トマト好き 1
トマトの旬は夏とされていますがじっくり育つ春から初夏が糖度が高く美味しくなるそうです。私の大好きなトマトの話。
みなさんおはようございます。湊アカネです。
「いらっしゃいませ~!」
スズちゃんの元気な挨拶をうけて入店します。今日と明日はお休みなのです。たくさん飲むぞー!
今日は珍しく一人です。ナオコさんたちとは待ち合わせということになります。
「お客様一名様ですか?」
「待ち合わせしてるんですがテーブルでもいいですか?」
「どうぞ、一番奥右側のテーブル席へ」
「ありがとうスズちゃん」
「茶番ですよね」
おもいっきり苦笑されました。四番のテーブル席へ。置物がない! カズコさんは来てますね。五時に入店なんてはじめてのこと。しかも私服です。スカートですよ。
「アカネちゃんがこの時間に客で入るって珍しいねえ」
「すいてる時間のお客様の感じる空気を知りたくて」
「勉強熱心なことだねぇ。そういえばこの前の釣り大会のデータも高く売れたよ。よかったね」
「貯金が五千万とかになってて怖いんですけど」
さすがに誰かに狙われそうです。私はか弱いんですからね!
「いらっしゃいませー!」
「やあスズちゃん、今日も可愛いねえ!」
「また遊ぼう」
「今日も飲むぞー! ……あれ?」
「アカネちゃん? 珍しいね!」
「右の置物ことウヅキくんでーす!」
「左の置物リョウヘイくんだ! はい、ポーズ!」
「マッソー!」
「ぷふっ!」
「受けた」
「やったな相棒」
面白い人たちです。
みんなが来てからガッツリ頼むのでごはんとお刺身の並とイカ天にしましょうか。白身魚のフライも頼んでのんびり飲もうっと。
「ご注文以上でよろしいですか? オーダー入りまーす!」
すぐにビールとごはんがでてきました。人が少ないのでとても速いです。お刺身も間をおかずでてきました。確かにこれはテレポートしてますね。
スズちゃんはもちろん走ってませんがコノミちゃんは動けませんでした。これが三歩速く動く技で、とても素人には真似できません。スズちゃんもエキスパートです。四年はやってますからね。
数分でイカ天とフライも出てきました。じっくり攻めたいと思います。
お刺身でごはんを進めます。ビールは早めに飲んでしまいましょうか。
ごくっ、ごくっ、ごく、ぷはー。
「いい飲みっぷり!」
「ほれちゃうぞー!」
「ありがとうございます!」
思いっきり置物の二人にはやされました。
「私も若い頃はその勢いでいけたんだけどねえ」
「まだ若いですよカズコさん」
今日のお刺身には貝がついてます。これが美味しいんです。つぶ貝とか磯貝ってやつですね。
これでビールを飲んだらライムにしてフライを楽しみましょう。こりっこりっ。こくっ、こくっ、ふう。
「お願いします」
「ご注文お決まりですか?」
「ライムチューで」
「ご注文繰り返します、ライム酎ハイがおひとつ、以上でよろしいですか? オーダー入りまーす」
さっきのも速かったですね。私もあんなふうに見えるんでしょうか?
「アカネちゃんなら、もうワンテンポ速いな」
「それもうテレポートしてますから」
「この前も注文決まったと思ったら注文決まったか聞かれてたな」
「あー、あの完璧なタイミングだったやつ」
「お二人の場合いつもの注文にひとつか二つ決めたら迷わずに注文するじゃないですか。決まったなって思ったから聞きました」
「だからテレポート言われるんじゃないかな?!」
「常連のクセまで覚えてるんだ……震えてきた」
「まったくどこの店員がそこまで覚えてるんだい!」
「ちなみにカズコさんならアカネサラダとスズちゃんのお寿司頼んでくれるだろうなって思ってました」
「エスパー?!」
「まあカズコさんはここの店員お気に入りだからな」
「マジ震えてきやがったわい……」
カズコさんはだって優しい人じゃないですか。絶対私たちが作ったメニューを食べてくれるのはわかってましたよ。
そのあともどういう根拠でお客様に声をかけるか説明すると超能力扱いされました。確かに普通の人はできないですから、うちの常連のクセまで覚えてないから無理なのである意味超能力ではあるんですが、仁限定ですからね。
新規のお客様の場合もパターンというのはありますから少しはいけますけど。定食なんて一種類ですしお昼から飲む人はあまりいませんからね。よし決まった、みたいな顔をしてたらうしろに立ってます。
「テレポート」
「エスパー」
「それが経験と勘ってやつだね」
そう、たんなる経験値です。橋の上から五年です。さすがに普通と同じだとなんにも研鑽してないことになります。たかが接客なんて考えてたらできません。私は大将の美味しいごはんを届けるだけです。
「大将が男泣き?!」
「冥利に尽きるな」
「飯がしょっぱくなるよ」
おっと、ナオコさんたちが来たようです。超能力じゃなくてメールです。オチがつきましたね。




