんだろうけどその前まで別の仕事してる。秒単位で予測してる? 人間にできるのかそんなこと!)
(できちゃうんだよなあ。ついでに言うと常連さんの入店時刻も覚えてるし。時計をチラチラ見てる。確かに傍目に見ると超能力なのよねえ)
「いらっしゃいませー! お客様三名様でよろしいですか? 三番目のテーブル席へどうぞ。三番さんオーダー入りまーす」
「お客さんひとりじゃん」
「あとからくるのよ」
「……なんでわかんの?」
「覚えてるからよ」
「それがもう超能力じゃね?」
「そうよ。本人自覚ないけどね」
(もう完全に芸だからあれは)
「いらっしゃいませー、五名様、お座敷へどうぞー。六番さんオーダー待ちでーす。お会計お願いしまーす。二番オッケーでーす。いらっしゃいませー! 四名様、一番目のテーブル席へどうぞー、一番さんオーダー待ちでーす。お会計お願いしまーす! 四番オッケーでーす、いらっしゃいませー。六名様、奥お座敷へどうぞー。七番さんオーダー待ちでーす。オーダー入りまーす、一番さんお寿司入りまーす。一番さん生中三ついきまーす」
(ダメだ、聞いてるだけで目が回る)
(いきなりできるわけないんだからできるとこからやらなきゃ。自分が無力なのを自覚してからがスタートなのよ)
なんか一人で回してしまってません? コノミちゃんはお会計してるしスズちゃんはお寿司してるから仕方ないかな? まあ楽しいし、いいけど。ケンシくんは洗い物にはりつきすぎだよぉ。まだまだだね!




